作品タイトル不明
秘密基地
「しょっぼ。やる必要あったのかな?」
曾祖母の家の管理という名の片付けを行う。
その途中に出てきたゴミの中でも金属類を集めたものを買取してくれる施設へと持ち込んだ。
そして、その買取金額は――まさかの千円未満だった。
安すぎる。
わざわざ買取している施設を調べてバイクを走らせて持ち込んだことを考えるとあまりにも安い。
いや、けどこんなもんだろうか。
ちょっとした鉄くずが何十万もするわけないんだしな。
内心では少し期待していただけに、買取金額が予想を大きく下回ってガックリしたが、それでもお金を得ることができたわけだ。
決してマイナスだったわけではないし、この金額だって掃除をして手に入れたものだ。
有効活用しよう。
というわけで、帰宅途中の高速道路のサービスエリアで休憩する際には、普段はあまり食べないご当地グルメを味わいながら帰路についた。
今日一日で曾祖母の家はかなり見違えたと思う。
好き放題に広がっていた竹藪をすべて除去したおかげで、見晴らしがかなりよくなった。
家のすぐ近くで育っていた木々も適当に枝を落として、屋根の上などもスーちゃんがきれいに掃除をしてくれた。
ついでに、家の壁も床下も天井裏もゴミやほこり、動物のフンなど生活の邪魔になりそうなものは、全部食べつくしてもらっている。
家の庭にあったビニールハウスの残骸も数百個はありそうな植木鉢も処理して、雑草は芝生に見えるように刈りこみ高さを統一している。
ピカピカの新築にはさすがに見えないけれど、もう高齢者だけが住んでいて全く管理できない見た目とはほど遠いと言えるだろう。
しかも、それは今後も維持される。
スーちゃんの分裂体を置いてきたからだ。
ピンポン玉くらいの小ささの分裂体を数体残してきた程度だけれど、一度きれいさっぱりと片づけた後ならばそれを維持するのには十分だ。
ただ、問題はまだ片付けはすべて終わっていないということ。
というのも、広い日本家屋の家の中には山のように荷物が残っていたからだ。
……本当にひいばあちゃんが一人で暮らしていたんだよね?
そう確認しに行きたくなるくらい、家の中には荷物があふれていた。
衣服だけでもこんなにあっても着ないだろうと思うくらいにあるし、明らかに女性ものではないものもある。
亡くなった曽祖父やほかの家族の服を残しているんだろうか。
服以外にも雑貨類は山のようにあり、皿だけでも何十人をもてなすつもりで置いているんだろうかと思ってしまう。
また、家の納屋みたいなところには道具類もたくさんあった。
雑草を刈る鎌やノコギリ、トンカチなどは僕でも使い方がわかるけど、一目見ただけでは使い方すらわからないような道具類もいろいろと見つけている。
正直、僕にはそれらの正しい価値がわからないものばかりだ。
が、ひいばあちゃんにとってはそうじゃないかもしれない。
僕があの家の管理をすることになったのだって、もともとはひいばあちゃんがいつかあそこに戻りたいという希望もあり、そのための管理人として僕が引き受けたのだ。
実際に帰ることがあるかは未知数だけど、家の中のものを僕が勝手に全部処分してしまうというのはいかがなものかと思ってしまった。
というわけで、曾祖母の家は見た目だけはそれなりにきれいにはなったが、物が散乱している状態である。
次に行ったときには荷物を整理かな。
後は、もともと僕があの家に行くきっかけとなった畑づくりもしてみたい。
自宅近くの貸し農園では面積が限られていたが、あの田舎の家だったらもっと広々と土を耕して畑を作ることもできるだろう。
畑づくりとその管理が僕にできるかはわからないが、一度チャレンジしてみたいと思っている。
なんか秘密基地を手に入れたみたいだな。
自分の家の部屋に帰ってきて、改めてそう思った。
自宅ではいつでも快適な生活が送れるし、なによりもネット環境も整備されている。
それと比べると曾祖母の家は電話すらまともにできなかった。
けれど、周囲を大自然に囲まれ、近くに人も少ないあの環境は、まさに隠れ家そのものだった。
人目を気にせずに好きなことをしてもいい。
そんな雰囲気がある。
予期せぬ遊び場を見つけたことに喜んだ僕は、その日の晩はいかに曾祖母の家がきれいになったかを夕食で家族に説明したのだった。