軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

245、大陸会議の再開とディアス

マルティナは皆に連れられて大ホールを出て、近くの小さな会議室に入る。

「本当にすみません……」

その頃には涙も止まり落ち着いていたマルティナは、恥ずかしくて顔を上げられなかった。

そんなマルティナの肩に、ロランがポンっと手を置く。

「いや、謝る必要はないだろ。マルティナ、カッコよかったぞ」

「うん、凄くね」

「わたくしは感動してしまったわ」

ハルカとナディアがロランの言葉に頷きながらそう言った。

「……大怪我をする行動に出たことについては言いたいことが山ほどあるが、マルティナの行動が間違っていたとは思わない」

「そうっすよ。むしろ俺が守れなくて本当に申し訳なかったっす……」

会議室を準備してくれていたシルヴァンからは少し早口でマルティナを認める言葉が伝えられ、サシャはむしろマルティナよりも落ち込んでいた。

そんな皆の言葉で、マルティナは顔を上げることができる。

「ありがとうございます……サシャさんは落ち込まないでください。さすがに私が勝手に動きすぎたので」

「いえ、そういう時にも守るのが護衛っすから!」

瞳に闘志を燃やしたサシャはとても頼もしかった。

「そうだな。俺ももっと瞬発力を上げよう」

「ロランさん、一緒に鍛錬っすね」

「だな」

二人の会話に雰囲気が緩んだところで、会議室の外で護衛をしてくれていたフローランが中に顔を出した。

「皆さん、大陸会議が再開されるようです」

「分かりました。戻ります」

そうして戻った会場では他の官吏たちが動いてくれたようで、いつものようにテーブルと椅子が設置されていた。それに感謝しながらマルティナたちも指定の場所に座る。

マルティナとソフィアンは司会席の近くで、ハルカもその隣、そしてロランたちは官吏としてホールの端に立って待機だ。

「では、大陸会議を再開します」

ここからの司会は宰相であるロートレック侯爵となった。先ほどの混乱が嘘のように、スムーズに会議は進行していく。

改めて魔法陣についての扱いや別世界との付き合い方について話し合いがされ、やはり排除や魔法陣の破棄、封印などは悪手だと、上手く付き合っていく方向で話し合いは進んだ。

サマヤや他数人の代表者たちは完全に納得している様子ではなく、やはり脅威を完全に排除する方法もあるのではないかと考えているようだったが、現状では消極的な賛成を選んでいるように見えた。

「これからも問題は発生するだろうが、こうして話し合いで解決できたらと思っている」

ラクサリア国王の言葉に皆が頷いたところで、国王は少し雰囲気を緩める。そしてマルティナに体ごと視線を向けた。

「して、マルティナには聞きたいことがあるのだが」

「はい。なんでしょうか」

改まって聞かれるようなことはあっただろうかと不安になる。背筋を伸ばして次の言葉を待っていると、色々あって忘れかけていたことを問いかけられた。

「ディアス様はマルティナたちを向こうに連れていくというような話をしていたと思うのだが、それはどういうことだろうか」

まだその報告は誰にもしていなかったのだ。帰還の魔法陣が完成して、転移に成功して、さらに大人数で転移が可能でなければ実現しない話だったので、確定してから報告しようと思っていた。

「……ご報告が遅れて申し訳ありません。ディアス様の故郷への転移が先に実現しそうでしたので、成功した時には向こうに私たちと共に向かい、ハルカの帰還の魔法陣を完成させるヒントを探そうと話をしていたのです」

「そういうことか……」

「はい。一応あの魔法陣による転移は五人まで同時に可能ですので、私とロランさん、そしてハルカとソフィアン様が候補と考えています」

軽く話し合っていて、メンバーは決めていたのだ。護衛はロランだけとなってしまうが、ディアスもいるため許容することとなった。ソフィアンがこれは外交だと同行を強く主張したのもある。

「ソファアン、お前も行くのか?」

「はい。私は外交も担っておりますので」

「確かにそうだが……前もって報告しろ」

国王の疲れたような声かけに、ソフィアンは笑顔で頷いた。ソフィアンは誠実そうに見えて、意外と打算的な面もあるのかもしれない。

「申し訳ございません。ただ他に同行できる方もおりませんので……皆様の中で手を挙げる方はおられますか?」

他国の代表者たちに問いかけたが、誰一人として手を上げなかった。ディアスとほとんど接したことがない者たちが、竜の世界についていくというのは死地に飛び込むような恐怖があるだろう。手を挙げる者がいるはずもない。

「では、先ほどの候補者たちがディアス様と共に竜の世界へ行くことに異論がある者は?」

ラクサリア国王の確認にやはり誰も言葉を発さず、国王はマルティナとソフィアン、ハルカにロランを真剣な表情で順に見つめた。

「絶対に、無事に帰ってこられるのだな?」

「はい。私はディアス様を信用しています」

「この世界で他国に向かうよりも安全でしょう。何せディアス様という護衛がいますから」

マルティナとソフィアンが答えると国王は頷き、四人の竜の世界行きは承認された。どのぐらいの期間になるのか分からないが、あまり長くなりすぎないようにとの心配の言葉ももらう。

それからは浄化石の運び出しや運搬の進捗に関する情報共有がなされ、大陸会議は終わりに向かった。

「それでは本日の大陸会議は――」

ロートレックが終了の声かけを始めたところで、突然室内がピカッと明るくなる。誰もが驚きに肩を震わせる中、光ったのは大ホールの奥に移動されていた魔法陣だ。

魔法陣の周りにいた見張りの騎士たちが、剣は抜かずに警戒を露わにする。

そんな中で光はさらに強くなり――視界がほぼ真っ白に染まったところで、人影が現れたのが見えた。光が霧散し、マルティナの視界に満面の笑みのディアスが現れる。

「ディアス様!」

思わず声をかけると、ディアスはその他の人間は全く気にせず、ズンズンとマルティナの下に向かった。そしてずいっと顔を近づけて、いつもより高めの声で告げる。

「マルティナ! 無事故郷に戻れたぞ!」

その報告に、安堵と嬉しさがマルティナの胸中に広がった。