作品タイトル不明
一安心
「廃棄物処理の許可はちゃんと得ているから大丈夫。佑馬君に迷惑が掛かるような仕事の依頼はしないから、その点は安心してほしい」
税理士先生との話を繰り返し、そして仕事を請け負った相手である渚とも電話を通じて話をした。
そのとき、渚からは心強い言葉をもらった。
やはり、僕より先に社会に出ている渚はきちんとした手順を踏んでいるようだ。
改めて渚から話を聞いて、僕は渚の会社が単なる清掃業で終わるつもりはないらしいと知った。
最初に会社での仕事の話を聞いたときは、渚は僕にもわかりやすいよう、かなり簡単に説明していたようだ。
世の中にはゴミを捨てられない精神状態に陥った人がいて、そういう人を手助けするために会社を興した。
そういう話だったと思う。
当然、これは嘘ではない。
渚の思いはそこが原点であり、学生のときからそのことを考えて行動し、会社を設立するに至った。
だが、実際に会社を経営し始めていろいろと考えることもあったようだ。
それはスライムの力の活用法について、だ。
渚は妹の楓ちゃんとともにスライムを味方につけて、スライムの力をうまく使い、ゴミの処理を行っている。
スイちゃんたちにかかれば、人間が現場にいなくとも夜の間にある程度ゴミを食べてきれいにしてくれる。
だが、これは決して効率がいいやり方ではないと感じていたようだ。
なぜなら、ゴミ屋敷などはその現場ごとで状況が違う。
どれがゴミでどれが家で、あるいは必要な家具なのかは人間がその場で判断しなければならない。
赤の他人にとってはそこにあるものがすべてゴミに見えても、そのゴミ屋敷にまだ住んでいる人がいれば、その人にとっては決してゴミではない。
何を食べ、何を残すかは判断が非常に難しい。
それは人間であっても同じであり、スライムに判断をゆだねるというのは到底無理な話だ。
ならば、もっといいスライム活用法はないか。
渚はそれを考えていたらしい。
理想は、そこにあるものをすべてゴミとしてスライムに食べてもらうこと。
しかし、それは千差万別な現場では判断が難しい。
なら、最初から廃棄するゴミしかない場所ならどうだろうか。
例えば、ゴミ処理場だ。
渚がゴミのある場所にスライムを連れていくのではなく、逆にスライムのいる場所にゴミが集まってくればいい。
自分たちが拠点と定めた場所にゴミを集め、そこで思う存分スライムにゴミを食べてもらう。
効率を考えるとそれが一番いいだろうと渚は思っていた。
しかし、それはとても清掃業とはいえない。
単なる清掃業者の範囲を超えて、ゴミの回収、収集と運搬、そして処理に特化した仕事のやり方だ。
まさしく、廃棄物の処理ということになる。
というわけで、渚はこれまでは事業規模が小さいがフットワークの軽さで勝負できるゴミ屋敷の片付けなどをメインに仕事を受けながらも、いずれは廃棄物処理に手を出そうと許可を得るために動いていたのだそうだ。
そして、その許可はすでに得ている。
そんなタイミングでスタンピードが起こり、モンスターによって建物の破壊などの被害が出てしまった。
で、既存業者もモンスター被害を恐れ、仕事を渋り始めた。
そんななかで、チャンスと見て、新興企業として廃棄物処理に乗り出したというわけだ。
そういう流れもあり、スラちゃんのレンタルにも意欲的だったとのこと。
「廃棄物処理の許可は僕の会社がちゃんと得ている。で、佑馬君にはその作業補助としての業務の委託を行ったんだ。つまりは、佑馬君は僕の会社の下請け作業員として働いてくれただけで、佑馬君個人が廃棄物の処理をしたわけじゃないから、そっちに責任がいくことはないから安心して。報酬に対しての税務上の書類でほかにも必要なものがあれば、もちろん遠慮なく言ってほしい。すぐに用意するよ」
「おお、さすが渚だね。僕はお父さんに言われるまで、税金なんて全然考えていなかったよ」
「金額がすごいからね。実は僕のほうでも顧問税理士がいるから、そっちでも佑馬君の話はしていたんだけど、今から納税の準備をしておくことは必要だと思う。あ、あと、廃棄物の処理については実際にやるのはスーちゃんだけど、法律上では廃棄物の処理の許可は必ず必要だから、許可なしでビルを食べさせたりはしないように注意しておいてね」
「ああ、そうか。もしも僕の身近に壊れかけの建物があっても、勝手にスーちゃんに食べさせたりしたら、建物の所有者とだけじゃなくて国とかとも揉める可能性があるってことだね」
「そういうことだね。くれぐれも気を付けてね」
「おっけ。了解だ」
ま、何にしてもとりあえずは無許可ではないということはわかった。
それがわかっただけでもかなり安心だった。
こうして僕は渚の会社を通してであれば、スーちゃんに建物を食べさせても何の問題もなく報酬を得られることを確認しつつ、税金の準備も進めていくことにした。