軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第129話 宝石山ダンジョン

翌朝、幼い狼──アウルムがルクスのマップに記した印を目的地とし、ルクスたち黄金の導は大鹿に乗って大陸の西端にある山脈にやってきた。

この山脈は魔境と呼ばれていて、高レベルの魔物が生息しているので、地元の人は滅多に近寄らない恐ろしい場所だ。

高レベルの魔物というのは、一般人にとっての高レベルで、平均レベルは精々五十くらいなので、ルクスたち黄金の導の敵ではない。

大鹿をアイテムボックスに入れたルクスは、黄金の導の面々と共に、魔境と呼ばれる山脈に登り始めた。

百レベルを越えているルクスたちにとっては、登山は散歩のようなもので、息切れすることなく、目的の洞窟までやってきた。

洞窟内をランタンの明かりで照らすと、きらきらしたものが見えた。

ルクスが近づいて鑑定すると、それはダイアモンドだった。

「この山は宝石山だったのか」

宝石山というのは、その名の通り、宝石が採れる山のことを指す。

「手付かずの山だから、たくさん採掘できそうだね……」

「うん……マップの詳細を見ると、全部の山脈で色々高価なものが採掘できそうだよ」

魔境と呼ばれ、人々に 嫌遠(けんえん) されてきた山脈が実は宝の山だということを知ってしまったルクスたち。

「この辺りも西のトリティクム公爵閣下の領地ですから、報告して差し上げた方が良いかもしれません」

ラエティティアは進み出て、ルクスに意見を述べた。

「うん、俺もそう思う。その前にダンジョン攻略だけどね」

ルクスがそう言って、ランタンで照らしたのは、ダンジョンへの入口となる階段だった。

宝石山のダンジョンの最下層ボスはレベル二百のダイアモンドゴーレムキングだった。

最下層に辿り着くまでに二百レベルを越えたルクスたちは、ダイアモンドゴーレムキングの体当たりや、土属性魔法を物ともせず、耐えた。

そして、ルクスのバフましましオリジナル複合(?)魔法、 電磁砲(レールガン) によって、ダイアモンドゴーレムキングは胸に大穴を空けて、倒れた。

電磁砲(レールガン) の使い方は簡単だ。

まず、土属性魔法で弾丸と二本のレールを作り(今回はダイアモンドの弾丸を用意した)、雷属性魔法でレールに雷を放つことで、弾丸を加速させ、高速の弾丸が放たれる仕組みになっている。

ルクスは今回、大きなレールと弾丸を用意し、かなり大きな雷を顕現させて、 電磁砲(レールガン) を放った。

それにより、ダイアモンドゴーレムキングの胸に大穴が空いたのだ。

しばらくして、ダイアモンドゴーレムキングはドロップアイテムを残し、光の粒となって消えた。

[【宝石山ダンジョン】を攻略しました。報酬として、【月雫のブローチ】贈ります]

