軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

VSトレント

トレントの動きは予想より早かった。

重量感のある見た目とは裏腹に、影山よりも早い動きで間合いを詰め、右腕を振るう。

後ろへ 跳躍(ちょうやく) して回避すると、ブオンッ! と空気を 裂(さ) く音がした。

その衝撃だけで、強力な打撃であることがわかる。

「っ、近づけない……!」

回避するたびに、長い腕が素早く振られて距離を詰められない。

影山は動きながら、ウォールブレイカーを構え引き金を引いた。

剣先から金色の弾丸が発射。

勢いよく飛び出た弾丸が、トレントの幹へ当たる。

しかし表面に傷をつける程度。

トレントはダメージとして認識すらせず、勢いそのままに猛攻を続けた。

影山が回避するだけの、防戦一方となる。

(なんとか、反撃しないと!)

続く拮抗状態。

だが、先に動きを見せたのはトレントであった。

後ろへ大きくジャンプして下がり、右腕を伸ばす。

そこから茶色の魔法陣が浮かび上がり――大きな岩が、弾丸のごとく飛び出した。

「魔力探知! 地魔法が来るよ!」

朝日の早い警告。

だが、影山は前へと駆け出した。

『え?』

『避けないと!』

『あああ、やばい!』

魔法陣から出る重々しい岩全長3メートル。

ゴツゴツとしていて、とても重々しい。

影山は透視スキルを起動――青く光った瞳には、岩の“点”と“線”が見えていた。

「ふっ!」

“線”へ向けて剣を横払いに一閃。

瞬間――岩は風船が破裂するかのような音と共に、弾けて消えていった。

『はあああ!?』

『魔法を打ち消した???』

『そんなことも出来るのかよ!?』

『エグすぎて震えたわ』

『ていうかミスったら終わりだろ、度胸ありすぎ!』

影山は止まらず、前へと一気に駆け出た。

(ここで決める!)

トレントの懐へ接近することに成功。

目の下――人間なら、鼻に該当する部分へ向けて一閃。

しかし。その刃は、ギリギリのところで回避された。

トレントが間一髪のタイミングで、後ろへ下がったのだ。

「っ!?」

トレントはカウンターで、右腕のストレートを放つ。

その強力なパンチが、影山の前身を叩く。

「がはっ……!」

まるでトラックに跳ねられたかのような衝撃。

脳が揺れ、肺から酸素が吐き出された。

ふっ飛ばされ、平原の上を衝撃でゴロゴロと転がる。

「うっ、ぐぅっ……!」

「二キさん……!」

『やばいやばい』

『終わったか』

『一撃が重い……!』

『逃げて、二キ様!』

(まだだ……!)

地面で立ち上がりきれていない影山へ向けて、トレントが右腕をふり下ろす。

しかし影山は転がるようにして、左へ飛び込む。

ギリギリのところで、重々しい右腕を回避。

ズドンッ!!! と、地面が衝撃で揺れた。

(透視スキルはクールタイム……考えはある。時間を稼げれば……!)

影山はひたすら走り、トレントから逃げ惑う。

ダメージは大きく、フラつきながらギリギリで回避し続ける映像は、もはやトレントによる一方的な狩り。

『ああああああ』

『見てられない』

『ヤバいよ』

『死んだ』

「っ、救難信号、出すから!」

「大丈夫。勝てるから」

「に、二キさん!?」

「見ていてくれ。みんなも、信じてくれ」

『二キ……』

『負けるな!』

『泣いた』

『そうまでして恩返ししたいのか……』

『なんか二キ、同じようなところグルグル回るようにしてる?』

『俺もそれは気になってた』

『なにが狙いなんだ……?』

息切れも起こす。

長く感じる15秒であった。

しかし――にやりと笑う。

(狙ったところに来てくれた)

トレントが右腕をふり下ろす。

跳ねた土が体にかかりながらも、ギリギリで回避。

そして再び透視スキルを発動させた。

先ほど一瞬だけ、視界に映ったのだ。

地面に光る――青白い“線”と“点”が。

「そこだっ!」

トレントのちょうど真下に光る、地面へ金色の弾を放つ。

当たった瞬間――ビキビキビキビキっ!!! と、地面がひび割れ、崩れ去った。

『透視スキルで地面を破壊した!?』

『いやいやいやいや!?』

『そうか! 壁だけじゃなくて、床にも“線”があったのか!』

『いやでも、二キも落下に巻き込まれるのでは!?』

コメントの予感は当たる。

トレントと影山の距離は近かった。

「あきらめ、ない!」

崩れるのはわかっていたので、ステータス補正全開の、全力ジャンプ。

しかし――崩壊の面積は、思ったよりも大きかった。

ウォールブレイカーをアイテムボックスへ収納し、地面を空いた両手でがっしり掴むも、その部分すらも崩れて落ちていく。

「あ……」

あちらほど重量がないものの、成人男性。

重力により、影山も勢いよく底へ落ちていく。

『二キが!』

『ダメだ、落ちる!』

瞬間。朝日が叫んだ。

「ネオ・ファンの、私の技術をなめないでください! S級魔石、起動! オーバーエネルギーを使います!」

ドローンが青く光る。

戦闘機のような凄まじいスピードで滑空し、落ちる影山へ近づく。

そしてドローンのフレームから、バンッ! という音と共にロープが勢いよく発射された。

「二キさん! つかまって!」

「こんな機能が……! ありがとう!」

両手を伸ばす。

垂れたロープに影山が捕まった。

しかし魔石を使った強力な浮力とはいえ、ドローン。

人を乗せることは想定していない、撮影用の無人航空機だ。

落下の衝撃と、成人男性の重量を殺しきれず――影山と共に重力で底へ引っ張られる。

「お願い! 上がって! 絶対、絶対に上がって!」

朝日が必死に叫びながら、ドローンを操作。

落下の勢いは強力な浮力によって、徐々に殺されていく。

「っ!?」

影山はつい、地面を見た。

いや……そこは、地面ではなかった。

恐ろしいことに、床の底は紫色の毒沼となっているのだ。

グツグツとマグマのように煮えたぎるその猛毒へ、勢いよく落ちたらひとたまりもないだろう。

だが、現実は残酷であった。

ぐんぐんと、毒沼へと近づいてく。

「っ、あああああああああ!」

影山は足を上げ、腕を畳んで少しでも距離を稼ごうとする。

そして――ピタリ、と落下が止まった。

影山の背中。

そのすぐ下で、毒沼がゴポゴポ音を立てていた。

ギリギリセーフ。

ドローンは影山を、ゆっくりと持ち上げ上昇していった。

『あぶねえええええ!?』

『というか、なんだこの機能!?』

『成人男性持ち上げれるなんて、どんな技術だよ!』

『あんな小型なのに!?』

「っ、でも、時間制限はあります! 二キさんを早く上へ……!」

床の崩壊は、面積60メートルを超えるほどの大きさであった。

高さは約20メートル。

トレントは底まで落下している。

その体は毒に溶かされ、魔石となっていった。

『――影山 光のLVが9へ上昇しました。HP+14 MP+7 攻撃+7 防御+8 魔力+7 精神+8 俊敏+11』

影山 光 LV8→9

HP 73→87

MP 28→35

攻撃 18→25

防御 24→32

魔力 19→26

精神 22→30

俊敏 63→74

システム音が告げるレベルアップが、戦いの終わりを祝福するように、脳内へ鳴り響いたのであった。