作品タイトル不明
税理士事務所
「まず、一か月で一千万円以上の報酬を個人で受け取っておられる場合、いくつか大きな問題が生じる可能性がございます。そのため、早めに状況を整理されることをお勧めいたします」
お父さんが調べた税理士事務所の一室にて。
僕は両親と揃ってそこへ訪れ、事情を説明した。
きっちりとスーツを着こなした男性が僕のつたない話を聞きながら、お金についての話をしてくれる。
「第一に、税務上の問題が挙げられます。個人で請け負っておられる以上、事業所得として取り扱われる可能性が高く、所得税の確定申告が必須となります。また、年間の受取額が一千万円を超えている場合、前年の実績がなくとも、消費税の課税事業者として税務署から注視される可能性がございます」
消費税?
ジュースとかを買うときに払うお金じゃないのか?
バイト感覚で仕事を受けたつもりだったのに、そんなものまで関係してくるの?
全く知らなかった。
「次に、源泉徴収の有無が問題となります。個人への業務委託報酬は、本来、支払側に約十%ほどの源泉所得税を控除する義務がございます。相手先企業がこれを行っていなかった場合、後々トラブルとなる可能性がございます」
源泉徴収ってなに?
控除ってのはなんだ?
知らない単語が出てきて理解が追い付かない。
「さらに、廃棄物処理業務は業種として規制が厳しく、許可が必要な業務であったかどうかが重要となります。特に産業廃棄物に関しては許可が必須であり、無許可での実施は行政処分や罰則の対象となり得ます」
これは、半壊ビルの現場の話だ。
渚はちゃんとしているはずだから、許可はきちんととっていると思う。
が、それはあくまでも渚の会社の話であり、僕は社員ではない。
ってことは、僕は渚の会社から仕事を引き受けて、無許可でゴミを処理していた扱いになるかもしれないってことか。
「とにもかくにも、まずは、受領された報酬の内容、請求書、振込明細などの資料をすべてご準備ください。これらは確定申告や、万が一の税務調査への備えとして不可欠です」
それは大丈夫なはずだ。
渚から報酬を得るときにはきちんと書類ももらっている。
いや、ちゃんと全部残していたか?
うっかりスーちゃんが食べてたりしないよね?
書類をもらったことは間違いないと思うけど、それをその後僕がきちんと管理できているかがハッキリわからない。
家に帰ったら、書類があるか調べる必要がありそうだ。
「次に、業務内容を正確に確認されることをお勧めいたします。産業廃棄物の収集・運搬・処理に該当する業務であったかが重要で、無許可の可能性がある場合は、早急に行政書士や弁護士など専門家にもご相談されるべきです」
オーケー。
渚にもすぐに確認しよう。
後で忘れずに渚へ電話しよう。
「税務面では、概算でも構いませんので必要経費の整理をお願いいたします。燃料費、車両費、人件費、資材費など、経費として認められる項目を把握しておくことで、税負担が大きく変わる場合がございます」
経費って、なにがある?
ゴミは全部スーちゃんが食べる。
なので、僕は身一つで仕事を終えている。
いや、今度バイクを買えば自分で現場までは行ける。
そういうときに使用した燃料費とかは経費にできるのかもしれない。
バイク本体も経費になるのかな?
「また、支払元が源泉徴収を行っていなかった場合、追加納税が発生する可能性があるため、税金分の資金を手元に確保しておかれることをお勧めいたします。加えて、年間収入が一千万円を超えたことにより、翌々年から消費税の課税事業者となる可能性が極めて高くなります。今後も同様の業務を継続される場合には、早めにご準備されるとよろしいかと存じます」
わかんねー。
この仕事をずっとするのかと言われたら、全然わからない。
やっている可能性もあるだろうし、僕は全然別のことに興味を持って渚の手伝いをしていないかもしれない。
が、なんにせよ、お金は手元に置いておかないといけないらしい。
貰った報酬の金額分を全部使ったりすることだけは絶対にダメだと念を押された。
どうやら半分くらいは確実に税金で持っていかれるだろうし、それだけ稼いでいるんならその次の年も同じように稼ぐだろうと考えられて、来年以降の税金や保険料が馬鹿みたいに上がることが考えられるらしい。
とにかく、手元にある書類を全部確認して、もう一度事務所に来てくれと言われた。
その後、僕はこの税理士事務所に何度も通って相談することとなったのだった。