軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

109、好転する戦況

攻撃が効かないため、牽制程度の攻撃のみを繰り返し異形を引きつけることに専念していたハルカたちは、長引く戦闘に少しずつ怪我が増えていた。

しかし全力で総攻撃をしたとしても、それで効果がなければ一気にハルカたちが不利になる。かといってこのまま牽制を続けていても、終わりは見えない。ジリ貧で、いずれは負けることが明白だろう。

そんな状況にヤキモキしている中、異形発生場所にあった情報を王宮に報告していた騎士が、真剣な眼差しで戻ってきた。

「報告があります!」

その声にいち早く反応したのはランバートだ。異形への対処を一時的に他の騎士とハルカ、フローランに任せ、報告に来た騎士から情報を得る。

「何か分かったか?」

「はい。あの異形の正体と、倒せるかも知れない方法が」

「それは本当か!」

ランバートは顔を喜色に染めて騎士からの言葉を聞いたが――そのあんまりな内容に、少しの間言葉を失った。

しかし異形が振り下ろした細い手が地面を切り裂き、その周囲に木々や石などが吹き飛ばされたところで、異形は倒すべき脅威であると認識し直す。

「貴重な情報感謝する。すぐ皆にも伝えよう」

それからランバートにより素早く騎士全体に情報が共有され、ハルカも異形の正体を知った。

やはり誰もがその正体には衝撃を受けるが、異形の攻撃により何度も命の危機に陥っていた騎士たちは、すぐに気持ちを持ち直す。

騎士は基本的には魔物を相手にする仕事だが、悪人を相手にすることもあるので、慣れもあるのだろう。

「ハルカ、大丈夫か?」

唯一、対人の戦闘に慣れていないハルカにランバートが声をかけたが、ランバートの心配は杞憂に終わった。

「……はい、大丈夫です。この異形がどんな存在だったとしても、わたしたちの命を狙っていて、倒すべき相手ということは変わりませんから」

そう言いながら強い眼差しで異形を射抜いたハルカに、ランバートは僅かに瞳を見開く。

この世界に来たばかりのハルカであれば、違う反応だったのだろう。しかし浄化の旅を経て、ハルカは変わった。

より強い力を得たというだけでなく、この世界は日本よりも死というものが身近にあるのだと肌で感じたのだ。さらに自分に敵意を持つ存在の排除を躊躇っていては、自分の命が守られないということも。

「ありがとう。絶対に倒そう」

「はい」

ランバートの言葉にしっかりと頷いたハルカは、異形をじっと観察した。さっきまでも見ていたが、今回は新たな情報を得た上での観察だ。

すると赤黒い異形の体に、同色のため見えにくいが、手のひら大の赤い何かが点在しているのが分かった。

「もしかして……心臓のようなもの?」

ポツリと呟いたハルカに、ランバートが問いかける。

「何か分かったのか?」

「はい。あの細い右腕の付け根部分というのでしょうか。胴体と繋がっている部分に赤い何かがあるのが見えませんか? それから左手の先、頭の右上、胴体の真ん中より少し下、右足の真ん中右側も」

一つ目につくと、次々と同じものを発見することができた。ハルカが次々と言葉で示す場所をランバートも目を凝らしてみると――少しして声を上げた。

「本当だ。何かがあるな。あれがこいつの弱点か?」

「あり得ると思います」

そこまで話をしたところで、また異形の攻撃がまっすぐとハルカたちの下に飛んでくる。今度は風魔法だ。

周囲にある木々や土を巻き込むような回転型の強風が、ハルカたちの下に叩きつけられるように放たれる。

「風で散らして回避!」

ランバートの言葉に、すぐ風魔法を使える騎士が攻撃の威力を弱め、その間に他の皆は回避行動をとった。フローランも風魔法の使い手であるため、ハルカを守るために必死で魔法を使う。

しかし広範囲に無秩序に飛んでくる攻撃だ。

全員が避けられるわけもなく、数人が飛んできた木の枝に腕や足を貫かれたり大きめの石を体に受け、その場に倒れ込んでしまった。

「フローランさん!」

ハルカを守ったフローランも、鋭い木の枝が掠ったことで頬が大きく切り裂かれている。そんなフローランに気づき、ハルカはすぐに治癒を施した。

「ありがとうございます」

フローランが感謝を伝えて血を拭ったところで、ランバートが指示を出す。

「治癒を頼む!」

倒れこんで動けない騎士たちを救う懇願に、ハルカは返事よりも先に足が動いていた。

「もちろんです! 皆さんも!」

ハルカの言葉に光属性の騎士も素早く動き、重い怪我人はハルカが治し、比較的軽い怪我人を他の者が受け持つ。

「早く向こうにっ」

「ありがとう……!」

「本当に助かるっ」

そうして何とか怪我人の治癒を終えたところで、皆と合流しようと動き出したハルカたちに向かって、狙うように異形の長い手が振り下ろされた。

それをハルカが光の衝撃波で吹き飛ばし、皆を逃す。

何度も繰り返しているのと同じように窮地を脱し、ハルカは異形の右肩付近にある赤い何かを狙ってみた。

放たれた光線は寸分の違いなく、それを貫く――誰もがそう思ったところで、その赤いものはスッとハルカの攻撃を避けた。

異形が避けたのではない、その赤い何かだけが避けたのだ。体内をまるで泳ぐかのように、スーッと移動して。

「何だ今の!?」

「あの赤いやつ動くのか!?」

皆が衝撃が受ける中、ランバートは確信していた。

「皆、あの赤い部分が急所でほぼ間違いない! 班ごとに連携して急所を叩け!」

今まで異形はほとんど攻撃を避けなかったのだ。しかし赤い部分は避けた。その事実は、そこを攻撃されると異形にとって不都合であるということを示している。

「敵は無敵ではないぞ! 討伐可能だ!」

ランバートは騎士達を鼓舞するためか、断定するような口調でそう叫んだ。