作品タイトル不明
241、ラクサリア王国への帰還
竜の姿になったディアスの背に乗って、一直線にラクサリア王国の王宮に帰ることになった。
マルティナはその道中で、少し落ち着かない様子を見せているハルカに気づく。
「ハルカ、大丈夫?」
「……うん、平気だよ。ただ戻ったらディアス様の世界にも行けるようになるのかと思うと、ちょっと落ち着かなくて」
「ついに別世界に繋がるんだもんね……上手くいくかな。とりあえず、集中して研究の仕上げをしないと」
数週間のうちに空き時間で研究を進めていたが、やはりガッツリとそれだけに時間を割ける状況とは違うのだ。
「うん。もし上手くいったら、わたしたちもディアス様の世界に行くんだよね」
ハルカの世界、日本へ戻るためのヒントを見つけるために、ディアスの世界に一緒に行くという話をしていた。
「その予定だけど、まだどうなるのかは分からないよね……でも、行く心構えはできてるよ」
マルティナはハルカと離れ離れになってしまうことを寂しく思うのは仕方がないと受け入れたが、それと研究は別だと必死に割り切り、研究に関しては成功に向けて全力を注いでいる。
「うん、わたしも、覚悟は決めてるよ」
「もし行けることになったら、一緒に頑張ろうね」
そうして二人が覚悟を確かめ合っていると、どんどん時間は経ち、ついにラクサリア王国の王宮が見えてきた。なんだかとても久しぶりな気分だ。
「着いたね」
ソフィアンが安心したような声を出す。ディアスやハルカのおかげで危険はほとんどない快適な道中だったが、やはり気を張っていることも多く、こうして無事に帰還できたことを実感すると安心できた。
「王宮を見るだけでちょっと気が抜けますね」
「分かる」
「わたしにとっても、もうこの王宮が帰る場所になってるかも」
皆で王宮を見ているとすぐに騎士団の訓練場の上空に着いた。下ではちょうど騎士たちが訓練をしていたが、ディアスに気づいて慌てて避けるのが見える。
さらに報告が行ったのか、またラクサリア国王を始めとして各国の代表者たちが訓練場に集まってきていた。
そんな中でディアスはふわりと下降し、ドシンッと少しの衝撃と共に訓練場に降り立った。
「着いたぞ」
もう何度も繰り返しているため慣れたように降りると、ディアスはすぐに人型に戻る。そして待ちきれないようにマルティナを小脇に抱えると、勝手知ったら様子で王宮図書館を目指して大股で歩き始める。
「ちょっ、ディアス様! 歩きます!」
「マルティナに合わせていたら遅いだろう?」
「確かにそれはそうですが……」
国王や各国の代表者たちの前で小脇に抱えられるのはさすがに居た堪れなかった。しかし降ろしてもらえる気配はないので、必死に腹筋を使って顔を上げながら、国王たちに報告をする。
「浄化の旅は完了しました! 旅の途中で魔法陣に関する新たな情報を得る機会に恵まれ、帰還の魔法陣研究も進みそうです……ということで、研究を今から再開します!」
「おい、ハルカも来い」
「もちろんです」
ハルカも行くとなるとその護衛としてフローランも同行することになり、もちろんロランとサシャもなので、最初にディアスがここに来た時のように説明係として残されるのはソフィアンである。
「ソフィアンさん、すみません……! お願いします!」
苦笑を浮かべつつ頷いたソフィアンは、マルティナたちに緩く手を振ってから、国王たちに向き直った。
「失礼いたしました。では私から、浄化の旅の成果についてご報告させていただきます」
そんな言葉を最後にマルティナたちは王宮内に入り、ズンズンと進んで王宮図書館の書庫に着いた。バンッと勢いよく扉を開けたディアスだったが、すでにディアスに慣れているラフォレたちはあまり驚いている様子がない。
「おお、お帰りだったのですね」
「うむ、今帰ってきたところだ。さっそく研究を再開する。実は重大な情報を得られてだな……」
説明を始めるディアスの周りに歴史研究家の面々は興味深そうに集まってきた。休む暇もなく、研究再開である。
「マルティナ、あの本についての説明を」
「はい。ではまず、帰還の魔法陣研究に関して重要なところだけを――」
それから王宮図書館の書庫は、しばらく賑やかだった。