作品タイトル不明
横取り!?
この世界にも、研究者なんているのか――なんて思うのは失礼かな?
なんて思いつつ、アーロンさんの続きを聞く。
「奴らはどうやら集団で行動する性質らしい。
狩りをする時は、昨日も言ったが別々に動いているらしいが……。
寝所は大体纏まっているだろうとのことだ。
わしらはそこを狙うことにする」
ライアンさんが小首を捻る。
「そこを狙うのは良いけど、だったら夜に行かないといけないんじゃないのか?」
アーロンさんは苦笑しながら答える。
「奴らは夜行性だ。
基本、日中は動かず、夜に行動する。
無論、例外はいるがな、多くの場合、寝所としている場所に固まっているだろうとの事だ」
わたしが「それにしても、朝や昼に結構、動き回ってた様だけど?」と突っ込むと、アーロンさんは困った顔をしながら「わしもその研究している奴にそう言ったんだが、”それは例外だ”としか言わなくてな。最後には”わしの研究についてケチを付けるのかぁぁぁ!”と怒り始めてしまってな。
取りあえず、そういうことにして動こうと思う」
赤鷲のライアンさんが苦い顔で「それ、大丈夫なのかよ」と言うと「取りあえず、様子を見に行くしかあるまい」と苦い顔をしていた。
アナさんが「ひょっとしたら、ここに逃げてきたばかりだから、ここ数日は例外なのかも」と言うと、皆、「なるほど」と頷いている。
うん、わたしも納得できる。
そんな話をしていると、組合の職員さんが操る馬車が門から出てきた。
町から馬車で一時間ほど西の街道を進み、降りて二時間ほど林の中を徒歩で進んだ辺りに小さな沼地がある。
そこに、巨大赤ムカデ君はいるだろうという話だった。
そこにたどり着いたわたし達の感想を代弁するように、アーロンさんが言う。
「……なるほど、昨日の奴らは例外、か」
沼地の上には所狭しと巨大赤ムカデ君達が並んでいた。
その数、五百は下らない。
沼地を一望できる丘で、Web小説定番の手の枠で数えるあれを使ったから、少なくとも、見えている分であればそこまで外れていないと思う。
……沼地と言うより、真っ赤なレンガで覆われた、しゃれた広場みたいになってる!
あまりの光景に、アナさんなんて「ひひゃ!」とか美人さんには似つかわしくない声を漏らしている。
マークさんが微かに震えた声で言う。
「これは、俺たちだけじゃとても無理だ!
人を集めよう」
わたしはそれに待ったをかける。
「でも、下手に刺激をして、向かってきたら、組合中の冒険者を集めても全滅しちゃわない?」
「し、しかし!」
マークさんをライアンさんが止める。
「待てマーク、サリーの言う通りだ。
少なくとも、あれだけの数、千人は集めなくてはならない」
「いや!
冒険者だけで無く、それこそ、騎士団を――」
さらに続けるマークさんをわたしは制止する。
「頼れない者は頼らないんでしょう?
それに、これだけ集まっているのであれば、むしろ、好都合じゃない」
アーロンさんが探るような顔でこちらを見る。
「何か手があるのか?
……派手なのも、お前が目立つ手も駄目だぞ?」
「大丈夫、大丈夫!
動けなくすれば良いんでしょう?」
動き回る白大ネズミ君ならともかく、動かないムカデ君などちょろいちょろい!
わたしには白いモクモク縛りがあるのだから!
左手を前に出すと白いモクモクを伸ばし、進ませる。
まあ、気づかれる事は無いだろうけど、念のために、地面を這うように進ませる。
一番近場の巨大赤ムカデ君の元まで行くと、今度は薄く広げる。
薄~く、薄~く、全ての巨大赤ムカデ君をカバーするように広げる。
アーロンさんが「何をしてるんだ?」と聞いてきたけど、今は集中しないと行けないので、無視だ。
アナさんが「あ、ひょっとして白大猿の時に使った?」と言ってくれたので頷いておく。
マークさんが「あれだけの数、押さえ込めるのか?」と心配そうにしているけど、問題ない。
やろうと思えば押さえ込めるし、巨大赤ムカデ君の場合、押さえ込む必要も無い。
目で見える限りの巨大赤ムカデ君を、白いモクモク縛りのエリアに入れた所で、魔力を強く流す。
氷結魔法だ。
氷結と言っても、昨日の火蜥蜴のフレドリクさんが使っていた魔術を見る限り、単純に動きを停止させるのであれば一瞬でカチコチ――とまではする必要は無い。
辺りを冷凍庫ぐらいの寒さにすれば良いはず。
良し!
ここからでも、巨大赤ムカデ君達の甲殻に霜が浮かんでるのが見える。
「今、動けないから、トドメを刺してきて!」
とアーロンさん達に、右手から出したモコモコ刀を押しつける。
マークさん辺りは「だ、大丈夫なのか?」とか言っていたが、アーロンさんやライアンさんは受け取ると、躊躇無く、駆け下りていく。
それを見て、「ま、待ってくれ!」とマークさんも慌てて追いかける。
「わ、わたしも、もしもの為に、付いて行くわ」
とアナさんが杖を持って続こうとするのを、わたしは肩を掴んで押さえた。
狙ってたのかな?
見上げると、上空から真っ青な羽の 魔鳥(まちょう) が何十羽も飛来するのが見えた。
先ほど、巨大赤ムカデ君(変異種)に群がっていた彼らだ。
動けない巨大赤ムカデ君の上に乗り、鋭いくちばしで突っつき、次々とトドメを刺していく。
手慣れてる感じがするから、巨大赤ムカデ君は彼らの主食なのかもしれない。
うわぁ~
アーロンさん達も、突然現れた魔鳥に追い払われている。
とんでもない、魔鳥だ。
う~ん……。
これ、獲物を横取りされた形なんだけど……。
とはいえ、毒だらけの巨大赤ムカデ君にトドメを刺して、食べて貰えるなら、正直助かるのかな?
それに、捕まえていないものも捕らえて、食べてくれるのなら助かるし……。
いや、そもそも、彼らから逃げる為に、巨大赤ムカデ君達はここまで来たのかな?
どう対処すれば良いのか、なんとも悩ましい!
なんて考えていると、苦笑しながら戻ってきたアーロンさんが言う。
「あの魔鳥は、青羽根虫食い魔鳥だ。
魔虫ばかりを集団で狙う魔鳥で、人は襲わん」
そして、ため息を吐きながら一言「帰るぞ」と宣言する。
それに、誰も否とは言わなかった。
――
町に戻ってから、わたし達は解散となった。
恐らく、青羽魔鳥さんらによって殲滅させられただろうとは思うけど、しばらくの間は警戒するとのことだった。
わたしが「巨大赤ムカデ君達って、青羽魔鳥さんに追われてきたのかな?」と訊ねると、アーロンさんは難しい顔をしてた。
「どうだろうな……。
正直、青羽根虫食い魔鳥に襲われたからといって、住処から遠いこんな地まで逃げてくることには違和感がある。
青羽根虫食い魔鳥は大きくて、集団で襲いかかる恐るべき奴だが……。
巨大赤ムカデにとっては今更な相手ではある」
まあ、青羽根虫食い魔鳥も巨大赤ムカデの事を普段から食べ慣れてそうだったもんね。
アーロンさんは続ける。
「さらに巨大な、お前が言う変異種(?)の事もある。
わしとしてはやはり、竜やそれに類する存在が現れたと考えるのが自然だと思う」
やっぱりそうなるのね。