作品タイトル不明
植える
「えーっと、確か魔石だけじゃなくて、土も入れてたはずだよな。多分これだと思うけど、あってるかなスーちゃん?」
マジックバッグの中を探り、土を取り出す。
僕が手に取ったのはダンジョンで遭難していた時にマジックバッグの中に入れたサバンナの土だ。
ダンジョン脱出のために荒野にあった巨大樹からダンジョンの天井を掘り進め、なぜかその上部でサバンナへとたどり着いた。
そのときに掘った土の一部をマジックバッグの中に入れていたのだ。
なぜそんなことをしていたのかと言われれば、魔石鉱脈を見つけたからだ。
魔石はスーちゃんが好物でよく食べていたし、僕はダンジョン内で長期間生き延びるためにスーちゃんのスライムボディーを分けてもらって生き延びていた。
というわけで、僕にとっての生命線はスーちゃんであり、スーちゃんにとって魔石は栄養価の高い食べ物だった。
見つけた端から全部食べてしまわないように、魔石鉱脈で採れた魔石は分けて貯蓄用としてマジックバッグに保管していた。
そして、そんな魔石だが、きれいに魔石だけをふるいにかけてマジックバッグに収納していたわけではない。
なにせ、ダンジョンの天井という名の岩盤を掘っているときには光すらなかったのだ。
スマホの充電もとうの昔に無くなっていたために、真っ暗闇の中、ひたすら上へとスコップで掘り進めていた。
そんな状況でスーちゃん用に取っておく魔石は、それを採掘したときの土や岩も一緒にマジックバッグへと放り込むことになった。
結果として、サバンナに出る直前にもマジックバッグへと入れた土が残っていたわけだ。
僕がその土を取り出して、スーちゃんに確認するとプルプル震えて頷いてくれた。
やはりこれはサバンナの土であっているみたいだ。
ということは、サバンナにいたトレントにも合うはず。
今僕がいるパワースポットの磐座地脈地点がモンスターに好まれる場所だとしても、トレントが生育するのに相応しい環境であるかどうかはわからない。
なので、ちょっとでも育ちやすく成功する可能性が上がるように、僕はここにダンジョンのサバンナの土を撒くことにした。
磐座をどけたりするのはまずいだろうということで、その近くで木が育ちやすそうな場所を見繕い、マイスコップで穴を掘る。
すでに、曾祖母の家の庭で竹や木を取り除いた経験があるから作業はそれほど手間取らずに進む。
山の中の地脈がしっかりしていて周辺の魔力が集まってくるこの場所で、僕はマイスコップを使って穴を掘る。
申し訳ないが磐座の周囲の根まで掘り起こして木を倒し、その木はスーちゃんに食べてもらったりしながら山の森の中を開拓する。
そして、木も草もなく、穴だけが残ったその場所にマジックバッグから取り出したサバンナの土を撒いた。
ただ、さすがにすべてをこの土にするのはどうだろうという気持ちもある。
この山の土は長い年月をかけて今の環境にあう微生物などが住む土となっているはずだ。
であれば、それを完全に取り除き、別の土を入れて植物を育てるというのもよろしくないだろうというわけで、僕は穴を掘り、横にどけた山の土も一緒に穴に入れて埋め戻す。
サバンナの土と元の山の土をブレンドするようにして、掘ってできた大穴を埋めた。
森の中にぽっかりと開いた空間。
近くには神様が天から降りてきてお休みになられるという霊験あらたかな磐座がある。
そして、周囲から魔力が集まる地脈の流れの中心点に、大自然が育んだ豊穣の土と、それとはまったく異なる性質を持つかもしれないダンジョンの中のサバンナの土。
なんだか、ここだけ見るとミステリーサークルみたいに見えるな。
まん丸に穴を掘って埋めたから、草木のないきれいなサークルができてしまっている。
その真ん中へとランダムフルーツを植えた。
見た目はリンゴみたいな形をした果実だ。
きっとこいつも食べたら別の味がするんだろう。
……今更だがどうやって植えたらいいだろうか?
果実を割って中に種があるかを見たらいいだろうか?
いや、よくわからないからそのまま植えるか。
どうせ正解なんて誰にもわからないんだし、やってみるしかないだろう。
僕はミステリーサークルの中でブレンドされた土をもう一度スコップで軽く掘り、そこにリンゴ型のランダムフルーツを植えることにした。
きちんと育ってくれるかわからないので、念のためにその周りに魔石も一緒に埋めてみる。
後は水やりだ。
マジックバッグから取り出したポリバケツの水を、植えたランダムフルーツへたっぷりとかけた。
うまく育ちますよーに。
そんなことを神様にお願いしながら、僕はパンパンと手を叩いて磐座に合掌してから帰宅したのだった。