軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

磐座

「えーっと、確かこの辺だったよな」

バイクで高速道路を飛ばしてやってきたのは、曾祖母の家がある山間の田舎だった。

そこからさらに移動して僕が向かったのは例の山の中だ。

ひいばあちゃんが赤目黒熊に襲われて血まみれで倒れていた場所。

すでに赤目黒熊は大地に捧げて地脈を再生するために使ったのでその痕跡は一切ない。

なので、正確な場所にたどり着けるかが少し不安だったが、多分ここであっているはずだ。

この山は自然が豊かで、季節によっては貴重な山菜や珍味が手に入るそうだ。

だが、ここに来る人はほとんどいない。

なぜならここは私有地だからだ。

実はこの山の土地はひいばあちゃんが持っているのだという。

これは、ひいばあちゃんを施設へ入居させるための手続きを進めていた時にわかったことだ。

曾祖母の家とその敷地内だけがひいばあちゃんの持つ土地ではなく、この山一帯が所有地なのだそうだ。

面積的には相当に広い。

が、土地としての値段は決して高くなく、むしろ相続すると困るだろうと言われる土地だ。

なにせ、人が住むような整備された場所でもなく、人を襲うモンスターが出た場所でもある。

買い手がつかない土地のくせに相続したらいろいろと面倒な手続きや維持費ばかり発生する可能性があり、むしろマイナスになるかもしれない負動産だとも言われている。

なので、あの時集まった親戚一同、全員いらない土地だと認識していた。

しかし、それは主に金銭的に見た場合の話である。

曾祖母の家の近所に住むという、距離の離れた隣人のおじいさんは竹藪を処理してくれという話のほかにもこんな話をしてくれていた。

それは、大昔からあの山は神さまの山と呼ばれているのだとか。

「……これだよな。確かに、岩がある。これが 磐座(いわくら) ってやつで合ってるのかな?」

よく神様を祀る神社などには御神体と言われるものがある。

または、大昔から存在する巨木のことを御神木とも言ったりもする。

それと同じように大昔の人は岩を祀っていたそうだ。

それが磐座だ。

昔の人はどうやら相当に想像力がたくましかったみたいだ。

山の中などにある大きめの岩を見て、「これは神様が天から地上に降りてきたときにお休みになられる椅子の役割をしている岩に違いない」と考えて、それを大切なものとして信仰の対象にすることがあったのだそうだ。

僕の目から見ると上面が確かに平らっぽいかな? と思うくらいで座るにはちょっと凸凹しすぎているんじゃないだろうかと思う岩だが、近所のおじいさんは確かにここには磐座があると言っていた。

きっとこれで間違いないのだろう。

だって、アースソナーで地脈の流れを調べたときには、この磐座がある地点が一番地脈的な立地がいいのだから。

僕の仮説が正しければ、人の手が入っていない地方の地脈がしっかりした場所をモンスターが目指す可能性が高い。

ってことは、赤目黒熊はこの山に入ったひいばあちゃんを鋭い爪でひっかき、しかし放置してその場を離れ、きっとここにいたんじゃないだろうか。

一番のパワースポットを自身の縄張りに定め、そこに近づいてきた僕を外敵か何かと判断して出迎えてくれたわけだ。

ということは、ここはモンスターが好む場所で間違いないと思う。

ならば、ここならトレントも気になるのでは?

曾祖母の家の敷地内じゃないのが少し気になるけれど、ひいばあちゃんの土地だからいいよね?

トレントがうまく育って何か問題を起こした場合も、どこからかトレントがやってきて住み着いたんじゃないかってなるだろうし。

そんな言い訳を頭に浮かべつつ、僕はここにランダムフルーツを植えてトレントを育てることにした。