作品タイトル不明
父の心配
「え? 佑馬がバイクの免許を取るために教習所に行くとは聞いていたが、原付じゃないのか。お金はどうしているんだ? 免許を取った後のバイクを買うお金はあるのか?」
僕が教習所に通い始めたことを知り、夕食での食卓でお父さんが聞いてくる。
お母さんにバイクを買いたいという話はしていた。
年齢はともかく、見た目は中学生だから心配だわ――と心配されはしたものの、なんとか許可はもらっていた。
そんなふうにバイクを持つことによる事故などでの僕の体の心配をするお母さんとは別に、お父さんは費用面が気になったらしい。
「お金なら大丈夫。友だちの渚の会社を手伝って、それなりに稼げているから大丈夫だよ」
「そうか? 佑馬がこの家に戻ってきてからもう数か月たったが、すごいんだな。新車のバイクなら安くても五十万円くらいはするんじゃないのか?」
「車種によるみたいだよ。僕が買おうと考えているのはこれだね。ほら、これ。魔力駆動で動くやつで見た目もかっこいいんだよ」
教習所に通い始めてからバイク雑誌も見るようになった。
バイクにもいろいろ種類があるが、僕が目を付けているのは魔力で動かせるタイプのものだ。
世界的にスタンピードが起こったことで、海外からの原油輸入が不安定になるかもしれない、とニュースても騒がれていた。
なので、ガソリンがなくても動かせる魔力駆動タイプが人気を増していて、どれも品薄になりつつあるらしい。
デザインのいいモデルは免許を取る前にバイク屋さんに注文しておくほうがいいのかもしれない。
「ちょ、ちょっと待ちなさい。これのことを言っているのか? バイク一台に三百万円って、車じゃないんだぞ」
「人気あるみたいだからね。中古でもほとんど値下がりしていないってネットで見たから、思い切って新車で買ったほうがいいかなって思ってる」
「いやいや、そうじゃなくて。バイクの値段もそうだが、そもそも金額が高すぎるだろう。佑馬のバイト代だけじゃこれは買えないんじゃないのか?」
「ん? ああ、大丈夫。この一か月くらいで一千万円くらいは稼いだから現金一括でも行けると思うよ」
「は? い、一千万だって? ちょっと待ちなさい、佑馬。それはおかしい。いくらなんでもあり得ないよ。悠馬のお友達を疑いたくはないが、なにか騙されているんじゃないのか? それとも、こんなことはいいたくないが危ないお金なんじゃないだろうね」
お父さんが僕に詰め寄るように話しかけてくる。
そして、それを見ながらお母さんも驚いていた。
お母さんは口元を両手で押さえたまま、声も出せずにいた。
決して変なお金ではなく、清掃業の会社であり、きちんと仕事をして得た報酬であることを説明する。
が、二人の疑問と心配は解消されなかった。
その日の晩は、長く家族会議が続いた。
僕の稼いだお金があまりにも多すぎて、扶養控除がどうとか、税金がどうなるのかわからないなど、僕が今まで考えたこともないことまで言われてしまう。
お父さんが言うには、一年で百万円くらいまでなら問題ないし、それを越えることはないと思っていたからこれまでバイトの話を聞いても特に深く考えていなかったらしい。
しかし、わずかな期間でこれほどの報酬を得るのは聞いたこともないし、お父さんにも今後どういう影響があるかわからない。
が、普通に考えて一千万円近くを一月くらいで稼いでいるということは信じがたく、それはきっと役所の人間にとっても同じだろうとのこと。
つまりは、僕がそれだけ稼いでいると税務署や行政が把握すれば、当然そのお金の出所がどこかを調べられる。
そうなったときのために今のうちにきちんと手続きをしておくべきだし、それができないならばバイトは禁止だと言われてしまった。
というわけで、僕はその翌日にお父さんが調べて見つけた税理士さんのところに相談へ行くこととなった。