軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

252、ハルカの不思議と美しい城

「可愛らしいお店だったね〜」

「うん。リンハさんらしいお店だった気がする」

また城に向かいながら、リンハの店について感想を話した。明るく落ち着く雰囲気が、店主のリンハそっくりだったのだ。

「分かる」

「時間があれば、様々なお店を回ってみたいね」

ソフィアンは、竜の世界の店に興味を惹かれたらしい。

「色々と違いがあるみたいでしたよね」

ロランがソフィアンの言葉に答えるようにそう言うと、ソフィアンが顎に手を当てて何やら考え込み始めた。

「改めて、別の世界なのにこうして普通に過ごせることが不思議だよね。ディアス様が私たちの世界で問題なく過ごされていたから、逆も問題ないだろうとは思っていたけど、なぜ問題ないのかは気になるよ」

そこはマルティナも少し気になっていたが、結論が出るほどの情報はなく考えるのをやめていた。しかし、一番可能性が高いとすれば。

「やはり魔力でしょうか」

「うん、そうなるよね……」

共通点はそれしかないのだ。そこが根幹だと言われれば、どちらの世界でも普通に過ごせることの説明はつく。

ただ――。

「それだとハルカはどうなるのだ?」

マルティナの疑問をディアスが代弁してくれた。ハルカの元いた世界には魔力がなかったのだ。なぜ魔力がなかった世界にいたハルカが、マルティナたちの世界で普通に過ごせるのか。

いや、それどころではない。なぜハルカは突然魔法を使えるようになったのか。それも聖女として不足ない、稀有な力を。

「わたしも少し不思議なんですよね」

ハルカが自分の手のひらを見つめて呟いた。

「日本にいたときは魔法なんて使えませんでしたし、そもそも皆さんが使うような魔法は存在しなかったんです。なんで魔法が使えるのか、ずっと引っかかってますが……」

そこで顔を上げると、何かを思い出すように宙を見つめる。難しい顔で考え込んでから、思わぬ言葉を落とした。

「そういえば、わたしって日本にいる時はそこまで体が強くなかったんだよね。いや、病弱ってほどではないし普通に暮らせてたけど、夜は疲れて気絶するように寝てたことも割とあって――」

「そうなの?」

マルティナは驚いてしまった。ハルカに体が弱いような様子は一切なかったのだ。むしろマルティナよりもよほど体力があるだろう。

「うん。改めて考えてみると、マルティナたちの世界に来てからの方が動いても全然疲れないかも。それにまだ少しだからよく分からないけど、ここに来てからもっと体が軽いような……」

ハルカがさらに考察を深めようとしたところで、近くを地車が通った。結構な速度を出していたようでブワッと風が吹き、何気なく釣られて顔を上げると――少し先に、巨大な建造物が見えた。

「もしかして」

ディアスも気づいたようだ。

「お、見えてきていたか。あれが城だ」

もう少し先に進むと、その全容が見えた。とても大きなそのお城は、純白の城である。輝くほどの美しさについ声を上げてしまった。

「綺麗……!」

城の形はマルティナたちの世界とあまり変わらず、どちらかといえば街中の風景よりも見慣れた安心感を覚えるものなのだが、その色味は初めて見る。本当にくもり一つなく真っ白なのだ。

そしてその白をさらに際立たせているのが、白を縁取るような形で少し使われている青だろう。こちらも鮮やかな青だった。空よりも濃い青だ。

「幻想的だね!」

「これは凄いな」

「この綺麗さをどう維持しているのだろう」

マルティナたちが感動している中で、ディアスは少し口元を緩めている。

「懐かしいな」

その言葉に何も言えなくなってしまった。申し訳ない気持ちが湧き上がるが、ここでまた謝るのも違うだろう。気を遣いすぎるのも良くない。

結局口を閉じたままでいると、ディアスが城の左下あたりを指差した。

「あの辺りから坂道を登って城に入れる。門があるが、我があれば問題ない」

話を変えてくれたことをありがたく思い、マルティナは明るく答えた。

「分かりました。早くいきましょう!」

張り切りすぎたマルティナが坂道の途中で急失速し、少し呆れたディアスに運んでもらったりと少しのトラブルはあったものの、マルティナたちはついに城に着いた。

入り口はディアスが顔パスで、城の中も自由に動き回れるようだ。長が叔父というのは伊達ではないらしい。

ただマルティナたちの世界とは違って、城の中の雰囲気は厳格ではなく自由と言ったほうが近い感じだ。身分はあまり気にしなくとも良いというディアスの言葉を少し信じてもいいのかもしれない。

騎士のような警備の者もあまりおらず、すんなりと長の執務室だという部屋の前に到着した。