作品タイトル不明
後始末
「えっぐ。三つ目黒犬よりよっぽど強かったんじゃないかな?」
地面に倒れた赤鬼を見ながら大きく息を吐きつつそんな感想をこぼす。
左腕をブンブンと振って具合を確かめる。
相手が丸太をぶん回してきたのに対して、それを弾き飛ばすようにスコップをぶち当てた。
その時の衝撃は相当なものだったはずだ。
子どものころに見たテレビ番組で、力士の突っ張りは恐ろしい衝撃を与える、なんてことを言っていたっけ?
モンスターであり人間よりも体格のいい赤鬼だったらもっとすごいんじゃないだろうか。
なんか筋肉痛みたいな感じで二の腕がジンジンする気がする。
こんな筋肉痛は初めてダンジョンで穴掘りをした翌日以来じゃないだろうか。
すぐに治ってくれたらいいけど。
まあ、これぐらいですんだのだったら運がよかったと思うほうがいいかもしれない。
今さらになって背中に嫌な汗が浮かぶ。
あの丸太が直撃していたら、たぶん僕は即死だった。
「スーちゃん、食べてもいいけど頭だけにしておいてね」
赤鬼を倒したのは僕だけの力ではない。
というか、倒すことができたのはスーちゃんの手助けによるところが大きい。
そんなスーちゃんは赤鬼の顔に張り付いたまま、その肉体を消化しようと食べ始めていた。
それを見て、食べるのは顔とか頭だけにしておいてねと伝える。
モンスターは倒すとドロップアイテムになるのが普通なのに、なぜか地上では死体がそのまま残る。
普通であればこんなところに赤鬼の体が放置されていたら、通りがかりの人が驚くだろう。
だが、この赤鬼の体には使い道がある。
地脈の安定化に利用できるからだ。
もしかすると、この赤鬼の体を解体して内部から魔石を取り出すだとか、例えば額にある角だとか口に生える牙が有効活用できるのかもしれない。
が、僕にはその手段を持ち合わせていない。
僕にできる唯一の方法はモンスターの体を壊れかけた地脈へと捧げて再生を図ることだけだ。
「って、その前にこの辺にはほかにもモンスターがいたりする可能性もあるのか。危ないなぁ。確認してからバイクで走る癖をつけないといけないかもな」
だが、ここに至ってようやく気が付いた。
赤鬼を倒して終わりだという確証はどこにもないということに。
第二第三の鬼がいるかもしれないし、全く別のモンスターが近くにいるかもしれない。
平和ボケしていたなぁと反省しながら、アースソナーで探知を行う。
結果、近くにはモンスターの存在は感じられずに済んだ。
よかった。
ほかにはいなさそうだ。
で、その探知で見つけた地脈の残るポイントへと向かってバイクで走り出す。
リュックに入れたマジックバッグに首なしの赤鬼の体を入れて運び、移動先で地脈へと捧げて再生を図る。
「ん。いい感じ。モンスターが出たとはいえ山のふもとだから、地脈もそこまで壊滅って感じじゃないな。結構再生できたみたいだ」
よかったよかったと胸をなでおろす。
しかし、今回の初ライドは思わぬ出来事に巻き込まれてしまった。
だが、予想もしなかったことに気が付くこともできた。
スーちゃんの体って分裂できたんだ。
それまでは体の大きさを変えて、僕の体をカバーしてくれたりしていた。
だが、まさか一部を飛ばして相手の行動を妨げるようなナイスアシストができるとは思いもしなかった。
改めてスーちゃんへとお礼を言う。
今日はスーちゃんに、なにかおいしいものでもご褒美に買って帰ろう。
そう心に決めたのだった。