作品タイトル不明
搬送
「ど、どうしたんだい、この怪我は。いや、とにかくすぐに処置を行う。運んでくれ」
森の中で遭遇した赤目黒熊を倒した。
が、僕の目的は森にいたモンスターを倒すことではない。
そこにいたひいばあちゃんを助けることだ。
どういう経緯で森の中にいて、大量の出血をすることになったのかはわからないけれど、意識を失い、大怪我を負ったひいばあちゃんを、僕は森から連れ出した。
ひいばあちゃんの傷口は、スーちゃんの分裂体のおかげで、ひとまず出血だけは止まっている。
呼吸もしている。
だが、その息は弱々しい。
もともとが高齢であるというだけではなく、反応が鈍い。
呼びかけにも反応しないし、揺さぶっても返事はない。
そんな状態で動かすのは心苦しかったが、なんとかしなければと僕はひいばあちゃんの体を抱えて森を抜け、バイクに乗った。
バイクを運転する僕の背中には、ひいばあちゃんの小さく細い体が密着している。
これもまた、スーちゃんに頼んだ。
元来、バイクは一人で乗る乗り物であり、二人で乗る場合には同乗者自身が運転者に掴まっている必要がある。
そうしないと落ちてしまうから当たり前だ。
だが、意識がないひいばあちゃんが僕の体に掴まることは不可能である。
だから、スライムボディーで僕の体と引っ付けて、さらに、バイクの運転による揺れは最小限になるようにスーちゃんに頼んだ。
そして、僕はスマホのマップを頼りに大きな道を探しながら走り、病院を目指した。
スマホは圏外だったけれど、GPSは現在地を示してくれたおかげで、どの方向に行けば人里があるかがわかったのは不幸中の幸いだった。
そんなこんなで、曾祖母の家のある地域から一番開けた場所で病院見つけ、駆けこんだわけだ。
といっても、ここもまだ田舎であり、小さな病院だ。
見た感じ、最新設備が揃った病院とは絶対に言えないところだった。
が、それでも僕では判断できない治療のスペシャリストであり、ひいばあちゃんの状態を見てすぐに危険だと判断し、処置室へと連れて行って治療を開始してくれた。
僕はその医師にひいばあちゃんを任せて、待合室で電話をする。
「うん、そう。ひいばあちゃんの家についたけど今病院にいるよ。森の中でひいばあちゃんが大怪我していたから連れてきたんだ。……うん、うん、わかった」
お母さんに連絡を取り、今後のことを相談する。
ひいばあちゃんの保険証がどこにあるだろうかとか、入院先はまた別の病院になるだろうだとか、入院中のお世話はどうするかだとか。
考えることがいろいろある。
僕とお母さんだけじゃ決められない。
ほかの親戚にも連絡して相談する必要がありそうだ。
そんなことを話しつつ、時間が過ぎていった。
よかった。
最終的に、ひいばあちゃんは一命をとりとめた。
別のもっと大きな病院に転院して長期の入院とリハビリが必要になるだろうという話だったが、それでもなんとか助かった。
『もう峠は越えたでしょう』と医師に言われて、僕は思わず目から涙が流れて止まらなくなってしまったのだった。