軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第198話 反省

俺とゾフィーは買い物を終えると、ドックに戻るために並んで歩いていく。

「ゾフィー、3週間以内にできるか?」

「できる。問題ないわ」

「残業せずに?」

「それは無理。でも、残業くらいいいでしょ」

さすがは本部の人間だな。

「ゾフィー、残業するのは構わんが、ウチでやってくれないか?」

「ウチ? あんたの家ってこと?」

「ああ。俺は3人娘に残業をさせる気がない」

「なんで? あの3人ってそんなに気力がないの?」

気力はあるだろう。

残業しろと言えばする。

「さっきも言ったが、あの3人には資格習得を最優先させたいんだ。木材の加工だけなら残業せずに完成する。あとは勉強なんかをさせたい」

エーリカとアデーレの合格は難しいだろうが、鑑定士の資格習得に向けた練習もさせたい。

「なるほどね。まあ、いいんじゃない? ちょっと甘い気もするけど」

「そこが難しいところなんだ。俺は残業して、その後に勉強もできるし、多少、睡眠も削れる。でも、それを3人に押し付けていいとは思っていないし、多分、無理だ。あの3人を指導し始めて、最初に気付いたのが『俺ができるのだからお前らもできるだろ』という押しつけをしてはいけないということだ」

あいつらが女で良かった。

気付いたきっかけが男女の体力の差だったからだ。

「ふーん、隠れてコソコソやるのはあの子達に罪悪感を覚えさせないため?」

「絶対に覚えるだろ」

「そんな感じね。私は一切、気にしないけど」

それは俺もだ。

でも、あいつらは光の者だから。

「そういうわけで頼むわ」

「わかった……あんたは良い人に出会ったわね。本当に浄化されてるわ」

そうかもな。

俺達がドックに戻ると、すでにマルティナがおり、エルネスティーネに指導されながら木材を加工していた。

俺とゾフィーは作業を分担し、動力部材の錬成に入る。

「……あんた、早すぎない?」

銅線を作るために銅鉱石を銅のインゴットに変えていると、ゾフィーが呆れたように聞いてくる。

「この程度のランクならすぐだ」

「そ、そう?」

ゾフィーがそーっとマルティナを見る。

マルティナは信じられないものを見る目で俺を見ていた。

「私が何週間もかけてやっている錬成が一瞬です……」

「あれを見るな。見た目ではわからんだろうが、中で錬成を複数回同時に行っておる。バケモノじゃ」

ほー……よくわかるな。

「あの人がいても一番を目指すわけです?」

「目指せ。おぬしはあいつに年齢という点で勝っておる。おぬしの未来は無限大じゃ」

「おー……頑張ります!」

飴と鞭も上手い……

さてはこいつ、俺より人間性が良いな。

「めっちゃ良いこと言うわね、あのハムスター」

「そうだな。お前もしょうもないことを気にしないで少しずつやっていけばいいだろ」

「そうね。あんたに年齢で勝ってるわ」

若い方が可能性があるってことなんだろうが、勝ってるでいいのかね?

俺達はその後も作業を続けていき、仕事を終えた。

そして、エーリカの部屋で夕食を食べた後、勉強会をし、自分の部屋に戻る。

「勉強会は終わった?」

リビングで作業をしているゾフィーが聞いてきた。

ゾフィーは勉強会に参加せずに残業をしていたのだ。

「ああ。優秀で助かるわ。マルティナとは大違い」

そう答えながらゾフィーの対面に座り、作業を始める。

「実際のところ、あの3人ってどうなの? マルティナより魔力が低いけど」

魔力が低いのはお前もだけどな。

「天才ではないな。でも、センスはあるし、頭が良い。それだけで十分だ」

「人のことを言えないけど、錬成が遅すぎない? 木材の加工であんなにかかる?」

ホント、人のことは言えないな。

「それは性格と慣れてないせいだ。その内よくなる」

「ふーん……どれくらいになれると見てるの?」

「4級だな」

多分。

「そこまで行く?」

「あいつらは頭が良いからな。筆記は問題ない。実技も俺が教えるからそこまではできるだろう」

まあ、マルティナに教えていてわかったことだが、正直、俺に指導力はそんなにない。

3人娘に教え、成長していくのを見て、あるのかなーと思ったが、3人娘が優秀なだけだった。

「ちなみにだけど、私があんたの弟子だったらどこまで行けると思う?」

「多分、ケンカ別れだ。あいつらの良いところは俺の言うことをよく聞くことでもある。反発ばかりする俺達とは違う」

「そう言われると、ウチの一門って我の強い奴ばかりね」

その最たるものがお前であり、マリーであり、俺だ。

「本部長にもう一回見てもらえば?」

「忙しそうだし、頼みづらいわよ」

アウグストの件もあるから忙しいとは思うが……

「それでも頼んでみろよ。師匠だろ」

何を俺にぶん投げてるんだよ。

しかも、どう考えてもぶん投げる相手を間違えてるわ。

「そうねー……よく考えたらここ数年、見てもらった覚えがないわ」

「俺はかなり前からない。薄情な師匠だ」

下手すると、魔法学校に入ってからは一回も見てもらってない気がする。

「本部長さんの名誉のために言いますが、何度も『見てやろうかー?』と声かけしてくださったのに『いらない』って答えたのはジーク様ですよ」

ヘレンがそれだけ言って、再び、寝だした。

「嫌な弟子だな」

「ホントよね。私も断ったことがあるわ」

お前もか……

「もし、3人娘に本部長と同じように声をかけて、俺と同じような答えが返ってきたらちょっとショックだな」

「そう……よく考えたらもう誰も本部長の指導を受けてないんじゃないかしら?」

そんな気がする。

一番下のゾフィーですらこれだもん。

「師匠とも呼んでないしな」

就職するまではずっと師匠と呼んでいた。

それは俺だけでなく、皆もだ。

「師匠というより上司だものね……」

悪いことしちゃったな。

やっぱり人間性って大事なんだなー。