軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第75話 本屋のお手伝い

再び冒険者ギルドに戻ってきたルクスたち。

「フリッツさん、依頼達成しました」

「ん、了解。ちょっと待っててね」

依頼書を持って奥の部屋に入ったフリッツは、革袋を持って戻ってきた。

「はい、エルナさんから預かってた報酬です」

ルクスは革袋を受け取った。

「あ、ありがとうございます。その、エルナさんのおばあさんからも報酬を別途いただいたのですが……」

「あー、金銭かな?」

「スキルスクロールです」

「……うん、まあ、あまり良いとは言えないけど、冒険者ギルドを通して既に依頼していただいているし……まあ、他の依頼でも、よくあるし、大丈夫。でも、言いふらさないでね」

「分かりました」

「今日は依頼を受けて行くの?」

「はい、ダンジョンの深層に潜るのは、大変なので……」

「そうだよね、今、何層まで潜ってるの?」

「七十層あたりですね。そろそろ皆、八十レベルになるので、次は八十層を目指すつもりです」

「凄いところまで潜ってるね、流石、 金剛級(アダマンタイトランク) パーティー……待って、八十レベルになるの?じゃあ、 幻金級(オリハルコンランク) になれるんじゃないかな!?凄い快挙だよ。もしかしたら、歴史に名を残すことになるかも……」

