作品タイトル不明
活用法
スーちゃんはきっと普通のスライムとは違う。
今までもぼんやりとそう思っていたけれど、今回のことでより強くそう思うようになった。
スイちゃんやスラちゃんなどのスライムのほかにも、ダンジョンで発生したばかりのスライムを何体も見てきたが、どの個体よりもスーちゃんは変わっているんじゃないだろうか。
それはやはり、僕らがダンジョンで遭難したときに白龍の尻尾を食べたことが原因なんじゃないかと思う。
それまでも、賢いとは思っていた。
僕の体に引っ付いて 超集中(ゾーン) の手助けをしてくれたりしたけれど、白龍の尻尾を食べた時から体のサイズが上がり、能力が上がったんじゃないかと思う。
白龍はダンジョンの広大な草原を一瞬で荒野に変えるほどのモンスターだ。
そんな奴の尻尾を食べれば、スライムのスーちゃんがレベルアップしても不思議ではない。
実際、スーちゃんの力は今日の赤鬼にも有効だったし、条件さえ整えれば八目大黒カラスのような巨大飛行モンスターも墜落死させることができる。
普通のスライムとは違うだろう。
ただ、もしかしてその強さや特異性は白龍の尻尾を食べたことだけが理由ではないかもしれないと思う。
というのも、スーちゃんはその後に魔石の爆食いもしているからだ。
巨大樹を登り、そのてっぺんからダンジョンの天井という名の岩盤を掘り進め、サバンナまで貫通する穴を掘った。
その過程で僕は何度も魔石鉱脈を掘り当て、スーちゃんは鉱脈にある大量の魔石を食べていた。
このことがスーちゃんの体にどのくらいの影響を及ぼしたのかはわからない。
なぜなら、あの時は僕は真っ暗闇の中で穴を掘り続けていたし、スーちゃんも体の大きさを無意味に変えたりせず、僕の体にフィットするスライムボディーに徹していたからだ。
ただ、魔石は地脈を回復する。
つまり、魔石には大量の魔力が含まれているということなのだと思う。
であれば、そんな魔石を大量に食べていたスーちゃんに何の影響もないとはいえないのではないだろうか。
白龍の尻尾を食べて体の大きさを変えられるようになったスーちゃんは、その後の魔石食いで更なるレベルアップを果たした、のかもしれない。
それは、僕のスコップを見てもそう思う。
マイスコップもなんだか性能がおかしい気がするからだ。
ダンジョン製の鉄を使用したスコップであるとはいえ、本来は穴を掘るための道具でしかない。
が、最近になって立て続けにモンスターと遭遇することがあり、三つ目黒犬や赤鬼などには武器として使ったが、しっかり通用した。
これもきっと魔石が関係しているんじゃないかと思う。
魔石鉱脈を掘りあてたときに、岩盤を掘ろうと力を入れていたので魔石にスコップを突き立てたりもしていたはずだ。
つまり、魔石をスコップで砕いたということでもあり、その時に地脈の再生や強化と同じように、魔石の魔力でスコップも強化されていたのかもしれない。
こう考えると、あの時のダンジョン遭難という経験はすべてが悪いことだけじゃなかったのかもと思う。
禍を転じて福と為す、ということわざもあるみたいだしね。
そんなふうにプラスに考えておこう。
「よし、スーちゃん、分裂だ。地下下水道を通って汚れを食べておいで」
そして、僕はそんなスーちゃんの無数の分裂能力に目を付けて、一つのお願いをすることにした。
それはピンポン玉の大きさになったスーちゃんの分裂体を僕の家の地下にある下水道を通して周囲に移動してもらい、汚れを食べてもらうこと。
けれど、それはただの掃除を意味してのものじゃない。
スーちゃんの分裂体は僕のそばにいるスーちゃん本体が、遠隔で操作している。
そして、操作しているということは離れた場所で自分の分裂体が何をしているかわかっているということ。
ならば、その分裂体がなにかの異変に気が付けば、本体にもそれが伝わるのではないかと考えた。
要するに、アースソナーに変わる探知にスーちゃんの力を使おうと考えたわけだ。
バイクでのツーリング中に急にモンスターと出会ったように、僕はいつでもアースソナーを使用しているというわけではない。
なので、モンスターが近くにいるのに気が付くのが遅れる場合がある。
また、夜に寝ているときなども気付きようがない。
だが、僕が寝ているときなどにスーちゃんがその代わりを担ってくれたらどれほど助かるだろう。
普段は地下下水道で汚れを食べ、夜の人が出歩かなくなる時間などは地上部分にも分裂体を移動してもらってもいいかもしれない。
そんなふうにして、僕はスーちゃんを通して自宅周辺のパトロールを行うことにした。