作品タイトル不明
狙撃訓練。レアモンスターを狙う。
『ファンサして』
『二キ、ファンサお願い』
「嫌です」
13000人からスタートした今日の配信は、昨日のウインクをやたらとイジられた。
影山がちょっと嫌そうな顔をすると、女性陣と思われるコメント達が謝り出す。
『ごめんね』
『迷惑?』
『でも、可愛かったから』
「いえ、べつに……ただもう、ウインクはしないです」
『え~』
『寂しい~』
『女さん、全くこりてなくて草』
『でもお前ら、マジでイジりすぎるとウザイだけだからな』
『ぶっちゃけ面白くないしな。寒い』
『寒いって、お前のがスベってるで』
『ウインクだけで盛り上がる男』
『ファンサコメント、定期的に沸きそうでウザいなぁ』
(コメントの治安も、目まぐるしく変わるな……)
荒れているというほどではないが、ファンサ関連はしばらくプチ荒れになりそうだ。
(といって無視するのも……うーん)
難しいやり取りをしつつ、ダンジョンの端へ辿り着く。
外を思わせるダンジョンだが、やはり室内。
しっかりと土のような茶色の“壁”があった。
よく見ると空と思われる天井も、青い魔力と白い魔力が漂って、空に見えるだけだ。
そして今、影山はめんどくさいクールタイムに縛られながら、壁を透視した。
『どう?』
「中々見つからないですね」
『そっかぁ』
『ここはあんまりないのかな』
『てか、ここは広いしな』
中々ぱっとした進展がないまま、地味な絵面が続く。
と、ここで朝日が声を上げた。
「二キさん。2時方向上空、ブラックバードが飛んでる」
「ブラックバード?」
首を傾げる。
そして2時方向へ目を向けると、小さな黒い鳥が空を飛んでいた。
400メートルは先だろうか。
かなり距離がある。
『本当だ』
『よく見つけたね』
『ブラックバードはレアモンスターだよ』
『首傾げている二キくんも可愛い♥』
『まあ、正確に言えば数は結構いるんだけどね』
「へえ……ん? じゃあ、なんでレアモンスターなんですか」
『討伐されたことがないから』
「は? え?」
『基本冒険者に近寄らないで、空を飛び回る』
『その上、魔力のバリア張って遠距離攻撃が効かない』
(じゃあ、俺でも無理なのでは?)
と思いつつ、スナイパーマガジンに切り替える。
シュイイイイン、と魔力のスコープが現れ、覗き込んだ。
立った状態のまま、狙撃を狙う。
『うわ、かっこいい』
『魔力でスコープ形成って……どんな技術だ』
「えへへー、それほどでも」
『あさひさん、ご満悦である』
『ずるい』
『二キ様は渡さない』
『二キ様はみんなのもの』
(狙撃するんだから、全体的に静かにしてほしいな……)
配信は賑やかだなと思いつつ、スコープの中央にブラックバードをとらえる。
ブラックバードはちょうど、高い木の上にとまっていた。
黒い翼。黒い嘴。
ほとんどカラスのような見た目をしている。
透視スキルを起動させると――【頭部】大ダメージ付与&バリア貫通、という表記が現れる。
(透視が通用する! いけるぞ!)
引き金を引き、ぱしゅ、と消音された射撃音が小さく鳴る。
どすん、と後ろへ下がる銃の反動を両腕で感じた。
真っ直ぐとんだ金色の魔力の弾丸は……ブラックバードの、拳1つ分ぐらい頭上を通過。
びっくりしたブラックバードは飛び、遠くへ逃げてしまった。
「……外しました」
『ドンマイ』
『エイム良くなってきたけど、さすがに狙撃はムズイか』
『外すたびにファンサね』
「嫌です」
『だからしつこいって』
『二キ嫌がっているだろ』
「……次、当てることが最大のファンサだと思うので。今回はブラックバードを狙います」
『え、マジ?』
『透視でバリア破れるのかな』
「バリア貫通の表記はありました」
『な、なんだってー』
『なんでもありかよ』
『ブラックバード討伐の瞬間を見れるのか……?』
『だとするなら、歴史的瞬間だぞ』
『切り抜き確定やな』
「よし。じゃあ、さっそく探しますよ。朝日ちゃん、お願いね」
「うん! 任せて!」
(今日も明るくて最高に推せる可愛いお返事ありがとうございます)
影山はブラックバード討伐へ向け、移動を開始した。