作品タイトル不明
最強ブラザーズ、礼も言わず逃げる
事故を起こした最強ブラザーズの配信は荒れていた。
「くそっ! お前がミスったせいだろ!」
「うるせぇ! 俺は悪くない! 俺は悪くない!」
「死にたくねぇ! 誰か助けろよ! 俺だけでも!」
『これ他の冒険者巻き込んだらヤバいぞ』
『モンスタートレインとか戦犯……』
『どうしようもないやつらだな』
『情けないし迷惑』
『おい、壁破壊二キが助けてくれるから感謝しろよ』
『え? なんか鳩飛んできた』
そして、男の1人が仲間を突き飛ばした。
「ぐわっ!? て、てめぇ! ミスした上にそれかよ!」
「うるせぇ! 俺は生き残る!」
「もうやだぁ、おかあさ~~~~ん!」
瞬間。
ボンボンボン! という爆発音と共に、白く濃い煙が辺りへ一気に沸き上がった。
「っ!? な、なんだ?」
「トレントの攻撃か?」
「み、見えねぇ!」
(思った以上に煙の範囲が広いな……)
影山は白煙の中へ駆け込む。
4体のブルーベアは突如舞い上がる 白煙(はくえん) に、 当惑(とうわく) したように立ち止まる。
辺りは真っ白で、なにも見えない。
少し撃ち過ぎだとおもいつつ、透視スキルを起動した。
(よし。実験通り……青白い線は見える)
これで敵の位置が大体わかる。
「グルっ!?」
無防備なブルーベアの胸に、突如金色の刃が突き刺さる。
ざしゅっ! ざしゅっ! と影山は手際よく移動し、どんどんブルーベアの“線”を斬っていく。
最強ブラザーズ達は恐怖した。
「ひえええええっ!」
「なんかよくわからんが、ブルーベアの悲鳴が聞こえる! 誰か倒してくれてるのかも!」
「マジか! じゃあそいつに任せて、走れ、走れ~~~~~~~!」
ダダダダダダ、と最強ブラザーズの3人は走り、逃げていく。
やがて時間の経過と共に、白煙が晴れていく。
距離をすぐにとったようで、白煙とは離れたところに、トレントは立っていた。
灰色の木肌。しかし岩のようにゴツゴツとした体。太い幹は手足を形成し、中央には濃く黒い点で目と口が表現されている。
『うおおおおお、もうブルーベア全滅させてる!?』
『早すぎる!』
『でも白煙でなにも見えなかったな……』
『配信向きじゃないから、今後はひかえよう』
『お前、どの目線で言っているの? 二キの安全が第一に決まっているだろ』
『最強ブラザーズは逃げたか』
『クズすぎる』
『犯罪者どもめ』
『まあ映像捉えているし、協会へ通報しよう』
「二キさん、トレントは土魔法に気を付けてね。無理しないで、少しでもダメだと思ったら逃げてね!」
「うん。了解」
『レベル8でDランクボスをソロか……』
『新人、男見せてみろ』
『いやいや、本当無理しないでくれ』
『二キ様~~~><』
『心配すぎるよ~、やだ~!』
『正直、無謀なんだが』
『透視ありでもキツいんじゃ』
『人助けはいいが、勝算のない戦い挑むなよ。こういうバカがいるから、迷惑系が増える』
『二キはなにも悪いことしてないだろ』
『でも実際、危険』
『そもそもソロが危ない』
『考えなしじゃん、この新人。見ててイライラする』
『推しへの恩返しとか、綺麗ごと言ってバズり目的なんだろ?』
『冒険のスタイルはそれぞれ自由でいいのでは?』
『配信なんだから、バズり狙うのはいいだろ』
『お前、その考え迷惑系と変わんないぞ? はい論破』
コメント欄の勢いがすごいことになる。
影山は音声でなんとなく、雰囲気を感じた。
荒れている。
無謀な戦いに、報われない人命救助。
これで影山が死んだら、本当に意味のない戦いになる。
それでも……彼は、ガンブレードを構える。
推しが作ってくれた、ウォールブレイカーを強く握る。
(朝日ちゃんのおかげで、俺はここにいる。チー牛って呼ばれるだけの日々は、終わった)
トレントはジリジリと、身構えてこちらの様子を見る。
影山は素早く、マガジンを“ベーシック”へ切り替えた。
「無理とか、無謀とか。そういうの、もっと言ってください」
『え?』
『どうしたの』
影山は少しだけ笑った。
「無理って言われれば、言われるほど――この戦い、バズるからです! だから、視聴者のみなさん、朝日ちゃん! 見ていてください。俺を、壁破壊二キを!」
影山が前へ飛び出す。
トレントも応じるように、巨体を揺らして突進した。