軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

初ライド

バイクというのは危ない乗り物だ。

前後二本のタイヤだけで支えられた不安定な物なのに、高速で走ることができてしまう乗り物でもある。

しかも、曲がる時には自分で体重移動をして車体を傾ける。

つまり、自分からバランスを崩しにいっているようなものだ。

一歩間違えれば重大な事故につながり、命を落としてしまっても不思議はない。

初めてのバイク購入に浮かれた僕は、人気の少ない道を走りそれを痛感していた。

風を切って走る爽快感といえば聞こえはいいが、それはもろに走行による風圧をこの身に感じるということでもある。

無茶苦茶に飛ばしているというわけでは決してないが、全身にあたる風が冷たく感じてしまう。

「スーちゃん、お願い」

なので、僕は早々にスーちゃんの力に頼ることにした。

それまでは僕の服の中で小さくなっていたスライムのスーちゃんが、僕の声掛けに反応してその形を変える。

僕の全身を覆うようにスライムスーツとなってカバーしてくれた。

それにより、走行中の風圧は一切気にならなくなった。

「……ついでに、バイクも保護してもらってもいいかな?」

しかも、それだけに飽き足らず、僕はスーちゃんに追加のお願いもしてしまう。

生まれて初めて購入したバイクだ。

当然、大事に乗りたいと思っている。

だが、いつ何時不幸な事故を起こしてしまうかもわからない。

そうなったとき、僕自身の体の心配もそうだけれど愛車の心配だってしてしまう。

高速で走るバイクがその勢いのまま転倒したり、なにかに衝突したらどうなるか。

そんなことは教習所で嫌というほど教えられている。

いや、そんな重大な事故はもちろんだが、軽微な傷であってもピカピカの新車についてしまうのは受け入れられない。

なので、スライムスーツでの防御を僕の肉体のみならずバイク本体にまで適用してもらうことにした。

これでたとえこけてしまっても大丈夫だ。

走るためにスライムスーツが覆うことができないタイヤやホイールに傷がつくことはあれど、それ以外の部分に傷がつくことは避けられるだろう。

スーちゃんに守られているということが、僕に大きな安心感を与えてくれた。

どこまでも走っていけそうな万能感があった。

ほかの人や車両にぶつかることは当然駄目だが、少しくらい無茶な走りもできそうな気がしてしまう。

僕は気分よくバイクを走らせ、峠を越える。

気持ちいい。

普段の生活圏を抜けて、自分自身の活動範囲が劇的に広がる感覚は高揚感も与えてくれて、テンションも爆上がりだ。

そんなこんなで峠を越えて走った先でモンスターと出会ってしまった。

地元にはほとんど見かけない、スタンピードによる現在進行形の災害であるモンスター。

大きな人型のモンスターだ。

だが、人間とはまるで違う。

鬼のようなモンスターが、そこに立っていた。