軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

111、喜びと街への帰還

異形が倒されたことによって、森には静寂が満ちた。それを確認したマルティナ、ロラン、サシャの三人は、魔法陣が描かれている場所から、戦闘が行われていた方向に足を進める。

すると少しして喜びを露わにする騎士たちが見え、その中にハルカを見つけた。

「ハルカ!」

マルティナが大きく手を振ると、すぐに気づいたハルカも手を振り返す。マルティナがハルカの下に駆け寄り、二人は手を取り合った。

「やっぱり有益な情報をくれたのはマルティナだったんだね。ありがとう」

「役に立てた?」

「うん。そのおかげで倒せたようなものだよ」

そう言って微笑むハルカに、近くにいたランバートも同意を示す。

「正直追加の情報がなければ、今でも討伐は叶っていなかっただろう。本当に助かった」

他の騎士たちからも感謝を告げられ、マルティナは笑みを浮かべた。

「お役に立てて良かったです。それで異形は……消えたのでしょうか」

「ああ、最後は煙となって空に消えた」

その言葉を聞いてマルティナが空を見上げると、そこには澄んだ青空が広がっている。その広大な美しさに、心が洗われるような気分になった。

一度深呼吸をしてから、マルティナはランバートとハルカに視線を向ける。

「今回の異形の出現は、リネ教によるものでした。なぜこんな事態を起こしたのか、目的や今後への警戒などについては、話し合う必要がありそうです」

「リネ教か……分かった。頭に入れておこう」

ランバートが頷いた直後に、ハルカは不安げに口を開く。

「その宗教って、どういうものなのか分かる……?」

「簡単に言うと、リネ様というただ一人の神のみがこの世に存在していると考える宗教だよ。結構広く信仰されてるけど、人によって信仰の度合いが違う感じかな」

そこで言葉を切ったマルティナは、少しだけ悩んでからもう少しハルカに実情を説明することにした。

「ここからは私の推測だけど、今回はリネ教を熱心に信じる人たちが起こした事件かもしれない、と考えてる。というのも異形を産み出した魔法陣が、その場所に落ちていたリネ教の重要書物のようなものに、リネ様をご降臨させる儀式と書かれていたんだ」

「じゃあ、リネ教の人たちも騙されたってこと?」

「その可能性が高いと思う。誰がそんな酷いことをしたのかは、もうずっと過去のことだと思うから分からないけど」

その書物が作られた時代は、少なくとも魔法陣の高度な技術があったと考えると、一千年以上は過去になるのだ。

身内の嫌がらせだったかもしれないし、別の宗教によって作られたものかもしれない。誰かが悪ノリしたものが、運悪く後世に残ったのかもしれない。

真相はもう、闇の中だろう。

「そっか……でも何で、今この場所でリネ様をご降臨させようとしたんだろう」

ハルカの疑問に、マルティナは真剣な眼差しで答えた。

「これも推測だと思って聞いて欲しいんだけど……その理由はハルカの存在かもしれない。多分一人の神を信じる人たちにとって、神にもなり得るようなハルカは認められなかったんじゃないのかな」

その言葉にハルカは納得するよう頷くと、ハッと顔を上げて瞳を見開く。

「じゃあ、わたしの命を狙っていたのも、もしかしたらリネ教?」

「その可能性はあるかもしれないね。ただ……真相は分からないままかも」

今回は、魔法陣の発動に関わった全員が死亡していると推測されるのだ。その場合は誰にも目的を聞くことができないし、万が一ハルカの暗殺未遂が同じリネ教によるものだったとしたら、そちらの真相も永遠に闇の中となる。

「仕方ないね」

ハルカが少し笑みを浮かべながらそう告げたところで、ランバートがまた口を開いた。

「騎士団が真相解明のために尽力することは約束しよう」

「ありがとうございます。じゃあ……王宮に戻りましょうか。続きの話はまた今度ということで」

雰囲気を緩めたハルカに、マルティナの頬も緩む。

「そうしようか。色々あって疲れちゃった」

「わたしもだよ〜料理がしたい!」

「ははっ、じゃあ私は本が読みたい!」

「あっ、わたしも」

「一緒にご飯を食べて本を読もうか」

「賛成ー!」

二人がいつも通りの掛け合いを始めたところで、騎士たちの雰囲気も一気に緩んだ。それからは大きな問題も起きず、皆で王都に帰還した。

予想外だったのは、今回の戦いは王都のすぐ近くで行われていたため、特に東の森に近い地域では戦闘音や異形の雄叫びが断続的に聞こえていたことだ。

何度か地響きも感じ、街が潰されるんじゃないか。助からないんじゃないか。そんな恐怖に震えていたところに、ハルカが異形を倒したと街に戻ってきた。

街が大興奮に包まれたのは、必然であっただろう。ハルカや騎士たちがもみくちゃにされるほど街人たちの勢いが凄く、王宮に戻るまで一時間以上もかかったほどだ。

しかしやっと王宮に戻れたマルティナたちの中に、文句を言っている者は誰もいない。

「街に被害がなくて良かったね」

「本当だね。あんなに持ち上げられると恥ずかしいけど、嬉しいよ」

そう言って笑い合ったマルティナとハルカは穏やかな雰囲気で、二人を後ろから見守る皆も、達成感に満ちた笑みを浮かべていた。