軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

242、帰還の魔法陣の完成!?

ラクサリア王宮に戻ってから一週間。マルティナたちはひたすら帰還の魔法陣研究を進めた。人魚に会う魔法陣に組み込まれていた特定の個人の魔力を感知する方法を抜き出し、さらに応用して、ディアスの感知魔法と組み合わせる。

何度も計算して、近場への転移で安全性を確かめ、そしてついに――。

「これで完成だ!」

ディアスが喜びを隠しきれないように叫んだ。今目の前にある魔法陣を発動させれば、ディアスの故郷の世界に帰れるはずである。

「やりましたね!」

マルティナは大きな達成感と共に、笑顔でディアスを見上げた。

「ああ、マルティナのおかげだ!」

ディアスは嬉しそうにマルティナを抱き上げる。もはや抱き上げられることに慣れてきてしまったマルティナは、突っ込むこともせずにそのまま喜び合った。

「いつ発動させますか?」

ハルカの問いに、ディアスはニヤッと笑う。

「もちろん決まっている。今からすぐだ。さっそく――」

「ちょっと待ってください!」

すぐにでも魔法陣に魔力を込め始めそうなディアスを、マルティナが慌てて止めた。その場に下ろしてもらってから、ディアスを見上げて伝える。

「せっかくなので大ホールでやりませんか? 皆さんも研究の結果が出るかどうか気にされてると思います」

現在の各国の代表者たちの話題は浄化石の運搬についてと、ディアスの今後についてなのだ。ディアス本人がこれからこの世界でどう動くのかについても重要事項だが、何よりも別世界との繋がりに関しては誰もが大きな関心を寄せていた。

後ほど報告する形でも構わないのだが、やはり目の前で転移するところを見てもらった方が理解は早いだろう。それに世界を跨ぐような大きな転移を行う時には、そのことを事前に知らせておいた方が、代表者たちからの信頼に繋がる。

「わたしも賛成です。こちらに戻ってくる際にもその魔法陣が座標になるようになってますし、魔法陣の見張りなどもいた方がいいと思います」

ディアスはこちらの世界に戻ってくる魔法陣も持って自らの世界に帰る予定だが、戻ってくる際に発動させる転移魔法陣の転移先は、ディアスが自らの世界に戻るために発動させる魔法陣にしてあるのだ。

つまり上手くいけば、向こうに行く際に使った魔法陣にそのまま戻ってくるということである。

「俺もちゃんと体制を整えてからがいいと思います。すぐに準備はできますから」

ロランの言葉に、ちょうど仕事の用事で書庫にいたナディアも口を開く。

「わたくしたちですぐに準備いたしますわ。今は午前中ですから……昼食後、午後の早い時間の予定ではいかがでしょうか」

皆から提案され、ディアスでもさすがにここまで待ったのだからあと数時間なら待てるのか、渋々ながらも頷いた。

「仕方がないな。では大ホールとやらから転移しよう」

「ありがとうございます。じゃあ、さっそく準備に取り掛かりますね!」

マルティナの言葉が合図となり、皆が忙しく動き始めた。緊急大陸会議の開催が決定だ。

それから数時間後の大ホールには、ラクサリア王宮にいる各国の代表者たちが全員集まっていた。いつもはホールの真ん中に円状に設置されているテーブルはなく、大ホールの真ん中にあるのは魔法陣だ。

その魔法陣の傍にいるのはディアスで、代表者たちはホールの壁近くにずらりと並んで様子を窺っていた。

「皆様、急な召集にもかかわらず応じてくださり感謝申し上げます。この度はディアス様の故郷への帰還の魔法陣が完成しましたので、その発動に立ち会っていただきたくお声をかけさせていただきました」

帰還の魔法陣研究を主導していた責任者としてマルティナが説明を始める。魔法陣完成の報告に、大ホール内はどよめいた。

「これで別世界に行けるのか……?」

「そう言われても、半信半疑だな」

「しかし聖女様の召喚はできたのだから、送還もできなければおかしいだろう」

「この世界の中ならば転移できるのだからな。少し範囲が広がるだけと考えたら……」

様々な声が飛び交う中で、ディアスが動くとピタリとどよめきが止まる。やはり恐れられているようだ。

この場にいる代表者たちの中には、本音ではディアスが故郷に戻って、こちらに戻れなくなればいい。もしくは転移が失敗して命を失うのでも構わない。そう思っている人もいるのだろうとマルティナは思う。

しかし、ディアスの力がこの世界にとって過ぎたものである以上は仕方がないことだと、今は考えないようにした。この世界に魔法陣という技術が生み出されてしまった以上、別世界との関わりで問題が発生するのは仕方がないことなのだ。

一度その技術が生まれたら、もうなかった頃には戻れない。マルティナはここまでの経験でそれを強く実感していた。

「では、故郷に戻ってくる」

嬉しそうなディアスの宣言に、マルティナは頷いて答える。

「はい。気をつけてください」

「何度も検証したのだ、問題はないだろう。久しぶりの故郷の様子を少し確認したらすぐ戻るので待っていろ。問題がなければマルティナたちを連れていく」

「ありがとうございます。準備してますね」

その答えに満足そうに頷いたディアスは、浮き足だった様子で魔法陣の真ん中に立った。そして器用に足から魔法陣に魔力を注ぐと、半径数メートルの大きな魔法陣が光を帯びていく。

自然魔力を吸収して、どんどん光が強くなり、次第に眩しさのあまりディアスの姿が見えなくなって――。

キュインっと一気に魔法陣の真ん中へと光が収束した時には、すでにディアスの姿はなかった。転移成功だ。