作品タイトル不明
朝起きたら、5億円が振り込まれていた
朝6時にきっちり起きて、軽く朝食をとった後、ランニングとガンブレードの素振りをした。
素振りは人目につかない、公園の林の中でひっそりとやる。
ここ最近の習慣だ。毎日欠かさず、黙々と続けている。
この地道な体力作りと努力が、短期間での戦闘能力上昇へ繋がっているのだ。
そして8時にアパートへ戻り、携帯を確認。
協会のアプリを立ち上げると、昨日の査定結果が送られていた。
『――影山 光様。昨日お預かりした金属は、未発見にして最上級アイテム“SSSランク”という結果になりました。名称は“オリハルコン”。落札額は5億円です。査定書を添付いたします』
「……???」
目をゴシゴシとこする。
「え? は?」
何度見直しても“5億”の文字である。
指先が震え、スマホを落としそうになる。
社畜時代の自分なら、絶対に縁のない金額だ。
「そ、そんなこと……ある?」
実感が湧かない。
とりあえず、色々と思考をめぐらせてみた。
カリホルニウム(※ダンジョンとは関係なく、人類の技術で製造できる金属。多大なコストがかかるため、高い)という金属が1グラム20億を超えるらしいので、ダンジョンで収穫できる金属が億レベルでもおかしくない……という理屈を、影山は無理やり考えた。
現にダンジョンで獲れる魔石や金属は、エネルギー元になったり、機械や装備の素材になったと、用途は 多岐(たき) にわたる。
質の良い金属ならば、トンデモ値段になってもおかしくはない。
(そういえば、コメントで“クリスタルかも”って言ってたよな。クリスタルはいくらなんだ?)
試しに検索エンジンでかけてみる。
AIが回答してくれた。
『――クリスタルは、高ランクダンジョンで獲れるAランク金属です。主に探索者の装備品の素材として扱われます。レートは1アイテム30万円です』
ダンジョンのアイテムは重さではなく、アイテムボックスでの収納数で数えているようだ。
そして“オリハルコン”の納品数は10アイテム。
つまり、1アイテムにつき5000万円だ。
「な、なんで……」
おかしい。
明らかに、おかしい。
しかも影山はまだ駆け出しで、発見場所も隠し通路とはいえEランクダンジョン。
試しに、SSSランクアイテムのレートを調べた。
すると……オリハルコンと似た感じで、1000万だの、1億だのと、目を疑うような数字が現れる。
どうやら、トップレベルの最強レアアイテムを発見してしまったようだ。
この“透視スキル”が見つけた隠し通路によって。
「ご、5億……ど、どうしよう……税金とか、どうなるんだ?」
扱ったことのない金額に、影山は戸惑うばかりであった。
そして……ネオ・ファンタジアからDMが送られていることにも気づいた。
『――この度“オリハルコン”を落札したネオ・ファンタジアです。もしよろしければ、またお時間のほどを、いただけないでしょうか?』
「シャドウスパイダーの糸も、この会社が買ったのだろうか……」
だとするなら、熱烈なオファーである。
5億円という数字にはビビる。
責任も感じてしまう。
また話だけは聞いてもいいかな、と思ってしまう。
それに……社畜時代と違って、こんなにも必要とされるのは始めてだ。
警戒はしないといけないので、浮かれている場合ではないが……嬉しいという気持ちは、どうしても湧いてきた。
(……そうだ。とりあえず、話だけ聞こう)
影山はそう考えて、今日の朝にネオ・ファンタジアの営業担当取締役、橘 遠矢へメッセージを送ったのであった。
☆
待ち合わせの場所は、今日から挑もうと思っていたDランクダンジョンの協会支部であった。
自動ドアを潜り、エントランスへ。
待ち合わせ用に設置されたソファに腰かけていると、橘が礼儀正しい所作で声をかけてきた。
「お待たせしました。本日は我々のために、お時間をいただきありがとうございます」
「ああ、いえ……っ!?!?!?」
影山は思わず、意識を失うんじゃないかと思うほどの衝撃に襲われた。
なにせ、橘の隣には――あさひチャンネルの、あさひちゃんがいたからだ。
桃色のセミショート。150後半の身長。可愛らしい童顔、それなのにグラビアアイドルのごとく、グラマラスなスタイル。
そんな彼女が、少しぎこちない感じで、スーツに身を包んでいる。
「こちらはネオ・ファンタジアと共同開発をしてくださっている、探索者専用装備技術アドバイザーの、朝日 ほとりと言います」
「朝日 ほとりです。よろしくお願いします」
にっこりと、天使のように愛らしい笑顔であいさつされる。
キラキラキラ~~~~~、と影山視点では、推しがとっても輝いて見えた。
(生きていてくれて……ありがとうございます!)
そう思い、今度こそ――意識が、飛んだ。