軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第218話 鬼の目にも……

「あいつも魔導石製作チームに異動させたらどうです? 一回、精密機械製作チームから離した方が良いですよ」

ゾフィーは型に収まりすぎだ。

「あいつは今、飛空艇製作チームだ」

あー、俺とアウグストの後釜に入ったか。

「あいつでは厳しくないですか?」

「そんなことはない。それにやる気もあるし、あいつのためにもなるだろう」

ふーん……ゾフィーがねぇ……

「ならいいです」

「それで魔石の作成はいつから入る?」

「明日からですかね? なんかクリスに呼ばれているんで」

「明日、休みだぞ?」

確かに休日だな。

「明日は鑑定士の試験ですし、俺は王都でやることがないんですよ。それにこの1週間はほぼ休みのようなものです」

「弟子共とデート三昧か。明日は休みだから人も来ないだろうし、ここを使ってもいいが、翌日以降はどっかを探せよ」

それがあったな。

まあ、クリスかテレーゼのアトリエを奪えばいいか。

「わかりました」

「クリスが呼んでいるって何の用だ?」

気になったみたいだ。

「きっとハイデマリーじゃなくて、自分に付けっていう話だと思います」

「あいつ、本当に群れるな……」

群れるね。

だからカラスが使い魔なんだろう。

やはり孤高の猫よ。

「現状、もし本部長に何かがあり、次の本部長に誰がなるかと言われれば最有力はあいつでしょう? 足元を固めたいんだと思いますよ」

「ハァ……昔からそういう奴だったな。技術屋としても優秀だが、それ以上に政治家だ」

「貴族ですからね。貴族が嫌いでしたっけ?」

前にそう言っていた。

「さすがに自分の弟子は嫌いじゃないさ。クリスもクヌートも可愛い子だった。一部、可愛くない奴もいたがな」

俺とハイデマリーとゾフィーは可愛くなかったらしい。

「すみませんね」

「いい。お前達は結果を残しているし、さらに後継を育てている。立派さ。ちなみに、お前は誰が次の本部長に相応しいと思う?」

本部長が聞いてくるか……

「クリスですね。能力的に言えばテレーゼですけど」

「ハイデマリーは嫌か?」

「嫌ではないですけど、クリスの方が無難です。あとはゾフィーがどこまで伸びるかでしょうね。あと、あの内弁慶を治せるかどうかです」

あいつ、知らない人がいるとすーぐ気配を消すからな。

「まあ、そんなところか」

「もう次を考えているんですか?」

「別にただの雑談だ。あいつら、ひどいと思わんか? 私、まだ働き盛りの40代だぞ」

後継なんかを考える時ではないな。

「それほどまでに俺がリートに行ったのが嬉しいんでしょう。ハイデマリーなんか確認にまで来ましたよ」

「まあ、テレーゼのことがあったしな……今もハイデマリーに帰らせるように言ってある」

マルタが言っていた強制退場か。

本部長が指示したわけね。

さすがに本部長もテレーゼのことは心配みたいだ。

「後で様子を見てきます」

「そうしてくれ。さて、もう1つの話だ」

「試験ですね」

「ああ。理由は電話で言ったとおりだ。それでお前には試験作成と来月の試験官を頼みたい」

俺以下の奴が俺を評価するのはおかしいと常々思っていたが、ついに評価する側になったわけだ。

「担当の階級は?」

「好きなのを選んでいいぞ」

一番良いのは8級と7級だが……

「やいのやいの言われたくないから10級か9級でお願いします」

「そうか。両方やってくれるか。さすがはジークだな」

ウチの一門はどれかとどれかと言えばこう返ってくる。

「試験作成と試験官のどちらですか?」

「そうか。両方やってくれるか。さすがはジークだな」

録画映像かな?

「どうせ来月も来ることになるでしょうから構いませんが、よろしいんですね? 容赦なく落としますよ?」

「ちゃんと10級、9級に相応しいテスト作りと実技の試験官を頼むぞ。エンチャントの問題なんか入れるな」

さすがにそんなことはしない。

「化学を多めにしても良いですか?」

「その辺は好きにしろ。極端じゃなかったら構わん。でも、それでも落ちると思うし、逆に物理を多めにした方が良いと思うぞ。真にどっかのアホの成長を願うならな」

そうするか。

ぽっきり折れてくれ。

骨は折れても治る時にはさらに強くなるって聞いたことがある。

「わかりました」

「それとわかっていると思うが、問題の流出はダメだ。『試験を見せてあげるからリートにおいでよ、げへへ』って言うなよ。受付嬢を集めるなよ」

まるっきり変質者だな。

「それで受かるような無能はいりませんね。実技を見る際、ある程度は配慮すると思いますが、10級すら自分の力で受からない者はウチにも必要ありません」

マルティナで疲れたわ。

「おー、あのジークが配慮なんて言葉を覚えたか」

「ええ。どっかのアホのおかげです。私は平均というものを高くしすぎていたようです」

師である本部長はともかく、一門が優秀すぎたし、無能と思っていた本部の同僚連中も実は優秀だった。

何よりも『なんでこんな問題もわからないんだろう?』が脳内を埋め尽くしていた3人娘ですら才女なことに気付けたのだ。

俺が圧倒的に優秀すぎたゆえの弊害だな。

「下なんか見えんしな」

「ええ。最近は自分でも視野が広くなったなと思います。挨拶と感謝の言葉が大事なんですよ」

それだけで大きく変わる。

「そうか……最初に出会った時から挨拶なんかせず、暴言を吐きまくっていたクソガキのお前がなー……」

本部長がハンカチを取り出して目頭を押さえ始めた。

「年取ると涙腺が緩むのか? お前に涙があるとは思わなかったわ」

昔を懐かしんでもらおうと思ったのだが、なんか目が据わったのでヘレンを抱えて慌てて逃げた。