軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第230話 ウェイター「(悪そうな会合だな……)」

レストランに入ると、カウンターもテーブル席も満席となっており、軍人らしき人達が酒を飲みながらわいわいと騒いでいた。

どうやら軍の施設に隣接するレストランなだけあって、軍の関係者の御用達の店らしい。

満席だし、飲んでいるのは明らかに下っ端だなと思ったので近くにあった階段を昇る。

すると、賑やかな1階とは打って変わり静かな空間が広がっていた。

広さは1階と同じく30メートル四方くらいだが、大衆店っぽい1階とは違い、ラウンジやバーと高級レストランが合わさったような上品さがある。

そして、そんな店の中央には白髭を蓄えた軍服を着た爺さんがテーブルについており、他の客の姿はない。

「いらっしゃいませ。ジークヴァルト・アレクサンダー様でしょうか?」

品のあるウェイターが恭しく、一礼しながら聞いてくる。

「ああ。イグナーツ・フォン・ヨードル元帥閣下と待ち合わせをしている」

「どうぞ、こちらへ」

ウェイターに案内され、中央のテーブルに向かった。

すると、爺さんがこちらを一瞥する。

「お客様、お連れ様がお見えです」

「うむ。まあ、かけたまえ」

爺さんはウェイターに手を上げて、下がらせると、座るように勧めてきた。

「遅れてすみません」

そう言いながら席につく。

「構わん。私は隣だから早いだけだ。自己紹介をしよう。イグナーツ・フォン・ヨードルだ。昼間は失礼した」

「ジークヴァルト・アレクサンダーです。こちらこそ、生意気なことを言いました」

そう言うが、頭は下げない。

「本日はコースにした。そちらの使い魔はどうする?」

爺さんがヘレンを見る。

「分けますので問題ありません。あ、でも、ジュースをもらえますかね? アルコールは飲めない子なので」

「わかった」

爺さんは頷くと、手を上げた。

すると、すぐにウェイターがやってくる。

「ワインと猫用のジュースを」

「かしこまりました」

ウェイターは一礼すると、下がっていく。

「ここ、ドレスコードがいる店では?」

雰囲気的に絶対にそうだ。

「気にする必要はない。私達しかおらんだろう?」

貸し切りにしやがった……

「さようですか。問題ないなら大丈夫です。猫を嫌がる客もいますからね」

「使い魔だろう? なら仕方がない。私の師匠にも使い魔がいるが、入店を拒否した店に魔術師協会を通じてクレームを入れていた」

この人は魔力を持っている。

多分、魔術師だ。

「あまり褒められたことではありませんね」

俺も嫌味をたっぷり言うけど。

「何十年も前の話だ。魔術師は使い魔を冷遇されると静かに怒る。それはどこの店もわかっているさ」

まあ、実際、拒否されたことないしな。

そのまま待っていると、ウェイターがワインとジュースを持ってきてくれたので乾杯をした。

そして、前菜から食べていく。

非常に美味しいのだが、3人娘と食べたサイドホテルの方が美味しい気がする。

なんでだろうね?

「ジークヴァルト君、アデーレは元気かね?」

「ええ。今頃は旧友と楽しんでいるんじゃないでしょうか」

会わないのかね?

前回も会っているようなそぶりはなかった。

「そうか。ならいい。時にアデーレを弟子にしたとか……貴殿とアデーレは魔法学校の同級生だろう? 同い年で弟子とはあまり聞かない話だ」

俺も聞いたことないね。

「弟子というより、同僚として錬金術を教えていると思って頂ければと思います。アデーレは優秀な人間ですが、本部に就職してからはずっと受付をやっていたので実践経験があまりありませんでしたので」

アウグストが人事部の奴に手を回したことは知っているのかな?

いや、さすがに知っているか。

「ふむ。貴殿が誘ったとか?」

「御存じかどうかは知りませんが、リート支部は当時、私を入れても錬金術師が3人しかおりませんでした。リートの町の規模から考えてもありえません。そこで私が同級生だったアデーレを誘ったのです」

「それで受付に不満を持っていたアデーレが乗ったわけだな?」

「そういうことです」

多分、この爺さん、その辺のことも知ってそう。

「しかし、リートに3人しかいなかったというのはすごいな」

「他所の町に引き抜かれたようです。リートは港町であり、船の製造のノウハウを知っている者達ばかりだったためにジーンに引き抜かれたようですね」

「あそこか……ノーコメントとしておこう」

王妃様案件だからな。

「私にとってはいい迷惑ですね」

「ほう?」

「飛空艇の製造は本部に任せておけばいいのです。馬の骨を集めても本部の連中の足元にも及びません。おかげで現在もリート支部は技術屋が4人です」

ホント、少ない。

勧誘してもことごとくフラれるし。

もはや俺の評判の悪さとか関係ない気がしてきた。

「錬金術師協会も大変だな」

「さっさと戦争を終わらせてもらえたらいいんですけどね」

「これは痛いところを突かれたな。はっはっは!」

爺さんが豪快に笑った。

笑い事ではないんだけどな。

「まあ、軍のことには突っ込みませんよ。部外者ですので」

「うむ。実にそうだ。だから私が錬金術師協会に首を突っ込んではいけないわけだ」

そう聞こえたか?

ならそうなんだろう。

「アデーレを王都に戻したいならご家族で話し合ってください。師弟関係は簡単に崩して良いものではありませんが、家族が反対し、アデーレがそれを望むならご自由に」

「別にそうは思っていない。もちろん、孫娘のことだから寂しいなとは思うが、アデーレが選んだ道だし、アデーレは見事8級試験に合格している。何も言うことはない」

じゃあ、帰っていいかな?