作品タイトル不明
後見人
お金なら自分が出す。
僕がそう言ったことで親族会議は終わりに向かうことになった。
が、僕の意見がそのまま通ったわけではない。
なぜならば、僕の見た目は完全に中学生男子だからだ。
戸籍上の実年齢はもう成人済みである。
とはいえ、ひいばあちゃんを起点とした遠い親戚筋の集まりであるために、ハッキリと僕の年齢を覚えている人はむしろ少ない。
なので、僕が発言したときには「子どもがなにを言っているんだ?」という表情しかそこには浮かんでいなかった。
子どもが訳の分からないことを言って話し合いをかき乱すなと言いたい人もいたかもしれない。
とはいえ、ひいばあちゃんを実際に助け出したのが僕だったのでそこまで強くは言えずに、「そうは言うけどねぇ、佑馬君。施設に入るのはあなたが思うよりもお金がかかるのよ」と言うに留まったわけだ。
だが、実際に僕には支払い能力がある。
そして、それをわかっている人がこの場にはいる。
僕の両親だ。
ひいばあちゃんの大事件に僕が直接かかわったことでこれは大変だと両親もこの地にやってきており、この親族会議の場には参加していた。
そして、お父さんがこう言ったわけだ。
さすがに子どもの佑馬に曾祖母の面倒を見させるのはよろしくないから、自分が責任を持つ、と。
ようするに僕ではなく、僕の父が曾祖母の成年後見人になるということになった。
僕はよく知らなかったが、そういう制度があるらしい。
ひいばあちゃんの後見人ということになり、ひいばあちゃんが持つ資産などを後見人たる父が管理しながら生活をサポートする。
つまり、施設への入居費などをこちらが一方的に負担するのではなく、曾祖母が持つ資産も使いながら生活を支えていこう、というわけだ。
本来は、認知症などで生活を営むことが難しくなった高齢者をサポートするための制度らしい。
だから、これまで一人で生活してきたひいばあちゃんが対象になるのかと思ったけれど、百歳近い年齢であることを考えれば、問題なく利用できるらしかった。
で、その話を後見される側であるひいばあちゃんにすることになった。
「あの家をいつでも帰ることができるように残しておいてほしいわ。時々連れて帰ってこられるのなら考えるよ」
お父さんがひいばあちゃんに話した結果、返ってきたのは、そんな願いだった。
やはり、ひいばあちゃんにとってあの家は大切なものであるようだ。
一度施設に入ったら、あんな辺鄙な場所に戻る機会なんて本当にあるんだろうか。
そう思ってしまうが、本人がそう希望しているのであればしょうがない。
そこで、一緒にいた僕は横から答える。
「僕でいいなら掃除とかしに行こうか? こう見えて、清掃業の会社で働いたこともあるからプロだよ、プロ」
空気を換えるように、僕は大きく手を挙げてそう言った。
すると、ひいばあちゃんはことのほか喜んでくれた。
というわけで、ひいばあちゃんは退院後に僕らの家から通える距離にある施設に入ることになり、僕は田舎のポツンと一軒家の管理人となったのだった。