作品タイトル不明
スライム農法
初めての畑仕事。
プロ農家ではなく素人のお母さんではあるが、数年の経験があるだけあって、教わりながらの作業は思った以上に楽しかった。
単純に土を掘り返すだけではなく、スーちゃんと協力してフカフカの柔らかい土を作ることができるという気付きがあったのもよかった。
だが、植物を育てるというのは思った以上に手がかかるものみたいだ。
僕は初めての作業を終えてから数日後に同じ畑に行くことになった。
そして、そこでは自分が耕した範囲の畑だけではなく、それまでお母さんが世話をしていた場所でもお母さんと一緒に作業を行い、その手間の量に驚いた。
まず、状態のいい土というのは、野菜だけではなく雑草まで元気に生えてくる。
一口に雑草といっても種類が多いようだ。
多種多様な雑草が地面から生え、地中には根を張って、本来は作物に行くはずの栄養まで吸い取ってしまう。
なので、この雑草をなんとかしないといい野菜などは育たない。
だが、だからといって雑草は引っこ抜けばいいというものでもないらしい。
僕はなんとなく雑草というのは根っこごと地面から引っこ抜く必要があるのだろうと思っていた。
しかしこれは正しくないそうだ。
すでに地中に根を延ばした雑草を、その根っこごと引き抜いて除草してしまうとその場所の土は硬くなってしまい、植物にとっては状態のいい土では無くなるのだそうだ。
ではどうするのかというと、根は残したまま、生長点のあたりを刈り取るのがいいらしい。
そうすることで、地中に根は残っても、同じ場所から雑草が伸びにくくなるのだそうだ。
そして、残った根っこが毛細血管のような役割を果たして土がフカフカの状態を保つことができるとのこと。
しかし、それをするには手に鎌を持って、地面すれすれのところで雑草を刈り取る必要がある。
狭い範囲ならばそれでもできるかもしれないけれど、面倒だし、中腰の姿勢は最悪の場合、腰を痛める可能性もある。
だが、引っこ抜くと土は固くなるし、かといって生長点よりも上の部分の葉っぱだけをちぎったところで雑草は無限に生えて伸びてくる。
というわけで、家庭菜園ではそういう手間をなるべく少なくするための道具というのがあるのだそうだ。
マルチシートなるものをお母さんから渡される。
黒っぽい薄いビニールシートみたいなやつだ。
こいつを地面に敷き詰める。
自分が植えた植物の芽が出てきた場所だけは穴を開けてお日様の光に当たるようにし、それ以外の場所は日に当たらないようにしてくれる。
雑草対策には、生長点を刈り取る以外に、日光を遮る方法もある。
たいていの植物は日光を浴びて光合成を行い、成長する。
だから日光を遮れば、成長を抑えることができるのだ。
マルチシートを使うことでこちらが求める植物には水と光を届けて、雑草には一切の慈悲を与えないようにしてしまう。
というわけで、雑草対策はこれでとりあえずいいとしても、家庭菜園には他にもいろいろと大変なことがある。
それは害虫問題だ。
人間が食べるための植物というのは、たいていの場合、虫や動物などにとってもおいしく食べられるものである。
ゆえに狙われる。
植物が種から発芽したばかりの芽の状態でも、さらにそれが伸びて青々とした茎と葉が伸びてきたとき、そして可食部にもなる実が付いたときなど、いつでも害虫たちは植物を狙っている。
そういう場合は家庭菜園でも農薬を使用する。
あまりいいイメージが農薬にはないかもしれないけれど、日本で売られているものは安全性をこれでもかと調べて危険なものは排除されているし、なにより無農薬はあまりにも大変だ。
できないわけではないのだろうし、こだわる人もいるのだろうけれど、お母さんは必要最小限なら使ってもいいんじゃない、という考えの人間のようだ。
というわけで、野菜などを食べる虫などがいないかを各畝で確認し、見つけた場合はそれに合わせた薬を適量使うようにしていく。
このへんは結構知識が必要で、僕は言われてもあまりわかっていない状態だ。
奥が深い。
畑仕事はただ土を耕して種を植えて水をやればそれでいいというわけではないようだ。
それがよく分かった。
が、それってだいたいスーちゃんがいれば問題解決しないだろうか?
雑草が生えたらスライムのスーちゃんに根っこだけ残して食べてもらうようにすればいい。
植えた作物に群がる虫がいれば、それをスーちゃんに食べてもらえばいい。
ほかにも鳥や獣に対してもスーちゃんがいればある程度対応できるんじゃないだろうか。
なにせ、ピンポン玉程度の大きさに複数体分裂することができ、時間に関係なく畑を見張ることができるのだから。
そんなわけで、僕は自分が耕した畑はスーちゃんに見張りをお願いすることにした。
その結果、常に雑草が伸びてこず、虫もつかない状態で野菜を育てることができた。
そのおかげで、成長の早い葉物野菜などを大量に収穫することに成功したのだった。