作品タイトル不明
第122話 クラン『自由の翼』ラビュリントゥス支部
厳月(ゲブラー) (一月に相当)七日。自由の翼派遣組の出発だ。
とはいえ、自由の虹羽があれば、ひとっ飛びなのだが。
ちなみに、自由の虹羽は廃坑ダンジョンの下層でよく出てくるドロップアイテムなので、黄金の導は腐るほど持っている。
自由気ままや、風任せもまあまあ持っている。
人それぞれは五十層あたりでレベリングしているので、まだドロップしていないが。
自由の虹羽とは別に移動手段があった方が良いと思っていたルクスは、王都アルヒにあるワープ機能のあるオブジェクト──魔石が嵌められた猫の彫像を起動させることにした。
裏路地の目立たない場所にある猫の彫像を起動させたことで、猫の彫像が淡く光るようになってしまったが、今のところ見つかっていないらしい。心配になったルクスがグラジュスの影に探らせたが、そんな噂は立っていないので、大丈夫だろう。
この猫の彫像のワープ機能は、ゲームではプレイヤーのみのものだった。ゲームが現実になった今では、この世界の住民も使えるのではないか、とルクスは思っている。
まだ、猫の彫像に他のメンバーは触れてもいないので、実際のところは分からないが。
「ベネディクトゥス、エドヴィンさん、皆さん、しばらく留守を頼みます」
「「はい」」
「行ってきます!」
自由の虹羽で迷宮都市ラビュリントゥスにやってきた一行は、商人ギルドに向かった。
受付で事情を話したルクスは仲間と共に、会議室にやってきた。
しばらくして不動産部の部長がやってきて、支部の拠点について説明を始めた。
「今回のルクス様からご注文いただきました屋敷はルネサンス様式で建てさせていただきました。屋根は青御影石、柱や壁、内装や床は大理石で造らせていただきました。まず、一階部分からご説明します」
不動産部部長の話を省略すると下記のようになる。
建物全体:防犯魔法+防塵魔法+防水魔法+防虫魔法付与済。トイレは魔導トイレ。
庭:花園、馬車スペース、厩。
地下二階:保存魔法付与済。ワイナリー、食糧庫。
地下一階:訓練場。
一階:エントランスホール、大浴場(男女)、使用人部屋三十部屋。
二階:応接室三部屋、会議室五部屋、談話室三部屋、団長執務室、副団長執務室、食堂、調理場、食糧庫、使用人部屋二十部屋。
三階:客室三十部屋、談話室二部屋、団員用寝室三十部屋。
四階:団員用寝室二十部屋、談話室二部屋、幹部団員用寝室三十部屋。
「お値段高そうですが……」
「事前にいただいた大金貨十枚をお引きしまして、合計、大金貨五十二枚と金貨二枚です」
「ああ、それくらいなら……」
ルクスは安堵しつつ、大金貨五十二枚と金貨二枚をアイテムポーチから出した。
「ルクス様なら余裕で支払えるとアルノー殿から伺っていましたが、即金でお支払いいただけるとは……!本当に、有難いです」
不動産部部長は目にうっすら涙を浮かべている。
「えっと、分割もありってことですか?」
「ええ、ですが、滞納したり、踏み倒そうとしたりする者もおりまして、対応に苦慮することも多々ありましてな……」
様々なことを思い出した不動産部部長の表情が沈んでいく。
「あー、お疲れ様です……」
「お気遣いありがとうございます。では、鍵と書類をお渡ししますね」
不動産部部長は、机の上に載せていた鍵と書類をルクスに渡した。
「鍵は十個です。増やしたい場合は、商人ギルドにて手続きをお願いします。書類は不動産関連の大事な書類ですから、失くさないようにお願いしますね」
「はい」
「以上となりますが、質問はありますか?」
「いえ、大丈夫です」
「では、ルクス様の屋敷にご案内しますね」
不動産部の部長に案内されて、ルクスたちは新しい屋敷にやってきた。
「ここまでありがとうございました、部長さん」
「いえいえ、どういたしまして」
私はこれで失礼しますね、と言って不動産部の部長は商人ギルドに戻っていった。
「じゃあ、入ろうか、みんな」
「「おー」」
「「はい」」
左右対称──シンメトリーになっているルネサンス建築の屋敷はとても大きい。王都の本部よりも大きいかもしれない屋敷に入ったルクスたちは、一時間後に二階の談話室に集合することにして、それぞれで屋敷を見て回った。
一時間程経ったころ、ルクスは談話室にやってきた。
既にラエティティア、バート、風任せは集合していた。
人それぞれ、明日への架け橋、アラン、クラーラもぞろぞろと戻ってくる。
「はい、集まったねー。皆、座ってくれるかな?」
ルクスは全員に見えやすい位置に立つ。
「一週間後からダンジョン攻略を始めようと思いますが、その前に、明日への架け橋の皆さんに自己紹介をしてもらおうと思います。はい、リーダーのアドラーさんからどうぞ」
