軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

157、討伐成功!

右手の人差し指を立てたソフィアンが布に向かってくるっと指を動かすと、その瞬間にふわりと布が浮いた。

薬品がたっぷりと染み込んでいるのが分からないほどのコントロールに、アレットが感嘆の声を上げる。

「凄いコントロールだね!」

「ありがとう」

柔らかく笑ったソフィアンは、僅かに瞳の光を鋭くしてゴーレムを射抜くと……思いっきり布を飛ばした。

素早く飛んでいった布はゴーレムの左肩に向かっているが、それにゴーレムが気づく。鬱陶しそうに左手を動かして布を払おうとして、その手を光の奔流が襲った。

ハルカだ。ゴーレムの手は、布を払うことなく弾かれた。

「ソフィアンさん、そのまま!」

ハルカの声に従ってソフィアンはさらに魔法を強くし、大きな布がゴーレムの左肩を覆う。

「あとは俺が!」

そう叫んだロランは、ゴーレム自身の影を上手く操り布を固定した。

「成功ですね!」

「あとはなんとか効果があればっ」

「ハルカっ、五分ぐらいしたら布を退かすから、左肩を攻撃して!」

「了解! あと五分ね!」

マルティナとハルカのやり取りを聞いて、他の騎士たちも改めて気合を入れる。

それからハルカたちが、布からゴーレムの意識を逸らすように上手く戦いを展開し――五分と待たず数分後には、明らかにゴーレムの左腕の動きがぎこちなくなっていた。

何かに引っ掛かるように、ギッ、ギッと変な音を発して動く。

「明らかに効果がありそうです」

「これは次の布も飛ばそうか。両手両足が使えなくなれば、もうあたしたちの勝ちだよ」

「そうですね。では攻撃の要である腕に原液を、足には薄めたものにしましょう。また布を使いまわせるようなら、少しずつ移動させてゴーレムを弱らせましょう」

今後の方針が決まったところで、マルティナたちは次々と布を飛ばしていった。ゴーレムは最初の薬液が効いているのか、動きが鈍くて布を被せるのにもあまり苦労しない。

そうしている間に五分が経ち、ソフィアンが最初の布を肩から外した。

「ハルカ!」

マルティナの声掛けに、ハルカがすぐに応える。

「分かってる!」

その言葉の直後、素早い光線がゴーレムの左肩を襲った。その光線はゴーレムの肩に当たり――何の抵抗も感じさせず、そのまま貫いた。

ガタッッ。

ゴーレムの肩から力が抜ける。

「効果ありです!」

マルティナが歓喜の声を上げた直後、攻撃が効くことを確認したハルカが光線を続けて放った。するとその全てがゴーレムの肩を貫き、左腕が落ちた。

ドサッと地面に落ちて、もう腕は動かない。

「これで勝てるぞ!」

「俺たちも聖女様に続け!」

攻撃が通ったのを見て、騎士たちの士気も一気に上がった。ソフィアンが右肩の布をズラすと、そこに騎士たちの魔法が次々と着弾する。

個々の魔法はハルカの魔法ほどの威力はないにしても、少しずつゴーレムの肩は削れていった。最後には土魔法で盛り上がらせた地面から飛び上がり、一人の騎士が剣を突き刺す。

それによって、ゴーレムの右腕も落ちた。

「よしっ!」

「次だ!」

それからは布をずらしながらゴーレムを弱らせ、次々とバラバラに分解していった。薬品は薄めても効果はあるが、原液の方が明らかに効果が高い。

両足も胴体から切り離され、胴体も二つに割られ、最後に頭らしき場所を切り落とされたところで――

ゴーレムは完全に、動かなくなった。

動かなくなったゴーレムの体を騎士が剣で突き、それでも動かないのを確認したところで、討伐完了を宣言する。

「完全に動きません……!」

「討伐成功だ!!」

「うおっっしゃぁぁ!!」

「やったぞ!」

討伐成功を皆で手放しで喜び、犠牲者が出なかったことに安堵した。しばらく皆で喜びを分かち合っていると、そこに第三王子フィルヴァルトがやってくる。

「皆……本当に申し訳なかった! 私の失態をカバーしてくれて感謝する。本当にありがとう」

ガバッと頭を下げて改めて謝ったフィルヴァルトに、皆が向ける視線は優しいものだった。

「そんなに謝らないでください」

「誰でも失敗はありますよ」

「それにこういう機能があるって分かって良かったです。これからは気をつけられますし、万が一の時も倒し方は分かりましたからね」

皆からの声掛けに、フィルヴァルトは何かを後悔したような決意したような、そんな表情でもう一度だけ頭を下げた。

そしてマルティナ、ハルカと今回の功労者たちに順に感謝を述べる。

「皆の活躍は、私が責任を持って陛下へと伝えよう」

「ありがとうございます」

そうして突然始まったゴーレムとの戦闘が終わり、マルティナたちは一度街へ戻ることになった。研究室には護衛として一部の騎士だけを残し、皆で引き上げるのだ。

研究室内部の調査は、ハーディ国王へと報告してからになる。

「マルティナ、色々あったけど、無事に終わって良かったね」

街に戻る道すがら、ハルカがマルティナに声をかけた。

「うん。とにかく安心したよ。このあとはまたハルカとしばらく会えないね」

「ちょっと寂しいよね……いや、かなりかも」

「私も」

顔を見合わせた二人は優しく笑い合い、何となく空を見上げる。どこまでも続くような青空は、明るい未来を示しているようだ。

「今回の発見で分かったことを精査して、瘴気溜まりの根本原因の解決と、帰還の魔法陣の完成を絶対にやり遂げるから、もう少し待っててね」

「ありがとう。でも無理しすぎないでね。わたしは結構浄化の旅でいろんなところに行けるのも楽しんでるから」

「楽しめてるなら、本当に良かった。……そうだ、暇があるなら日記とか付けるのはどう? 後世に聖女旅行記として残りそう!」

マルティナは絶対に自分が一番に読むんだと前のめりで提案し、そんなマルティナにハルカは苦笑しつつも案外乗り気だ。

「ちょっと書いてみるのもありかも。ソフィアンさんにも相談してみるよ」

「楽しみにしてるね!」

二人の会話はいつまでも尽きない。結局ハルカが浄化の旅に戻るまで、二人は何気ない会話を続け、穏やかな幸せを噛み締めていた。