軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

232、シーサーペント討伐

シーサーペントの怒涛の攻撃が収まったところで、一旦退避していたサシャが素早く近づいた。そして軽い雷撃と共に、注意を自分に引き付ける。

ガキンッと金属同士がぶつかり合うような音を響かせながら、首だろう場所に剣を振り、弾かれた反動を利用してシーサーペントの目の前に躍り出た。

怒りを湛えたシーサーペントは、目の前に飛び込んできた獲物に食いつく。丸呑みするように大きく口を開け、サシャを飲み込――もうとしたところで、シュンッと軽いとも言えるような音が響いた。

その音の発生源、ハルカの光線は口を開いたシーサーペントの口内に吸い込まれていく。

「グオッ、コッ、コォォォォォ」

おそらく喉に穴を開けられたシーサーペントは、空気が漏れるような奇妙な音を発した。声が出ないのだろう。

しかし片目となっている左目には、強い怒りが宿っていた。シーサーペントも引くつもりはないようだ。

巨大な体を天に登らせるように立てると。

「ギィィィィィィィ!」

奇妙な不協和音のようなものを発した。空にあった雲に巨大な穴が空き、強風が吹き付ける。

ゴォォォォォと低くて鈍い音がすると共に、海の沖合に巨大な波が見えた。シーサーペントが高波を起こしたのだ。

あれが岸までやってきたら、町にも大きな被害が出るだろう。マルティナは恐怖心から、思わずロランの服の裾を握りしめた。

「大丈夫、でしょうか」

マルティナの知識の中にあれほどの高波をどうにかする術はない。あまり量を読めていない海に関する書物の中でいくつか波に関する言及もあったが、その全てが海から離れて高い場所に避難しろというものだった。

つまり、波を消し去るのは不可能ということだ。

しかし今から避難するのも間に合うとは思えない。特にマルティナたちだけならばまだしも、町に危険を伝える時間はない。

(ハルカ、サシャさん、フローラン様)

マルティナはキツく唇を引き結んで、シーサーペントと戦う三人を信じた。戦えないマルティナには、これぐらいしかできないのだ。

ロランとソフィアンが闇魔法と風魔法で少しでも波を防ごうと構える中、高波はマルティナたちを襲い――。

ドンッッ。

しかし、衝撃が体を襲うことはなかった。その寸前で眩い光の本流が高波に向かい、波は大量の水飛沫を発生させながら姿を消したのだ。

偉業を成し遂げたのは、ハルカである。

「ハルカっ!」

マルティナは思わず叫んだ。するとハルカもすぐにこちらを振り返る。

「マルティナ、大丈夫!?」

「大丈夫……!」

心から心配しているような声音に、マルティナはなぜか泣きそうになった。こんな時なのに、ハルカとずっと友達でいたいと、いつまでも楽しく笑い合っていたいと思ってしまう。

その気持ちを振り切るように叫んだ。

「黄色い小さな魚はサンダーフィッシュ、雷魔法に気をつけて! 赤い魚はストーンフィッシュ、毒があって少量でも体が石のように重くなるから絶対に触らないで! ブラックスカロプは巨大な二枚貝で挟まれたら腕も切断するぐらい強いよ!」

高波によって魔物が打ち上げられていたので、目についた魔物の危険性を端から伝えた。やはり瘴気溜まりの影響なのか、強い魔物が多い気がする。

「了解!」

「さすがマルティナさんっす!」

「助かります」

ハルカに続いてサシャとフローランからも感謝を伝えられた。

「よろしくお願いします!」

マルティナは知識の提供しかできないので、あとは任せるしかない。敵が増えて大丈夫かと不安に思っていると、目の前のロランが振り返ってニッと笑みを浮かべた。

「そんなに心配しなくても大丈夫だ。マルティナのおかげで的確な動きができるからな」

ロランの笑顔はマルティナに強い安心感をもたらした。

「はいっ」

それからの三人は凄かった。増えた魔物を的確に倒しながら、あくまでもシーサーペントの討伐に向けて連携する。サシャが囮をこなしてハルカが攻撃をし、フローランがそのハルカを守る。

変わらぬ連携によってシーサーペントはさらに傷を増やし、最後もハルカの光線だった。

ヒュンッと目で追えない速さで飛んだ光線はシーサーペントの左目を潰し、そのまま頭を内側から傷つけたようだ。

暴れ回るように動いていた巨体が動きを止めて力をなくし、すぐにドシンッと砂浜に倒れ込む。

一度倒れ込んだら、もう動くことはなかった。

「我の出番はなかったな」

隣のディアスは気づいたら串焼きを食べ終えていたようだ。その言葉で脅威が去ったことを実感し、マルティナは全身から力が抜けた。

その場にへたり込みそうになり、慌てて足に力を入れる。

(皆が無事で良かった。町に被害もほとんどない。本当に良かった……)

心から安堵していると、ハルカが笑顔で大きく手を振っているのが見える。

「討伐できたよ〜!」

隣のサシャも笑顔で、フローランも安堵の笑みだ。マルティナはロランとソフィアン、そしてディアスと共に三人の下に向かい、皆で無事を喜び合った。

「ハルカ、本当にありがとう。フローラン様とサシャさんも凄かったです!」

「無事に倒せて良かったね」

マルティナ、ソフィアンの言葉にハルカが答える。

「はい。ただ、かなり強い魔物でしたね」

横たわるシーサーペントに視線を向けた。マルティナも改めて目を向けると、その大きさに圧倒される。力なく横たわっている状態で、まだ見上げるほどに大きいのだ。

尻尾側という言い方が正しいのか分からないが、体の半分近くは海の中にあるにもかかわらず、今見えている部分だけでしばらく歩かなければ全容が把握できない程に大きかった。

「大きいですね……」

「討伐できる人がいない状態で暴れてたらと思うと……想像もしたくないな」

顔を顰めたロランにマルティナは頷く。もしハルカやディアスがいなければ、町は壊滅していたかもしれないのだ。

予定になかったこの町に寄って良かったと、心から思った。大勢の町の人たちの命が救われたのだ。

何気なく町がある方を振り返ると、戦闘音が聞こえたのだろう、何人もの人たちが様子を見にきている。その表情は不安げで、もう危険は去ったと伝えなければとマルティナが息を吸い込んだ、まさにその瞬間。

「シーサーペントを倒せるなんて!!」

先ほどまで高台で聞いていた代官の声が、近くから響いてきた。