軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

トカゲ一匹で贅沢な!

幅は五メートルはあるかな?

見た目は巨大赤ムカデ君だけど、このサイズはなんなの!?

ひょっとしたら、変異種なのかもしれない。

そんな、巨大赤ムカデ君(変異種)は凄まじい速度で、サーベルタイガー君を追い回している。

あの 強(したた) かな彼らが、散り散りになりながら、必死に逃げ惑っていた。

いや、散り散りなのは 纏(まと) まっているより、種を残しやすいと判断してのことかもしれない。

そんなことを考えていると、巨大赤ムカデ君(変異種)は何やらこちらをロックオンしたようで、馬鹿みたいに多い足をフル活用しながら、こちらに向かってくる。

その圧力に白狼君が「きゃん!?」「きゃんきゃん!?」と情けない声を上げた。

それでも逃げないのは、偽 忠狼(ちゅうおおかみ) ながらの 矜持(きょうじ) なのか?

それとも、 居竦(いすく) んでいるだけか?

などと考えながら、右手に出した白いモクモクを日本刀の形に変える。

近衛兵士妖精の白雪ちゃんが胸元から”手伝おうか?”というジェスチャーをしてくれるけど「大丈夫だよ」と答える。

そして、完成したモクモク刀を逆手に持ち替えると「えい」と赤ムカデ君に投げた。

口の中に モクモク刀(それ) が刺さった巨大赤ムカデ君(変異種)は、痙攣するかのように震えながら紫色の液体をまき散らす。

そして、土煙を上げながら地面に伏した。

うむ、完勝だ!

胸元から、近衛兵士妖精の白雪ちゃんが笑顔で拍手をしてくれる。

気分が良い!

”モクモク投げ刀”、昨日帰りに思いつき、練習した技だ。

ケルちゃんやアーロンさんの愛馬クワイエットに乗っている時に、攻撃手段が少ないと感じていたので、色々考えていた。

そこで、投げる武器が作れないかと考えて出来たのがこれだ。

最初、普通に作ったモクモク刀を投げていたんだけど、思うように、まっすぐ飛ばなかった。

色々、調整していた結果、刃の重心を調整して、投げ槍の要領で投げれば、まっすぐ飛ぶ事が出来るようになった。

……完成してから、そもそも投げ槍の形にすれば早かったかと思い当たったけど、上手くいったから良しとしている。

まあ、ママ達や黒竜ら強者には通用しないだろうけど、巨大赤ムカデ君(変異種)程度なら、この通りだ。

呆然としている 白狼君(リーダー) に『昨日の件、これで良い?』とがうがう訊ねると、狼顔を顰める。

え?

サイズは最高だけど、全身毒で食べられない?

君らでも食べられないものが有るんだね。

え?

毒は流石に無理?

まあ、そりゃそうだよね。

巨大赤ムカデ君(変異種)をそのままに、先に進む。

後ろが騒がしいと思って、走りながら振り向くと、白狼君ですら食べられないと言った巨大赤ムカデ君(変異種)に、青い羽の 魔鳥(まちょう) が群がっていた。

体長五メートルほどの彼らが何十羽も集まる様子は、なかなか怖い。

いや、しかし、彼らって、巨大赤ムカデ君の毒が平気なのかな?

何にしても、たくましい!

林に到着し、白狼君達が帰って行く。

結局、今日も白狼君が満足する獲物には出会えなかった。

弱(じゃく) 水牛君を三頭ほど、狩ってあげたのに、 白狼君(リーダー) は首を縦に振らなかった。

ミスリルトカゲ君一匹で、なんだか面倒なことになったなぁ。

マンモス君なら満足しそうなので、今度、探して狩ってあげようかな?

そんなことを考えつつ、町の門に到着する。

門番のジェームズさんがいたので、わたしが帰った後の事を聞いてみる。

「一匹ほど出たが、速やかに始末された」

と恐ろしい顔で話してくれた。

……なんか、ジェームズさんが言うと、敵対勢力のボスを殺ったかのように聞こえるから、不思議だ。

お礼を言って、まずは解体所に向かう。

弱(じゃく) 水牛君を解体所の所長グラハムさんに渡して肉の一部を残し、売却する。

そして、冒険者組合に行く。

中に入ると、赤鷲の皆がいて、わたしに気づくと手を振ってくれた。

早足で近づき、挨拶をする。

「おはよう。

遅れた?」

わたしの問いに、赤鷲の団団長のライアンさんが「おはよう」と言いつつ首を横に振る。

「大丈夫だ。

組合長もまだ、手が空きそうに無いしな」

「そうなんだ。

後、何匹ぐらいいるのかな?」

「なんか、少なくとも二十匹とかいう話は聞いたが……。

なんとも言えんな」

まあ、さらに追加で流れてくる可能性もあるもんね。

そうなると、面倒だ。

町の近辺を一掃したら、ケルちゃんとさかのぼる形で様子を見に行くのも良いかもしれない。

ケルちゃん……。

あ、そうそう、 従魔(じゅうま) 登録の件、確認しなきゃ。

赤鷲の皆に断りを入れてから、受付に向かう。

ちょうど良く、受付嬢のハルベラさんが座っていて、ニッコリ微笑んでくれたので声をかける。

「ねえねえ、ハルベラさん。

従魔登録の件、どうなった?

魔道具が無いって話し……」

すると、ハルベラさんは少し困ったように眉を寄せた。

「ごめんなさい。

まだ届いてないの。

依頼は十日ほど前に 行(おこな) っているから、そろそろ来ても良いと思うんだけど……。

何か急ぎで必要なの?」

「うん?

う~ん、急ぎってほどでは無いけど、あの子達、付いてきたそうにして、少々困っているの」

ハルベラさんは「まあ、懐かれているのね」とクスっと笑って続ける。

「多分、近いうちに届くと思うから、町に来たら 組合(ここ) に顔を出して」

「うん、分かった」

そんな話をしていると、組合長のアーロンさんが奥から出てきた。

「サリー、待たせたな。

赤鷲の団も出るぞ」

わたしと赤鷲の皆が、それぞれの言葉でそれに応えた。

組合長のアーロンさんと赤鷲の皆で門から外に出る。

これから組合の馬車が来るとのことで、ここでそれを待つとのことだった。

そこで、一応、先ほど会った五十メートル級の巨大赤ムカデ君(変異種)について話した。

皆、真っ青な顔をしながら、それを聞いていた。

アーロンさんが眉を寄せながら難しそうに言う。

「それほど大きな巨大赤ムカデの話は聞いたことが無いが……。

お前が見たというのであれば、いると言うことなんだろうな……」

赤鷲の団のマークさんが顔を引きつらせながら言う。

「組合長、それほど大きい巨大赤ムカデが現れたら、組合だけではどうにも出来ないぞ」

「ああ、そうだな……。

ただ、そうまで巨躯なら、林や森の中であれば思うように動けないだろう。

サリーが見たという平原はともかく、わざわざ、こちらまで来るとは思えん」

アーロンさんにわたしが「ああ、そうかもね」と同意すると、赤鷲の皆は少し安心した顔になる。

アーロンさんが続ける。

「まあ、取りあえずは通常の大きさ――という言い方も少しおかしいが、普通の巨大赤ムカデを念頭に動くことにする」

ライアンさんが頷きつつ訊ねる。

「巨大赤ムカデを討伐するにして、場所とかの目星は付いているのか?」

「ああ、付いている。

昨日、解散してから 魔虫(まちゅう) の研究をしている奴に確認したんだ。

この地域だと奴らの好む、湿地は数が少ないらしいからな。

”恐らくここだろう”という場所を教えて貰った」