軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

110、異形の消滅

ランバートの鼓舞に騎士たちは雄叫びをあげると、今まで溜まっていたストレスを解放するかのように、異形に向かって攻撃を放った。

遠距離の魔法を使える騎士が少ない班は、足元を狙って異形に近づき、逆に攻撃魔法が得意な班は上の方を狙う。

もちろんハルカは顔付近などの上狙いで、ランバート、フローランの二人と組んだ。

「僅かに時間差で魔法を撃ちたいです。お二人が急所の僅かに下を狙って打ってください。そうすれば、ほぼ確実に上へ逃げると思うんです。それを予想して、わたしが光線を放ちます」

「分かった。じゃあフローラン、タイミングを合わせるぞ。狙いは右肩にある急所。打つ場所を少しだけ左右に散らそう」

「分かりました。団長が合図を」

二人が顔を見合わせ、ランバートの合図で魔法を放った。それからほんの僅かに遅れて、ハルカが数本の光線を一斉に放つ。

それらの攻撃は異形の右肩に向かっていき、まずランバートとフローランの魔法がほぼ同時に着弾した。それは急所の下半分を貫くような緻密な攻撃で、急所である赤い何かは先ほどと同様に、スッ……と上に避けた。

しかし避けた瞬間、僅かに遅れてハルカの光線が異形を貫く。その光線は――

急所のど真ん中を貫いた。

「ギャオォォォォッッッ!!」

その瞬間に、異形が今までとは違う悲痛な叫び声をあげる。その声は思わず体が怯んでしまうような圧を有していたが、裏を返せばそんな声を上げざるを得ない事態が起きたということだ。

「やはりあの赤い部分が急所だ!」

ランバートの叫びに騎士たちが希望を抱いたところで、異形の形がドロリと少し崩れた。今までは比較的左右対称だったが、先ほど貫いた急所付近が窪み、右側だけ肩部分が抉られたような見た目になったのだ。

「もしかしたら、急所を潰すほどに異形が弱体化していくのかもしれませんね」

ハルカの言葉に、ランバートはここに来てやっと笑みを浮かべる。

「あいつを倒せる未来が見えてきたな」

「はい。次を狙いましょう」

それからはハルカたち以外の班も順調に急所を狙い、異形は時間が経つほどに弱体化していった。

もうこれは倒せる。こっちの完全勝利だ。誰もがそう思って、無意識のうちに気を抜いていると――突然、異形がなぜか認識できなくなった。

突然姿を消した異形に誰もが困惑していると、三つの班が比較的近くに固まっていた場所から突然の悲痛な叫びが響いた。

「うっ、後ろだ……!」

「ぐはっ」

突然の後方からの攻撃に、騎士たちは何人もが鋭い腕で体を貫かれ、大量の血を流しながらその場に倒れ込んだ。

「皆さんっっ!」

ランバートたちが止める間もなく、ハルカは怪我人の下に向かうと魔法で治癒をした。しかしあまりにも酷い怪我のため、命が繋がるだけ治癒を進めるには、少し時間が掛かる。

そんな治癒から手を離せないハルカに異形が鋭い腕を振り下ろし……

それをランバートが剣で弾いた。さらにフローランもハルカの護衛としてピタリと側につく。

「ハルカさんっ、無茶はしないでください!」

珍しいフローランの怒りにハルカは申し訳なさを募らせつつも、目の前に助けられる命があったら動かずにはいられないと、曖昧に頷いた。

そんなハルカに呆れたように、しかし決意のこもった瞳でフローランはレイピアを構える。

「ハルカさんは素早く治癒をお願いします」

「は、はいっ、もちろんです」

そんな話をしている間にも、ランバートは異形に翻弄されていた。体が小さくなり、巨大だった時よりは弱体化したはずなのに、さっきの見えない動きは何だったのか。

そんなことを考えていたランバートの目に、自分の足元で動く影を見つけた。それを見た瞬間に、一つの可能性が浮かび上がる。

「皆、この異形は闇魔法も使える! 今までは体が大きいため陽の光が邪魔で、使えなかったのだろうっ」

異形は小さくなったことで、森の木々よりも体高が低くなったのだ。先ほどの突然の移動は、闇魔法の隠密や影操作を駆使してのことであると推測できた。

「とりあえず命は助かるはずです! ただ血を流しすぎていて動けないみたいなので、安全な場所に運んでください!」

治癒が終わったハルカがそう叫ぶと、すぐに同じ班の無事だった騎士たちが動いた。そうして危機を脱したところで、ランバートの言葉を聞いていたハルカが動く。

「わたしが強い光を作り出して闇魔法を封じます!」

数人の騎士と共に異形と近接戦を繰り広げていたランバートの下に向かったハルカは、意図して光線ではなく光の奔流を異形に向けた。

闇魔法を使った突然の移動を塞いだハルカは、ランバートとフローランに叫ぶ。

「胴体の中心にある急所を!」

その言葉だけで二人は全てを把握したのだろう。チラッと視線を向け合うとタイミングを合わせ、ハルカと共にまた一つ急所を貫いた。

「あと三つです!」

「次は頭を狙うっ」

三人は怒涛の攻撃を仕掛けていく。異形に逃げる暇を与えず、時にはランバートが自身の体を使って異形の動きを止め、そうして――。

最後の急所を、ハルカの光線が貫いた。

その瞬間に異形は奇妙な高音を発し、ドロリと残った体は崩れた。さらに崩れた赤黒い物体は少しずつ煙となって空に昇り、次第に消えていく。

異形の完全消滅を確認したところで、その場には歓声が満ちた。