「歴史に名を残すとか、いくらなんでも、それはないんじゃないですか?」

ルクスは大したことしてませんし、と言いつつ笑った。

「いや、冒険者ギルドの最高ランクに達するだけで凄すぎるからね、全然、大したことしてるからね」

フリッツは冷静にツッコミを入れた。

「(そろそろ俺のレベルが百に到達するって知ったら、もっと驚かれそうだな……言わないでおこう)うーん、そうですかね」

「そうだよ!……とりあえず、皆が八十レベルになったら教えてね」

「はい、分かりました」

「じゃあ、依頼、頑張ってね」

「はい」

ルクスたちは掲示板の前にやってきた。

金剛級(アダマンタイトランク) になると、殆どの依頼を受けられるので、よりどりみどり、と言いたいところだが、他の冒険者たちによって依頼書は殆ど持ち去られていた。

残っている依頼は王都の住民からの依頼ばかりだった。

「偶には王都内の依頼をやってもいいよね?」

「うん、いいんじゃないかな」

バートがルクスの隣に立って、そう言った。

「俺も良いと思う」

アランも同意する。

「私も賛成」

「王都は広いですから、色んな方と交流できそうですし、楽しそうで良いと思います」

クラーラとラエティティアも了承した。

「じゃあ、王都の依頼を受けよう。一日で終わる依頼は無さそうだから、短期のものを受けようか」

依頼期間は最低一週間のものから一ヶ月という期間のものがある。

ルクスたちは最低一週間の依頼を受けることにした。

「最低一週間の依頼は規模が小さくて依頼をパーティーで受けられないみたいだね。限度人数は二人のものばかりだ」

「ですね……」

「最低一週間の依頼は三つあるから、挙手制で決めようか」

「さんせーい」

「僕も良いと思う」

「「私も」」

全員の許可を得て、ルクスは頷いた。

「じゃあ、この依頼を受けたいって思った人は挙手してね。『本屋の手伝い』が良い人~」

ルクスは依頼書を掲げた。そして、もう一方の手を挙げた。

ルクス以外に手を挙げているのは、ラエティティアだ。

「じゃあ、本屋の手伝いは俺とラエティティアで受注します。次は『パン屋の手伝い』が良い人~」

アランとクラーラが手を挙げた。

「じゃあ、バートは『荷物配送の手伝い』だね」

「うん。……こうなると思っていたよ」

哀愁漂うバートの表情を見て、ルクスは苦笑した。

「じゃあ、みんなで依頼を受けに行こうか」

ルクスたちは受付窓口で依頼を受注し、それぞれの依頼場所に向かうことにした。

本屋の依頼を受けたルクスとラエティティアは、商人街にある本屋に向かった。

表通りから裏路地に入って、突き当りを左に進んだところに本の看板が目印の本屋があった。

看板に書かれた店名は『黒猫の本屋』。

中に入ると、初老の男性が微笑みを浮かべて、二人を出迎えた。

「いらっしゃい」

「「こんにちは」」

ルクスが依頼書を持ってカウンターで小さな黒猫を撫でている男性に近づいた。

「あの、お手伝いに来ました」

そう言ったルクスは男性に依頼書を見せた。

「おお、可愛らしい冒険者さんに受けて貰えたんですね。良かったです。私はこの店の店主フーゴ・アッペルと申します。お二人のお名前をお聞かせいただけますかな?」

「ルクスです」

「ラエティティアです」

「素敵なお名前ですね、早速ですが、お願いを聞いていただけますか?」

「「勿論です」」

「では、こちらへ来てください」

「「はい」」

男性は奥の部屋に二人を連れてきた。そして、掃除用具を二人に渡した。

「どうにも、腰をやってしまいましてね、高い場所を掃除できないんです。店内に木の高い台がありますので、それに上って棚を拭いていただきたいのです」

「分かりました」

「お嬢さんはそのはたきで本棚の本の背表紙や平積みになっている本についた埃をはたいて欲しいです」

「分かりました」

「では、お願いします」

ルクスとラエティティアは、掃除用具を持って店内にやってきた。

まず、ルクスはバケツに水を入れるべく、生活魔法の【湧水】を使った。

いっぱいになると、雑巾を水に浸してきつく絞る。

そして、店内にある木の台に乗って、本棚の上を拭き始めた。

ラエティティアは反対側の本棚の背表紙をはたきで 叩(はた) きつつ、生活魔法の送風を巧みに操り、埃を外に流していく。

ルクスは本を湿らせないように、避けつつ、棚や壁、床を雑巾で磨き上げた。

ラエティティアもはたきと送風によって、本についた全ての埃を除去した。

本屋はいつもより断然、綺麗になった。

「アッペルさん、綺麗になりました~」

「もうですか?早いですね……少々お待ちを」

よっこいしょ、と奥の部屋の椅子から立ち上がったフーゴは、店内にやってきて目を瞠った。

「凄いですね、棚も壁も床もとても綺麗になりました……これでは一週間の依頼は今日で終わりになってしまいますね……」

「あの、アッペルさん、俺から提案があるんですが……」

「なんでしょう?」

「レイアウト変更とか、しても良いですか?」

ルクスは掃除中、前世の本屋のことを思い出し、この本屋を改善したいと思っていた。

「レイアウト、変更ですか……」

「はい、掃除をしてて気づいたのですが、ダブっている本が結構ありました。同じ本は一冊だけ店内に出すことで様々な種類の本をお客様に見て貰うことができると思います」

「なるほど……けれど人気の本は複数冊出しておきたい、と思うんですよね」

「でしたら、小さな棚を用意して、その上に平積みすると良いと思います。あと、扉の横に窓がありますから、折角なので、外からも見えるように、セッティングしたいですね」

「ふむ、良いですね……二人だけで、一週間で、できますか?」

ルクスはラエティティアに視線を向けた。ラエティティアは微笑みつつ、頷いた。

二人は、フーゴに顔を向け、言った。

「「勿論です」」

「それは、頼もしいね、じゃあ、レイアウト変更、よろしくお願いします」

「「はい!」」

ルクスたちはまず、一日目と二日目を使って、平積みの本と、ダブっている本を店の裏の部屋に積み、本を分類ごとに仕分けた。

歴史・宗教・自然・技術・芸術・魔法・文学などに分け、棚に分かりやすく分類の和紙を挟む。五つ棚が開いた。

現状、本屋の店内は、九つ棚があり、下記のようになっている。

______________奥の部屋

│▯ ▭▭ ■■ │

│▯ カウンター │

│▯ ▯▯ ▯│

│▯ ▯▯ ▯│

│▯ ▯▯ ▯│

│▯ ▯▯ ▭▭▯│

--- -------------------

入口 窓

▯=縦の本棚

▭ ▭=横の本棚

■■=カウンタースペース

三日目、四日目。

ルクスとラエティティアは、フーゴに断りを入れて、木属性魔法と風属性魔法で棚をDIYした。

窓の近くに本棚を加工して作った、窓枠に合う高さの低い棚を用意し、低い棚の上に本立てを用意して、おすすめの本を載せた。

低い棚の中には、おすすめの本に関連する本を入れておく。

一部の棚の下二段ほど空けて、本棚を加工して作った低い台を用意する。低い台の上にはおすすめの本を三冊ほど山積みにしておく。

店の中央は思い切って本棚を取り去り、平台を置き、入口近くに丸いミニテーブルを置く。平台には人気の本を置いて、ミニテーブルには任意の本を置く。

五日目、六日目で、ルクスたちは和紙でPOPを作った。

おすすめの本に対するコメントを短く、分かりやすく書いて客にアピールするのだ。

そうして、本屋は新しく生まれ変わった。

______________奥の部屋

│▯▢ ■■ │

│▯▢ カウンター│

│▯▢ ▤ ▢▯│

│▯▢ ▤ ▢▯│

│▯▢ 〇 │

│▯▢ □□□│

--- -------------------

入口 窓

▯=縦の本棚

▢=低い台

□□□=低い棚

▤=平台

■■=カウンタースペース

〇=ミニテーブル

「どうですか?アッペルさん」

「……本当に、素晴らしいです、ありがとう。心から感謝しています。ルクス君、ラエティティアちゃん」

「ふふ、頑張った甲斐がありましたわね、ルクス君」

「うん、お客様も入ってくれるようになったし、本当に良かった」

ルクスとラエティティアは店内を見た。まばらだが、客が入っている。店を横切ろうとして、窓から見える本に目を向ける人々もいた。

「ルクス君、依頼書を持っていますか?」

「はい」

フーゴは依頼書にサインをし、評価をつけた。

「二人とも、本当にありがとうございました。『黒猫の本屋』はいつでもお二人を歓迎します」

依頼書には評価段階SSSと記載されていた。

ルクスとラエティティアは顔を見合わせ、笑顔を浮かべた。

「「はい!また来ます!」」

二人は仲良く手を繋いで本屋を後にした。