作品タイトル不明
第131話 娯楽がないなら作ればいい
迷宮都市に戻ってきた黄金の導は、暇だった。
「ひまー、ひまひまひまー」
クラーラがアランに抱き着いた状態で暇を訴えた。
「ク、クラーラ……」
アランはいつものごとく顔を真っ赤にしている。その内、気絶してしまうかもしれない。
「……二週間も休みだと流石に暇だよ」
バートは何度も呼んだ本を読みつつ、ルクスに訴えた。
「折角だから、まとまった休みがあった方が良いかなって思ったんだけど、悪手だったかな……俺も凄い暇」
ルクスはソファにもたれかかったまま、上を見上げた。
(なんか良い暇つぶし……今更だけど、スマホがないのが辛い。ゲームとかできないし……ん?まてよ?ゲーム?)
ルクスはがばっと立ち上がった。
「そうだ!ゲームを作ろう!」
「「げーむ?」」
「ゲームは娯楽のことだよ」
アルヒ王国には娯楽が少ない。子供がする遊びといえば、勇者ごっこやかくれんぼ、ゴブリンごっこ(鬼ごっこのようなもの)くらい。
大人になると、酒を飲むか、歓楽街で遊んだり、賭け事に嵌ったりするようになる。
だが、面白い娯楽があれば、酒を飲んだり、歓楽街に行ったり、賭け事をする暇も無くなるかもしれない。
「娯楽って、どんな?」
「そうだねぇ、俺が作りたいのは、ボードゲームだよ」
ルクスは前世で囲碁や将棋を祖父に叩きこまれ、オセロも興じ、大人になってからは、チェスや数多のボードゲームを楽しんだ。
他にも色々な娯楽を楽しんできたルクスには、アイデアが山のようにある。
「ぼーどげーむ……ますます分からない……」
バートはぐぬぬ、と悔しそうだ。
「とりあえず作ってみるよ」
ルクスは庭に出て、土属性魔法で白玉石と那智黒石を出し、木属性魔法で 榧(かや) の木を出して、風属性魔法を操って形を作っていく。本来であれば白石はハマグリの 殻(から) から作られるのだが、ハマグリの殻をすぐには入手できないので、白玉石で代用する。
あっという間に碁盤と碁石と 碁笥(ごけ) (碁石入れ)ができた。
ただ、碁盤には何も線が書かれていない。
なので、ルクスはインクを取り出して、風属性魔法を使ってインクを操り、碁盤に線を書いていった。
生活魔法の乾燥でインクを乾かしたルクスは碁盤を持って三階の談話室に戻った。
「はい、皆、これがボードゲームの一つで、囲碁だよ」
「イゴ?」
「んと、字はこんな感じ」
ルクスは和紙にアルヒ文字で囲碁と書いた。
「なるほど、囲碁ね。僕、やってみたい」
「俺もやりたい」
バートとアランが立候補したので、ルクスは囲碁のルールを説明した。
「ふぅん、陣取り合戦みたいな感じだね」
「だな、負けないぞ、バート」
「僕に勝てるかな?アラン」
二人はじゃんけんをして、先手を決めた。
先手はバートになった。
黒石を手にしたバートは悩みつつ、碁盤に石を置いた。
後手のアランも白石を置いた。
ルクスとクラーラ、ラエティティアに見守られつつ、バートとアランの陣取りが激しくなっていく。
やがて、アランが追い詰められていく。
「……負けたな」
「そういうときは、お辞儀しながら『参りました』って言うんだよ」
「ああ、じゃあ、参りました」
アランはお辞儀しつつ、そう言った。
「やった!勝った!」
バートは片腕を掲げた。
「おめでと、バート」
ルクスは軽く拍手を送る。
「わー、悔しいな……」
アランは悔しいと言っているが、笑顔を浮かべていた。
「アラン、悔しいの?笑顔だけど」
「ああ、なんというか、悔しいんだけど、それ以上に楽しかったんだよな」
「それは良いことだ」
ルクスは微笑んだ。
「じゃあ、次は私とラエティティアちゃんで遊ぼう!」
「ええ?」
クラーラはラエティティアを引っ張って、囲碁の前に座らせた。
二人は楽しく囲碁に興じた。
彼女たちの対戦を眺めつつ、ルクスとアラン、バートは会話をしていた。
「ねえ、ルクス。次はどんなボードゲームを作るの?っていうか、この囲碁も次に作るボードゲームも早めに特許取った方が良いよ」
「確かに、これは真似したくなるクオリティだからな」
「囲碁ともう一つボードゲームを作ったら、今日中に特許を取りに行くよ」
この後、ルクスはチェスを作って、囲碁と一緒に商人ギルドの特許部に持っていった。
迷宮都市の特許部の部長から連絡を受けた王都の商人ギルド特許部のディーター・バルテルが「また凄いものを……」と言って驚き半分、呆れ半分な表情を浮かべたのは言うまでもない。