ルクスは月雫のブローチを鑑定した。

【月雫のブローチ】

即死&呪い無効。

破壊不可。

サイズ調節・清浄の魔法が付与されている。

買取価格:不明

ルクスは宝石山ダンジョンの最下層ボスをもう一度攻略してみたが、報酬は月雫のブローチではなくエリクサーだった。

「やっぱりあの一回だけの報酬だったか……」

「ルカ君、きっと、他のダンジョンでも似たような報酬がありますわ」

「ティア……慰めてくれてありがとう。お礼に月雫のブローチをあげるよ」

「まあ、お付けにならないのですか?ルカ君」

「これを見た瞬間、ティアにピッタリだと思ったんだ。だから、受け取って欲しい」

「ありがとうございます、ルカ君」

ラエティティアは微笑みを浮かべて、ルクスから月雫のブローチを受け取った。

「ティアに良いことが起こりますように」

ルクスは月雫のブローチを持つラエティティアの手を自身の手で包んで、祈るように目を閉じた。

「おまじない、ですか?」

「うん、おまじないみたいな、俺の願いだよ」

「ルカ君……」

ラエティティアは感動し、目を潤ませた。

「さてと、トリティクム公爵に報告に行こうか」

ルクスは気恥ずかしく思ったのか、ラエティティアの手を放し、地上へ戻るべく、魔法陣に向かった。

「皆ー!行くよ!」

ルクスを追って、黄金の導の面々は魔法陣に向かった。

西部の中心地であるトリティクム公爵領の領都トリティクム。

その中心には公爵の居城であるトリティクム城がある。

領都トリティクムに着いたルクスは先触れの手紙を商人ギルドから領主城宛てに出して、宿に泊まることにした。先触れの手紙が届くのは早くて明日の朝だからだ。

この街で最も安心安全と言われる高級宿【猫の爪亭】に男女別々の高めの部屋を取ったルクスたちはそれぞれの部屋に入った。

ルクスとアラン、バートの部屋はスイートルームみたく広々とし、焦げ茶の家具とベージュと茶色を基調とした内装が落ち着いた雰囲気を醸し出している。

「俺たち三人きりになったのって、いつぶりだろう?」

アランはベッドに大の字になって、そう呟いた。

「三人きりじゃないけどね、アスターと従魔たちもいるよ」

そう言ってバートは、三人から離れた場所にある果物に群がっている従魔とアスターを指差した。

「あー、人族って意味で言ったんだよ」

「あはは、人族なら確かに俺たち三人しかいないね」

ルクスはそう言って、ベッドに腰掛けた。

「昔を思うと、なんだか、すごく遠くに来たような気がするよ」

ルクスは昔を懐かしむように遠い目をした。

「んー、まあ、そうだな」

アランは上体を起こして、頷いた。

「僕はルクスに振り回されたなぁ、って思った」

「それ!俺も思った」

バートとアランはお互いの肩を組んで、同情し合った。

「アラン?バート?」

ゴゴゴ、という音が二人には聞こえた。

ルクスはにっこり、と笑っている。

二人の背中に冷や汗が流れた。

「お仕置きだよ」

きらり、とルクスの目が光った。

ルクスは両手を伸ばして、バートを擽り始めた。

「あははは!く、擽ったあぁああ!ちょ、止めて!」

ルクスの擽り攻撃はアランにも降りかかる。

「ぎゃあああ!わははは!止め、止めてくれって!」

バートとアランはベッドの上でひーひー言っている。

「なんだか、昔に戻ったみたいだな……」

貧しかったけれど、三人で仲良く遊んだ日々をルクスは思い出した。

「まあ、今は昔とは違うけどね。僕たちはこれから、もっと幸せになれる。そんな希望のある今だって、僕は思ってるよ」

「バート……」

「俺は今でも十分幸せだけどな。美味しいもんいっぱい食べて、バートとルクスと皆と遊んだり、冒険したり、毎日楽しんでる。未来がもっと楽しければ、俺も嬉しい」

「アラン……」

「そうだね、アラン。僕も今幸せだよ。……未来に希望が持てるのも、今が幸せなのも、ルクスのお陰だよ。ありがとう、ルクス」

「っ、いや、俺は何も……」

「俺もそう思う。いつも、ありがとな、ルクス」

「……どう、いたしまして」

ルクスは涙腺が決壊し、涙が溢れた。

「今、俺も幸せだよ。アラン、バート。俺だけじゃ、幸せになれなかったんだ。二人もいるから、幸せなんだよ……ありがとな、二人とも」

「「ルクス……」」

じーーん、と二人は感動し、涙を浮かべた。

「はは……、泣くなよ」

ルクスは泣きながら、笑った。

「ルクスこそ、泣いてるじゃん」

「ぐすっ……僕は泣いてないからね」

アランとバートも涙を流しながら、笑っていた。

一方、女子たちの部屋では、何やら、クラーラとラエティティア、そしてシアーシャが三人でベッドの上におり、内緒話をしていた。

「実は、人それぞれの弓使いのレーアさんに、これを貰ったの」

クラーラがアイテムポーチから取り出したのは、金色の文字が書かれた赤い装丁の書物だった。

「えっと……『月下で愛の花が咲く』?これ、なんの本かな?」

シアーシャは本のタイトルを読んで首を傾げた。

「……恋愛系の本ですか?」

ラエティティアは推察して言葉を紡いだ。

「その通り!しかも、この本は大人の女性向けらしいんだよ~」

「「ええ!?」」

大人の女性?とラエティティアとシアーシャは顔を見合わせた。

「私、一人で読むのはちょっと不安だったから、皆で読もうと思ったの。一緒に読んでくれる?」

クラーラはそう言って、本をベッドの上に載せた。

「……うん」

シアーシャは覚悟を決めたように頷いた。

「私も気になりますので、是非、ご一緒させてください」

ラエティティアも真剣な表情を浮かべている。

「じゃあ、読むよ」

クラーラはそう言って、本の内容を音読し始めた。

読み進むにつれて、クラーラたちは興奮で甲高い叫び声を上げることになる。

いたたまれなさで、ベッドの上で転がったり、ベッドを叩いたりするようになり、恥ずかしさを感じながらも好奇心が抑えきれずに最後まで読んでしまった。

新しい扉を開いてしまったような、そんな気持ちを抱えて、クラーラたちは放心していた。

男子たちが昼ご飯の時間になって、女子の部屋をノックするまで、彼女たちは別世界にいるようだった。