作品タイトル不明
魔石の消費
スーちゃんが体を分裂させ、無数のピンポン玉サイズのスライムとなって下水道などを通り、周囲へ散っていく。
普段は地下下水道を移動しながら汚れなどを食べつつ、人通りがなくなる丑三つ時になると分裂体は地上に這い出る。
そして、地上にあるゴミなどを食べて回る。
アースソナーによる探知で周囲の地形はだいたい僕の頭に入っている。
明らかに人の敷地内と分かる場所のものは、たとえ地面の上に転がっているものであってもスーちゃんには食べたりしないように指示を出しておいた。
そのかわり、道路や排水溝、公園などにあるゴミは積極的に食べてもらうようにした。
もちろん、その途中に人が近くに来る気配があればすぐに地下に避難するようにも言い含めている。
そんなこんなで、僕の家の周辺を中心に、広い範囲で落ちているゴミはかなり減ったように思う。
スーちゃんもうまく人に見つからないようにゴミや汚れを食べつつ、そのエリア内にモンスターが入り込んでいないかも確認してくれている。
そこで、思った。
スーちゃんにはまだ余力がありそうだ。
であれば、その範囲を広げてみてもいいかもしれない、と。
そんなわけで、僕は自宅での高卒資格試験の勉強をしながらも、ときおりバイクでツーリングに出かけて、スーちゃんを派遣することとした。
その土地にある神社やお寺、お地蔵さんや古い遺跡、あるいは自然豊かな場所など、地脈回復に向いていそうな場所で魔石を使い、地脈を活性化しつつ、スーちゃんに見張りを頼む。
これまではランニングや自転車での移動範囲内のみで行っていたこともあり、魔導バイクという圧倒的機動力を持った僕はかつてないほど広い範囲を移動し、地脈再生に貢献できたと思う。
これで少なくとも近隣の県も含めて当分はスタンピードも起こらないんじゃないだろうかと個人的には思っている。
まあ、それも勝手な予想に過ぎないのだけれど。
「でも、だいぶ魔石の数が減ってきたな。いや、まだ残っていること自体がすごいのかもしれないけど」
あちこちで魔石を捧げて地脈を再生するという行為は、すなわち魔石を消費し続けることを意味している。
今の僕は魔石を使う一方で、新しく手に入ることはほとんどない。
にもかかわらず、まだ魔石の在庫があるというのは普通に考えればあり得ないことじゃないだろうか。
だが、いつかはなくなる。
消費し続けていれば当然だ。
今後も地脈を回復したいのであれば、どこかで魔石を得る必要があるか。
いや、どこかもなにも、魔石はダンジョン内でしか手に入らないのだけれど。
「どうするかな? 都会のダンジョンってまだあるから行こうと思えばいつでも行けるんだよね。でも、お母さんとかが心配するかもしれないしな」
実は内心でダンジョンにはまた行きたいなと考えることが時々あった。
ダンジョン内で遭難したのに何を言っているんだと言われそうだけど、時間を忘れて穴を掘る作業というのはあれはあれで僕は好きなのだ。
なので、行ってみたい気持ちがないわけじゃない。
が、十年間ダンジョンから帰ってこなかった僕を両親はどれほど心配したことか。
それを考えたら、これまでその気持ちを親に伝えるのはためらわれた。
だけど、やっぱり行きたい。
というわけで、僕は両親にまたダンジョンに行ってみたいことを夕食時に伝えることにしたのだった。