作品タイトル不明
救難信号
翌日。またミスをしないよう、朝日は設定を確認しながら配信の準備をした。
「あー、あー。えー、マイク……マイク……設定大丈夫……あと3分くらいしたら、配信開始するね」
「うん」
「配信は慣れてきた?」
「まあ、人が多くなったなぁって。朝日ちゃんも大丈夫?」
「うん! 毎日楽しいよ!」
「それはよかった。名前とか、決めた方がいいかな?」
「名前?」
「視聴者の名前」
「あー! あるよね、そういうチャンネル~」
「考えた方がいい?」
「あった方がいいかもね~。でも、うーん……透視スキル……壁破壊……パっとは思いつかないかな~」
『もう始まっているよ』
『事故www』
『準備画面ですらないでっせ』
『オペレーターさん?』
『2人きりで喋れるのズルい』
「はっ!? す、すいません、二キさん、もう配信始まってました!」
「了解。じゃあ、今日も進んでいきます」
(放送事故起こす推しが今日も可愛い……ありがとうございます……)
移動を開始し、スローベアを倒しながら森の奥へより進んだ。
2時間ほどかけて15体倒すと、ギャグみたいなスローベアから別の熊へと変わる。
「二キさん、10時方向にブルーベア1体です」
「わかった」
朝日のサポートを受けつつ、移動した。
そして体長3メートルの青い毛並みをした熊、ブルーベアと対峙する。
スローベアよりも筋肉がたくましく、ちょうど森の中をうろうろとしていたところだった。
『ブルーベアが出没するエリアまで来たか』
『あんまり奥行くと、エリアボス出るから気をつけてね』
影山はウォールブレイカーを手に、前へ駆ける。
「グオオオオオオっ!!!」
ブルーベアは大きな声で吠え、右腕を振るう。
鋭い爪が煌めく。
その鋭い一振りを後ろへ飛びつつ、透視スキルを起動。
(スローベアと大差ないな)
頭部を撃ち、スタン状態にする。
そしてガラ空きになった胸の青白い線を、一閃した。
ブルーベアが魔石となって、消えていく。
「二キさん、お疲れ様。ブルーベアも大丈夫だね!」
「うん。そうだな」
『ソロでポンポンベアシリーズを倒す新人か……』
『エグいな』
『こんなスムーズなソロ縛り初めて見た』
『動き早い』
『ガンブレードなのに斬り方がきれい』
「……俺以外にも、ソロっています?」
『二キ、ダンジョン配信マジで知らん感じか』
『ソロ縛りはわりと定番よ』
『でもソロオンリーとか、ソロメインってのは少数派かな』
『危ないからね』
「そうですか……」
やはり探索者は、パーティーが基本のようだ。
といって、今はコラボだのなんだのは、やる気がないが。
雑談を挟みつつ、さらにブルーベアを安定して狩っていく。
2体に襲われた時もあったが、それでも結果は変わらなかった。
さらにシステム音が、透視スキルのレベルアップを告げる。
『――透視スキルのLVが3へ上昇しました』
透視 LV2→3
あらゆる現象・物体の欠点を分析し、可視化する。
また、発動中は背後の視覚情報を得ることができる。
クールタイム”20→15”秒。効果時間は“2→3”秒。
『後ろも見えるようになるんだ』
『地味だが死角無くなるのは良いな』
『前から気になってたんだけど、“現象”の欠点ってなんだろ』
「えっと。実は、魔力の弾とかにも“点”が見えたりしてます」
『そうなの?』
「はい。だから、魔法とかも透視スキルで欠点を見抜いて、斬れたりするんだと思います」
『すっげ』
『まさか防御力も最強クラスのスキルか……?』
『でも正直、二キだから使いこなせている感ある』
『たしかに。普通、動いている敵に“線”とか“点”なんて当てられんよ』
『最初の頃は苦戦してたね』
『たしかに。懐かしい』
『はいはい、古参アピール乙』
試しに透視スキルを発動すると、たしかに背後が見えるようになっていた。
ただし、スキル発動のビジュアルは変わらず、目が青く光るエフェクトだ。
背後に目が生えたりはしない。
「っ! 二キさん、大変!」
朝日の声には、緊張感があった。
同時に、ドローンから甲高い警報音が鳴り響く。
コメント欄も一瞬でざわついた。
『救難信号!?』
『事故ったか』
「発信源は、ここから約1キロ以内……! それに……ものすごい勢いで、移動している!」