ルクスに話しを振られた茶髪に茶目の爽やかな青年──アドラーは慌てて立って自己紹介を始めた。
「えーっと、俺は『明日への架け橋』のリーダー務めてます剣士のアドラーです。出身はバッハ村です。よろしくお願いします」
アドラーの自己紹介が終わると、隣に座っている紺色の髪に茶目の可愛らしい女性が立ち上がる。
「『明日への架け橋』神官のイドナです。出身はバッハ村で、アドラーは幼馴染です。よろしくお願いします」
イドナは隣に座っている茶髪に茶目のおどおどした眼鏡娘をつついた。眼鏡娘が立ち上がった。
「わ、私は『明日への架け橋』の魔法使いで、名前はカトリーナ・バンクです。ラビュリントゥス出身です。よろしくお願いします」
カトリーナの隣の深緑の髪に茶目の少年が立ち上がった。
「俺は『明日への架け橋』の斥候、エイク。ラビュリントゥスの孤児院出身。よろしく」
ぶっきらぼうに言って座った、エイクは腕を組んで目を閉じた。
エイクの隣にいた刈り上げた茶髪の髪と茶目を持つ筋骨隆々の男が立ち上がる。
「俺は『明日への架け橋』の騎士、ジェルモです。ラビュリントゥスの孤児院出身です。エイクとは幼馴染ですが、俺の方が三歳年上になります」
三歳……!?と、その場にいた明日への架け橋以外のメンバーがどよめいていた。ジェルモが老け顔すぎて十歳くらいは離れているように見えるからだ。
ルクスは咳払いをして立ち上がった。皆に注目してもらうためだ。
「はい、『明日への架け橋』の自己紹介は以上です。これから一週間で必要なものを揃えるので、一覧にしていこうと思います」
そう言いつつ、ルクスは和紙と鉛筆、パンの欠片を配る。
消しゴムは材料になるゴムの木が見つかっていないので、まだ作ることができない。
一応、ルクスは商人ギルドに依頼して、ゴムの木を探してもらってはいるが。
「この和紙に自由に記載していってください」
団員たちは各々必要だと思うものを記載していった。
ルクスも記載した。
「はい、そろそろ書き終わりましたね?じゃあ、提出してください」
団員は書き終えた和紙をルクスに提出していった。
「ふむふむ、必要なものは、まず使用人。それから日用品、食糧、お菓子、酒、タバコ……あ、ちなみに、この建物内は禁煙なので、タバコはバルコニーか庭で吸ってくださいね」
一部のタバコを吸う大人は面倒だな、と内心思いつつ、頷いた。
「使用人は明日、商人ギルドに依頼を出して募集してもらいます。日用品や食糧は今日、買い出しに行きましょう。男女で分かれて行動することにします。いいですね?」
「「はい」」
「では、男性は俺とフランツを先頭にして行動します。女性はラエティティアとアガーテを先頭にしてください」
フランツは風任せのリーダー、アガーテは人それぞれのリーダーだ。
団員はぞろぞろと男女に分かれて、まとまった。
ルクスは女性陣を先導するラエティティアとアガーテにそれぞれ大金貨十枚を渡した。買い出し用のお金として。
「それじゃあ、しゅっぱーつ」
「「おー」」
男性陣と女性陣は商人街までは一緒に行動していたが、商人街に入るとそれぞれ別方向に向かった。
「フランツ、どこに行こうとしてるの?」
「へ?あ、その、酒の匂いがして、そっちに行こうと……」
「……まあ、お酒は大人には必要だもんね」
ルクスは仕方なく、フランツについて行く。主に風任せのメンバーは酒と聞いて 俄然(がぜん) やる気だ。他の団員はちょっと呆れたように彼らを見ていたが。
酒屋らしき建物の前にやってくると風任せのメンバーが我先にと、中に入っていった。
建物の中には大きな樽が幾つも置いてあった。
「これ、全部お酒なんだ、すごい……」
と呟きつつ、ルクスは中に入った。
酒樽を興味深く見ていたルクスはまだ未成年だが、成人しているように見られていたので、不審がられることはなかった。
成人しているように見えるというのは何故かといえば、身長が高いためだ。
最近、ルクスは急成長して、身長が百六十二に到達した。もうすぐ十四歳なので、身長も伸びてきたのだ。
ちなみに、成人は十五歳。十五歳で身長が百六十くらいの男性は結構いるので、ルクスが成人しているように見えてもおかしくはない。
風任せのメンバーは全員酒を飲むので、全員、樽で酒を購入していた。自費で。
エール、葡萄酒、蜂蜜酒、林檎酒など樽で購入した風任せはご機嫌だ。
自費で購入していたので、文句も言えないルクスは一言忠告した。
「飲み過ぎると健康に悪いからね!」
その後、ルクスたちは食糧などを購入してクラン自由の翼のラビュリントゥス支部に戻った。
女性の買い物は長かったようで、ルクスたちが戻ってきてから、三時間後にやっと戻ってきた。