作品タイトル不明
フォロワー20万人突破
豪勢なゲストルームへ戻ってから、配信アプリでアカウントを確認すると、フォロワーが20万人を突破していた。
「すごい勢いだ……」
つい、独り言がこぼれる。
ちなみにコラボ依頼等のDMは、1通も来ていない。
協会とネオファンが協力し、影山へのDMは一部制限がかかっているのだ。
しかし今、勢いに乗る壁破壊二キとのコラボを望む冒険者は多く、そういった発信が見受けられた。
『壁破壊二キとコラボしたい~。でも、事務所からコラボはNGという発表が出ている……悲しい~><』
『壁破壊二キ、絶対バズるよな~。しかもイケメンという。俺らのグループ入らないかな』
『同じ事務所の後輩なのに、壁破壊二キにもうフォロワー数抜かれた……怖い……悲しい……』
エゴサをすると、自分に関する情報が多く出てきて、驚かされる。
そして掲示板に辿り着くと、胃が痛くなった。
会社での集合写真が晒されている。
チー牛と呼ばれ、馴染めていなかった影山は、集団より少し離れていた。
そして書き込みには、あの時の女の子と思われる内容がある。
さらには……騒動が大きくなったことにより、様々な憶測が生まれていた。
その火は、ネオ・ファンタジアへも飛んでいる。
428 名前:名無しさん
この写真、ネオファンの社員が犯人ならしいぞ
429 名前:名無しさん
そんなわけないだろ
430 名前:名無しさん
>>428
嘘乙。そんな妄想してないで働け
431 名前:名無しさん
でも実際、ネオファンってこういう騒動多くね?
トラブル多いしさ
タレントの管理が本当にできないよな
432 名前:名無しさん
>>431
タレントってなんだよw
探索者だろ
433 名前:名無しさん
まあ、やつらの管理体制がガバガバなのは事実
434 名前:名無しさん
契約で揉めて、辞める奴も多いしな
所詮は、ダンジョンだけで成り上がった3流企業
壁破壊二キが潰れるのも、時間の問題だな
(怖いな……なんだか、俺がみんなに迷惑をかけているような気分になる……)
しかし一方で、視聴者と思われる人達がネオファンへ通報してくれたり、力になってくれている。
次の放送で、お礼を言った方がいいだろうと考えた。
だが……。
「なんだか、疲れたな」
正直なところ、配信をする気分になれなかった。
一連の犯人がまだわかっていない中、表へ立つのは怖い。
掲示板では、不法侵入と住所を晒した犯人像を、面白半分で推理している書き込みもあった。
(しばらく休もうかな……)
朝日に相談しようと、影山は電話をかけた。
☆
「は~。今日もがんばった~」
仕事を終え、帰宅した朝日はベッドの上で横になる。
枕元には、50センチほどの壁破壊二キぬいぐるみが置かれていた。
影山には内緒で、こっそり1つだけ制作してもらった宝物だ。
「二キさん、ただいま~。えへへ……」
ぎゅううう、と抱きしめる。
柔らかい布越しに、胸がじんわり温かくなった。
「だいしゅき~~~♥ ちゅっ、ちゅ~~~~~~♥」
壁破壊二キぬいぐるみの顔へ向けて、何度もキスをする。
ちなみに、夜寝る時もこのぬいぐるみとは一緒だ。
と、そんな時であった。
携帯電話が机の上で鳴り、朝日はベッドから降りた。
「ほわぁっ!? 二キさんからだ……!」
まさかの影山からの電話に胸が高鳴る。
(も、もしかして、“お前の声が聞きたかった”とか言われちゃったりして~~~~~! きゃあああああ、ありがとうございます!!!)
1人で勝手に盛り上がりながら、携帯を操作して電話をとる。
「朝日ですっ」
「急にごめんね、電話かけて」
「大丈夫だよ!」
「活動について、話したいことがあって――」
――配信を、少しの間だけ休みたい。
その言葉に、朝日は胸がきゅっと締めつけられた。
でも、すぐにうなずく。
「わかった! ゆっくり休んでね」
「ありがとう」
「ゲストルームはどう?」
「豪華すぎて落ち着かないかも」
「あはは、そうなんだ。それじゃあまたね、影山さん」
「うん。またね」
電話を切る。
はぁ、と朝日はため息をついた。
またベッドの上へ寝転がり、壁破壊二キのぬいぐるみを抱きしめる。
(本当はもっと慰めたりとか……お、お部屋、行きたいけど。でも、さすがにそんなのは 図々(ずうずう) しいもんね……)
現にネオ・ファンタジアからは、どの階のゲストルームを彼に案内したかは、教えられていない。
それに勝手に部屋へ訪れたら、リア凸した奴らとやっていることが変わらない。
「う~。でも、色々と気になるよ~!」
ベッドの上で、朝日はゴロゴロと転がりながら、悶えた。