作品タイトル不明
初の畑仕事
「へえ、ここが借りている畑か。結構ひろいものなんだね」
翌日になってお母さんと一緒に畑へとやってきた。
自宅からは少し歩いてくる必要がある程度には離れているが、それなりの広さがある貸し農場だ。
都会ならばもっと狭いのかもしれないけれど、このあたりなら借りようと思えばもっと広い範囲の畑を借りることもできるのかもしれない。
ただ、家庭菜園をするのであればこれくらいでも十分すぎる広さなのだろう。
そんな畑の一角にはまだ何もしていない場所がある。
どうやら、すでに畑を耕して野菜などを植えているところもあれば、手つかずのところもあるみたいだ。
今日は、母さんの手が回っていなかった場所を僕が耕していくらしい。
ダンジョンに行きたがるくらいには体力が有り余っているだろう、という理由からだ。
「まずはこのあたりで大きな石や枝、雑草の根っこを佑馬には拾ってほしいの。小さなものはまだそこまで気にしなくてもいいから、ある程度拾ったら、スコップや鍬でこの場所の土を耕してくれるかしら? 大丈夫?」
「オッケー。大きい石とかを拾ってから土を耕すんでしょ。大丈夫だよ」
「なら、お願いね。お母さんは向こうの畝の様子を見て、お水をあげたり肥料を与えたりしているから、気になることがあったらすぐに声をかけてちょうだいね」
「うん、わかったよ」
お母さんとは一時分かれて作業を行う。
僕は担当になったエリアをぐるりと一回りし、先に拾っておいたほうがよさそうなものをピックアップする。
このとき、確認するのは目だけじゃない。
僕にはアースソナーがあるので、それを使って畑の状態も管理できる。
地面の下がどうなっているのかも、魔力の波で把握できる。
そのため、地中に埋まった大きな石なんかも見逃すことはない。
もともとが貸し農園としての場所だけあって、そこまで大きな異物はここにはなさそうだ。
その辺の山や空き地なら、もっと大きな石や根っこがゴロゴロしていて、畑にするのも大変なんだろう。
だが、ここではそこまでではない。
アースソナーによる探知で見つけた異物を回収し、こっそりとスーちゃんに食べてもらう。
そんなことをしながら、僕はマイスコップを手に取った。
本来であれば、畑を耕すのは鍬などの農機具のほうがいいのかもしれない。
が、マイスコップは硬い岩盤のようなダンジョンの天井すらも掘ることができた逸品だ。
こいつであれば、しばらく使っていなくて硬くなった畑の土なんて楽勝で掘れるだろう。
その考えに間違いはなく、僕はザックザックと土を掘り返していく。
スコップが土へ沈み込む感触が気持ちいい。
固まっていた土がひっくり返り、柔らかい黒土が顔を出す。
うん。
やっぱり掘るのって楽しい。
だいたい地表から三十センチくらいの深さまで掘り、土をフカフカにする。
そうしたほうが野菜の根が伸びやすいらしい。
硬くなった土を掘り返した後もスコップでほぐして柔らかくする。
ある程度の広さを一気に掘ってから、土を砕く作業を行い、それを順番に繰り返していった。
だが、この時に気が付いた。
土を砕く作業はスーちゃんに頼んだほうがいいのではないか、と。
スーちゃんは何でも食べる大食漢だが、体に入れた食べ物も必ずごっくんと飲みこんで消化しなければならないわけではなく、外に排出することもできる。
スライムの体の中に土を取り込み、そこに含まれる石や枝、雑草の根っこなどを食べながら、土そのものは細かく砕きながら外に出す――そんな器用なことまでできるのだ。
というわけで、僕が掘り返した土をスーちゃんが柔らかく砕く作業を分担して行った。
ついでに、ダンジョン跡地で取ってきたダンジョンの土も同じように砕きながら、畑へと混ぜ込んでいった。
そうして、僕はあっという間にフカフカの柔らかい土になった畑を用意することに成功した。
様子を見に来たお母さんが驚いた顔をしつつ、次の作業を指示してくれる。
その後は、畑に堆肥や肥料を混ぜこみ、ホースで土に水をやったりしつつ、畝を作る。
そして、そのまま種も植えることになった。
お母さんとしては今日はまだ土を耕すだけの予定だったようだが、僕の作業が思った以上に早かったので、そのまま植えてしまおうということらしい。
比較的育てやすく、収穫までも早い野菜をいくつか選んで植えていき、しっかりとお水をあげて僕の初めての畑仕事は終わったのだった。