軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第217話 バカみたいな依頼

5階まで昇り、本部長室の前までやってきたので扉をノックする。

「本部長、ジークヴァルトです」

『おー、入れー』

許可を得られたので扉を開け、中に入る。

すると、本部長がデスクにつき、何かの書類を見ていた。

「お忙しかったですか? なら出直しますけど」

「たいした話じゃない。単純にどこも人手が足りないだけだ」

人員補充の要望書か……

「ウチもですよ」

「リートは問題ない。お前がいる。しかも、資格持ちが100パーセントの支部だろ」

技術屋が4人しかいないからな。

「本部長、さっき魔導石製作チームのマルタと話しましたが、あそこはヤバそうですよ」

「わかっている。くだらん戦争のせいだ。儲かるは儲かるんだが、この人手不足ではな……お前、リーダーにしてやるから魔導石製作チームに入らんか?」

「コリンナ先輩に悪いので遠慮しておきます」

なんで今さら激務な部署に行かないといけないのか。

「コリンナは喜んで譲ると思うけどな」

それほどまでらしい。

「空港でクリスとクヌートに会いました。暇そうですし、手伝わせたらどうですか?」

職務中に出迎える余裕があるということだ。

「ふむ。循環チームのリーダーであるクリスはダメだが、クヌートは良いかもしれんな」

「良いと思いますよ。あいつは試験を受ける気がありません。しかし、腕は確かですし、ちょうどいいでしょう」

腕は間違いなくある。

実技試験だけなら3級も受かると思う。

「よし、あいつを回そう。テレーゼを潰すわけにはいかん」

テレーゼは性格的に本部長みたいに上に立つことはできないが、頭も良いし、腕もある貴重な人材である。

「それでお願いします。いくら魔導石が必要とはいえ、その供給元が潰れれば終わりですよ」

「わかっている。しかし、軍人のバカ共は湯水のように使っていく。どれだけ程度の低い魔術師なんだ?」

「魔剣をありがたがるバカは理解できないのでわかりません。飛空艇開発を進めて、戦闘用の飛空艇を作ればいいのに」

他国の飛空艇よりも速く、相手の砲弾や魔法が届かない高度まで飛べる飛空艇……それを作った国が覇権を取るのは少し考えればわかるだろ。

「お前がその戦闘用の飛空艇を作るか?」

「私はもう戦争とは縁のないリートで魚を食べている錬金術師です」

「そうかい。リートってそんなに良いところなのか? クリス、ハイデマリー、テレーゼだけでなく、ゾフィーまでそう言っていたぞ」

良いところだよ。

でも、そう言うと、この人まで来そうだな……

しかも、確実に泊まるところが俺の家だ。

「人によると思います。本部長は好きじゃないと思いますね」

「お前、わかりやすいな……そんなに私に来てほしくないか?」

うん。

「あなたは王都から離れられないでしょ」

「まあ、そうだな。アウグストの件で魔術師協会も落ちた。今は足元を固め、権力を確実に手中に収めないといけない」

支部長が言っていた通り、本部長がこの国の魔法使いを牛耳るわけだ。

「頑張ってください。そのためには陛下の覚えもよくならないといけませんね」

「そういうことだ。それで今回の件だな」

杖ね。

「前回に引き続き、しょうもない依頼ですね。成長した俺は言葉を柔らかくして言いますが、バカなんですか?」

「バカなんだろうな」

やっぱりか。

「魔剣や杖に憧れるのはわかります。でも、それを依頼として、協会に出すのは度を越えていますよ」

「ホントにな。状況を考えてほしいものだ」

今は戦時中なのだ。

大丈夫かね、この国?

「それで杖はどういうものなんですか?」

「性能と見た目が最高のやつだな。まあ、側は私が作る。お前は魔石だ」

「ブーストするタイプで良いですか? 王太子殿下も魔術師でしょ」

杖には魔法の効果を増幅させるブーストタイプと杖自体に魔法が込められていて魔力を込めると決まった魔法が発動するトリガータイプがある。

俺達一門が本部長からもらった杖はブーストタイプだ。

「そうだな。それで良いと思う。どれくらいの時間がかかる?」

「普通ので良いなら1日ですね。最高級なら3日はください」

「じゃあ、3日な」

そうなるわな。

「わかりました」

「お前、弟子に杖をやらんのか?」

「いらないでしょ。あいつらも新品の杖を持ってましたよ」

アデーレは知らないけど、貴族なら親から贈られているだろ。

「ハァ……昔は弟子が一人前になったら杖を贈るのが習わしだったのにな……」

「錬金術師は外に出ないし、使いませんからね」

採取をする錬金術師なんか民間の駆け出しくらいだろう。

「時代かねー……でも、贈った方が良いぞ。あの3人も喜ぶだろ」

「そうですか? でも、一人前ねー……6級くらいですかね?」

資格証が銀に変わる6級くらいで一人前だ。

「厳しい奴だな、お前……10級でも一人前じゃないか」

「だったら全員、最初から一人前でしたよ」

エーリカとレオノーラが10級、アデーレが9級だった。

「優秀なことで……まあ、タイミングは師匠であるお前が考えればいい。師匠ってお前が考えるよりずっと大変なんだぞ」

「それはわかってます」

「いーや、わかってない。お前のところの弟子はまだ壁にぶつかっていない。その時こそ師匠として動かないといけない時だ」

ゾフィーを俺に丸投げした師匠が良いことを言っているような気がする。

「かもしれませんね。俺は壁にぶつかったことがないので」

「そうだな。お前は錬金術という分野ではぶつかったことがないな」

人間関係という分野で大きな壁にぶつかったな……

「あいつらが壁にぶつかったらどうすればいいんですか?」

「知らん。知らんが、ちゃんと話を聞き、寄り添ってやればいい。どうせいつも一緒にいるんだろうし、それならそれが最善だ」

適当っぽいなー……

「ふーん……ゾフィーには寄り添ってやってます?」

「あいつはもう大丈夫だ。ちゃんと顔を上げた」

そりゃ良かった。