軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ハサミを持つ”あれ”をゲットする!

取りあえず、おじいちゃんと 黒風(こくふう) 君には、持ってきたドライフルーツを食べて貰いつつ、岸で休憩して貰う事にする。

その間、わたしは雷魚君とワニ君を獲る事になった。

前回同様、右足から出した白いモクモクで川に 迫(せ) り出る形にする。

そして、その上に乗る。

ん?

荷車を外しておいたケルちゃんが、付いてきたそうな顔をする。

ただ、ケルちゃんなら大丈夫だと思うけど、川に落ちて流されたらかなり面倒くさそうなので、身振り手振りで来ないように指示を出した。

三首揃って不満そうにしたけど、言う事を聞いてくれた。

どれどれ。

ここは、前回の場所より下流にある。

なので、ひょっとすると雷魚君は余りいない可能性はある。

代わりに、別の、美味しい魚がいる可能性もある。

どうしようかな?

前回はそれこそ、白いモクモクの上で待っているだけで、勝手に雷魚君が飛びついてきた。

だけど、今回もそれに期待するのは、流石に都合が良すぎるかな?

これだけの大きな川だと、岩に石を当てて振動で魚の意識を失わせるって方法も難しいだろうし……。

白いモクモクを網状にして捕まえようかな?

悪くないかも。

そんなことを考えていると、足下の川から、何やら近づいてくる気配を感じた。

川上側から巨大な何かが、わたしの体を掴もうと襲いかかってきて――白いモクモクに阻まれる。

んんん~?

ゴツゴツした灰色のハサミ―― 蟹(かに) さん、なのかな?

川から伸びているハサミ部分しか見えないけど、それがわたしの全長より大きい。

左手から出した白いモクモクを水中に差し込み、ハサミを捕らえている右手と同時に体を持ち上げた。

おお!

やっぱり蟹さんだったけど、なかなかのサイズだ!

体長三メートル級の弱クマさんよりも一回りぐらいは大きい。

もっとも、力は弱いみたいで、ハサミや足を必死に動かしている様だけど、白いモクモクからは逃れられないでいる。

蟹さんかぁ~

前世を含めて食べた事無いけど、美味しいのかな?

いや、それより、蟹さんってどうやって締めればいいのかな?

そんな風にもたもたしていると、後ろでケルちゃんが「がう!」と吠えた。

とたん、足を振り回しながら必死に逃げようとしていた蟹さんから、力が抜ける。

あ、レフちゃんの能力か。

「ありがとう!」ってレフちゃんに手を振ると、自慢げに「がう!」と吠えている。

可愛い!

確か、レフちゃんの能力だと、絶命とまでは行かなかったはず。

なので、左手で蟹さんをしっかり持ち直し、右手から出したモクモクを 錐(きり) 状にすると、お腹の部分を突き刺し、トドメとした。

そして、蟹さんをケルちゃんの横に置く。

ん?

遠くに気配を感じ、視線を上げると――何かが光った気がした。

あれ?

気配が消えた?

気のせいで無ければ、川の向こう岸に何かがいたはずなんだけど……。

何も見つからなかった。

おかしいなぁ。

すると、今度は水面から何かが飛び上がってきた。

おっと!

右手から出した白いモクモク盾で防ぐと、変形させて掴む。

お待ちかねの雷魚君だった。

どうやら、この場所でも問題なく捕れそうだ。

ケルちゃんに乗って、我が家に到着!

結界石を蹴飛ばさないように慎重に、荷車を中に入れていると、麦わら帽子を被り、龍のジン君を体に巻き付かせたイメルダちゃんが「それ、蟹なの? また大きいのを獲ってきたわね」と目を丸くしつつ近寄ってきた。

側には、近衛兵士妖精の白雪ちゃんが飛んでいる。

「蟹って美味しいかな?」とわたしが訊ねると「種類によって違うかもしれないけど、わたくしが食べた蟹は美味しかったわ」とイメルダちゃんは答えてくれた。

そして、「それで、小石は拾ってきた?」と訊ねてくる。

「うん、拾ってきたよ。

物作り妖精のおじいちゃんに見て貰ったけど、一応、確認して」

と言いつつ、小石が入った袋を荷車から下ろし、紐で縛った口を開ける。

「ああ、良さそう――こら! ケルちゃん!

もう!」

中を覗いていたイメルダちゃんに、ケルちゃんが自分たちに構えというように頬ずりをしている。

姉的妹ちゃんは困った顔をしながらも「はいはい! 小石を取りに行ってくれてありがとうね!」と三首順に撫でて上げている。

その間、龍のジン君は怯えながら、イメルダちゃんの腰辺りに巻き付いていた。

「ただいま!」

と言いつつ、イメルダちゃん達と家の中に入る。

あの後、蟹さんやそれ以降に獲れたものも含む雷魚君三匹と鰐君一匹を近衛兵士妖精の皆に運んで貰い、わたしはため池に小石を敷き詰めた。

物作り妖精のおじいちゃんの指示通りにしたって事もあるけど、なかなか良い感じに出来たと思う。

「お帰り!」

とシャーロットちゃんが笑顔で駆け寄ってきて、わたしに抱きついてくれる。

可愛い!

「何も無かった?」

「うん、何も無かった!」

などと話していると、台所からシルク婦人さんが出てきた。

そして、「見た」と端的に言う。

「え?

あ、蟹さんの事?」

と訊ねると、こくりと頷いた。

いや、だから、もう少し言葉を増やして欲しい。

わたしの願い空しく、シルク婦人さんは「 大岩川魔蟹(おおいわかわまがに) 」と端的に言った。

「え?

そんな名前なの?」

それに対して、シルク婦人さんは再度、こくりと頷いた。

「あの蟹さん、冷凍にしておこうと思うんだけど」

と言うと「巨大鍋」と返ってきた。

あ、あの大きな蟹を茹でる鍋が欲しいって事かな?

「少しずつ分けて茹でれば良いんじゃない?」

と言うと、シルク婦人さんは首を横に大きく振った。

え?

何でそんなに勢いよく?

驚いていると、シルク婦人さんは少し 苛立(いらだ) たしげに言う。

「全部一度に、でないと不味くなる」

「え?

そうなの?」

「その後、凍らす」

よく分からない手順だったけど、まあ、シルク婦人さんがそう言うなら間違いないんだろう。

「白いモクモクで鍋にするので良い?」と訊ねると、シルク婦人さんはコクリと頷いた。

そして、「準備」と外に促す。

えぇ~!

今すぐ!?

――

夕食時、蟹さんの処理でシルク婦人さんに振り回されたと愚痴ると、ヴェロニカお母さんが笑いながら「そりゃあ、 大岩川魔蟹(おおいわかわまがに) なんて、めったに手に入らない高級食材だもの、仕方がないわよ」と教えてくれた。

なんでも、大物貴族でも年に一度、手に入るかどうかの食材らしい。

まあ、実際美味しいから、その気持ちは分かるけどね。

あの後、シルク婦人さんに既にカチコチに凍らせていた蟹さんを解凍させられ、茹でさせられ、今晩の分を分けた後、更に凍らせるように指示された。

そして、分けた身を、今食べている。

食べ方としては、まずは茹でた身をそのまま頂く。

塩を入れて茹でただけなのに、美味しすぎてびっくりしちゃった。

あと、シルク婦人さんがパイ生地で作った、キッシュって言うんだっけ? そんな感じのものを作ってくれた。

これも、蟹の旨みが凄い出てて、最高に良い!