軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

元上司の末路

「お前さぁ、俺の上司になったんだろ? こんなこともわからねぇのかよ。いつまで経っても成長しねぇなぁ」

「す、すいません」

「けっ。俺の席に座れたからって、調子に乗るなよ」

影山の元上司は会社で、荒れに荒れていた。

降格処分となった彼の席には、若い有能な人材が座ったのだ。

そのことが彼をさらに苛立たせた。

まだ新しい仕事というだけあり、粗がある。

元上司はスキあらば、年下の新上司を詰めた。

「~~~♪」

社内で口笛を吹きながら、退勤をして駐車場へ。

家へ帰ると、酒を飲んで掲示板で壁破壊二キとネオ・ファンタジアの悪口を書きまくった。

プロバイダが勝手に開示請求に応じたのは、腹が立った。

訴訟してきたのはやはり、ネオ・ファンタジアならしい。

「はっ! 個人の住宅を晒したところで、せいぜい数十万の慰謝料だろ? その程度でビビる俺じゃないからな!」

元上司は訴えられることも恐れず、ネットでせっせと悪口を書いていく。

ちなみに。会社の集合写真を投稿した犯人は、もちろんこの元上司だ。

ネオ・ファンタジアの動きは早かった。

住所特定事件から、たった5日。

元上司は朝、会社の上層部へ呼び出されることとなった。

会議室へと向かいながら、へっ、と元上司は笑う。

(俺は上とケンカするの好きだからよ。どうってことはない)

飲みの席で“上とケンカをした時の話”は元上司鉄板の武勇伝ネタであった。

そうすることで、仕事が出来る自分というのを強調するのだ。

会議室の扉を開けると、四角いテーブルに据えられた窓際の席へ座る、3人の男がいた。

元上司は廊下側の椅子へ座った。

「なぜ呼び出されたか、わかっているね」

この事業所のトップ、所長が言う。

「なにか悪いことでもしました?」

元上司の言葉に、所長は怒りで顔が赤くなったが、こらえた。

震える声で喋り、震える手で書類を元上司へ差し出す。

「君のとった軽率な行動により、弊社がネオ・ファンタジアから訴えられている。不正競争防止法違反だ」

「不正競争防止法違反……?」

「元社員の影山 光くんの住所を晒しただろ? 弊社が保管していた個人情報を持ち出し、君は今回の事件を起こした。よって、これは弊社の個人情報漏洩として扱われているんだよ」

「っ!?」

「そして彼は有名人で、ネオ・ファンタジアと契約を交わしている立場だ。インターネットでは、この件が炎上にまで発展している。探索者壁破壊二キ、そしてネオ・ファンタジアへの被害も大きい。よってこれらは、営業侵害として扱われている」

「そ、それは……ま、待ってください」

話が想定よりも大きくなっているのを感じ、さすがの元上司も危機感を覚えた。

「おや。ようやく、顔が青くなったな。まさか、たかがプライバシーの侵害で終わるから、金で解決するだろう……なんて、考えていたのか?」

「ちち、ちがうっ」

「今回の件は、個人情報保護委員会からの報告徴収や、是正のための措置命令、場合によっては企業名の公表が行われる。弊社も慰謝料などの責任をとる形だ。そして弊社は就業規則に基づき、悪質な情報漏洩と営業侵害ということで、君を訴訟する。損害賠償の請求、そして刑事罰だ」

「なっ!? こ、この程度のことでか! あのチー牛にそんな価値があるわけないだろう! なにが営業侵害だ! どうせ名誉なんて汚れてないだろ! むしろ今回のことで、話題になっていいじゃねぇか! ファンの女どもも喜んで部屋行って、股開くだろうよ!」

男達が不快げに眉をひそめるが、所長はなんとか怒鳴りつけるのを我慢し、淡々と真実を告げた。

「10年以下の拘禁刑または2000万円以下の罰金。場合によってはその両方だ。覚悟をしたまえ」

「ふざけるな! 俺も弁護士を雇って、戦ってやる! こんなものは不当だ! 無罪を勝ち取ってやる!」

「無罪……全く、君は。あー、好きにしたまえ。誰も君を、弁護などしないよ」

元上司は怒り、会議室を出た。

そしてその後の彼は、地獄へと転落していく。

バチバチの就業規則違反をしているのに、無罪を主張する弁護など通るはずもない。

重い賠償金と刑事罰が元上司へと降りかかり。

抗う手段がなくなった彼は法廷で号泣し、影山への謝罪を何度も口にしたという。

だが、誰からも許されるはずがなかった。

ネオ・ファンタジアも彼の会社も、徹底して元上司を裁いたのであった。