作品タイトル不明
残骸
「まさか、竹の根っこが家の下まで続いているとはね。すごい生命力だよね」
竹藪を一掃したとはいえ、ダンジョンで鍛えた採掘力とマイスコップ、そしてスーちゃんがいなければ、マジで数年がかりの作業になっていたと思う。
広範囲に広がる竹藪は地上からも目に見えていた。
しかし、その下に広がる地中茎は更なる範囲に根を広げ、そのうちの一部はなんと家の下にまで広がっていた。
気になってアースソナーで根の追跡を行っていたのだけれど、床下からタケノコが生えかけていると知ったときは、さすがについ笑ってしまった。
だが、実はこれは笑いごとではない。
竹の根を追って掘り進めた先で床板をめくり、そこでタケノコを見つけることはない話ではない。
しかし、それはかなり悲惨な事態につながることがあるのだそうだ。
というのも、床板で遮られていた光がその竹にあたることで、それまでは地面から顔を出す程度で留まっていた成長が加速する。
そうすると、床板を突き破るように竹が伸びてくることがあるのだ。
家が傷まないように竹を処理するはずが、逆に傷む原因になってしまうというわけだ。
竹は割りばしや炭、メンマなど用途の広い資源ではある。
けれど、とにかく生命力が強すぎる。
まあ、そんな竹だがなんだかんだといいつつ、スーちゃんが床下のものまで食べてくれたおかげですべて除去できた。
曾祖母の家の一角にそびえたつ高さ三メートルほどあった竹藪がきれいさっぱり消えたことで、今まで隠れていた家の側面まで見えるようになった。
かなり印象が変わった気がする。
だが、まだ草木は豊富だ。
特に木と草むらは蜂が隠れていることもあるようなので、早めに全部取っ払いたい。
そう考えて、僕は一心不乱にスコップで庭を掘り返していく。
「っていうか、なんでこんなに植木鉢があるんだろうな? 草に隠れていたけど、少なく見積もっても百個以上あるんじゃないか?」
草木の処理をしていて、なぜだか出てくる植木鉢。
よくある丸いおわん型の植木鉢が、次から次へと出てくる。
これは植木鉢に土を入れてなにか植物を育てていたんだろうか?
で、その植木鉢にあった植物が枯れたから別の植木鉢で育てて、みたいな感じでどんどん鉢の数が増えていったとか、そういうことなんだろうか?
いくら庭の広さがあるとはいえ、ここまで植木鉢がある理由が全く理解できない。
中には割れた鉢の一部が地中から見つかることもあり、まるでどこかの遺跡で発掘でもしているんじゃないかと思うくらいだ。
ひいばあちゃんの趣味が盆栽だったとか、そういうことなんだろうか。
そんなことを考えながら地面を掘り進めると、今度は植木鉢以外にも変わったものを見つけた。
それは鉄だ。
鉄の棒が地面に刺さっていて、しかもそれがいくつもある。
「……え、まって。これってもしかして、ビニールハウスの骨組みじゃないか? ビニールなんて一切ないし、草と蔓が纏わりついていて全然気が付かなかったな」
田舎の家って、自分ちの庭にビニールハウスまであるものなんだろうか?
それが普通のことなのかわからないが、おそらくこの残骸はビニールハウスの骨組みである細い鉄の棒だと思う。
どうしようか?
ゴミでも鉄でも関係なくスーちゃんが食べてしまうことはできると思う。
けど確か、金属類って再利用しやすいんじゃなかったっけ。
町中ではジュースの缶なんかを集めている人がいたけど、それは売れるからって聞いたことがある気がする。
いや、別に金属に限らず木も紙も、プラスチック製品とかもみんなリサイクルできる資源なんだとは思うけど。
それでも、この鉄の残骸まで全部スーちゃんに食べさせていいのか、今さらになって少し迷ってしまう。
ビルの解体の時なんか、全然気にせずに食べちゃってたんだけどな。
「スーちゃん、もしできるならこの骨組みに使われている鉄は一度食べた後、金属だけをまとめて吐き出してみてもらってもいいかな?」
僕がそう言うと、スーちゃんがフルフルと震えてからビニールハウスらしきものを食べ始めた。
しばらくすると、きれいに刈りそろえられた芝生もどきの雑草の上に、鉄だけがまとめられて塊として置かれていたのだった。