作品タイトル不明
逆転の発想
「よし、逆転の発想でいこう。魔力が豊富で地脈が安定した場所にモンスターが集まってくるんなら、逆にこっちからモンスターを配置しておくってのはどうだ」
僕が一晩考えて出した結論はそんな突拍子もないことだった。
スタンピードによって地上に出てきたモンスターたちが僕の住む地や曾祖母の家の近くに来てしまうくらいなら、あえてこちらからモンスターを置いておく。
そんな方法が使えないだろうかと思ったわけだ。
実は僕の家の周辺だったらそれはもう完了しているといってもいいかもしれない。
というのも、すでにスーちゃんがいるからだ。
僕は自分の家を中心にして行ける範囲の地脈を再生させまくり、そしてその地をアースソナーで監視していた。
しかし、四六時中ひとりで監視し続けることなんてできない。
当然、寝ている間は無防備になる。
なので、スーちゃんが分裂して各個に行動できると知ってからは、スーちゃんの分裂体を無数に地下下水道を通じて活動させている。
これはつまり、自宅エリア周辺はスーちゃんの縄張りになっていると言ってもいいのではないだろうか。
基本的にはスーちゃんは日中は地下の下水道で人目から隠れてもらっている。
そのうえで、夜人々が寝静まるころに地上に這い出てきて、地域清掃を行う。
人目には触れることなく道路や公園などのゴミを食べてくれているのだ。
もしもこのスーちゃんの警戒エリアにどこかからモンスターがやってきて入り込めば、無数の分裂体が集まり、そのモンスターに取りついてやっつける。
なので、割と平和な地域となっているわけだ。
それを曾祖母の家の近くでもやればいいのだが、果たしてできるのだろうか。
スーちゃんのすごさは留まることを知らないけれど、バイクで数時間移動しなければならない遠距離という二拠点目でも活動ができるのかがわからない。
曾祖母の家のお掃除担当に数体の分裂体を置いてきているが、さすがにそれだけでは防衛戦力としては足りないしね。
で、そう考えたときに、ふと別のモンスターを曾祖母の家に配置してしまうのはどうだろうかと思いついた。
そのモンスターというのは、トレントだ。
樹木型のモンスターであり、僕とスーちゃんが遭遇したサバンナトレント。
もしかするとあいつを根付かせることができるかもしれない。
なぜなら、つい先日、僕のマジックバッグの中からランダムフルーツが一つだけ見つかったからだ。
あれはサバンナの地下を掘り、そこで見つけた地下神殿でのことだ。
暗闇の中で食料が尽き、僕は持っていたランダムフルーツをすべて食べ切った――そう思っていた。
だが、帰宅してからマジックバッグの整理をしていたところ、その奥からぽろりと一つだけ転がり出てきたのだ。
まさか残っているとは思わなかったので驚いたが、せっかくの最後の一個である。
食べてしまうのはもったいない。
そこで思いついたのが、これを植えてみることだった。
つまり、曾祖母の家の庭にランダムフルーツを植えて、トレントに育てることで、あの地域はトレントの縄張りだよと他のモンスターに縄張りを認識させて近寄らせない作戦である。
……そんなことが現実にできるのか?
確実性は全く不明の作戦だ。
だが、僕はそれをやってみようと考えた。
なぜなら、あの一個を食べてしまえば、もう二度と手に入らないかもしれないからだ。
ランダムフルーツは、見た目と味が一致しない不思議な果実だ。
しかもめちゃくちゃおいしい。
だというのに、現状ではもう手に入れられる機会がない。
だが、もっと楽しみたい。
地上で農家さんが作ったフルーツも絶品ではあるが、ランダムフルーツも魅力的な食べ物だからまた食べたいと常々思っていたのだ。
そして、そんなときにお母さんから家庭菜園についての話があった。
貸し農園で自分で野菜の種を植えて育てて食べる。
それを聞いたときに頭に浮かんでいたのだ。
ランダムフルーツを植えたらトレントが育って、再び新たなランダムフルーツを実らせることになるんじゃないだろうか、と。
しかし、さすがに貸し農園という人の土地で目立つ行動をするわけにはいかないだろうと自重していた。
が、僕が管理する曾祖母の家の庭ならいいんじゃないか。
全く人がいないわけではないけれど、ご近所さんの家までは距離が離れているわけだし。
そう考えたら、すぐに実行してみたくなった。
僕は再びバイクへとまたがり、高速道路を飛ばして曾祖母の家へ向かった。
なにはともあれ、ランダムフルーツを植えてきちんとトレントが育つかどうかが第一の問題としてある。
それができるかどうかを試してみようと意気込んで、人気のない山の奥へと向かっていったのだった。