作品タイトル不明
撮影後の実験
「今日はありがとうございました。ご自宅までお送りいたしましょう」
「こちらこそありがとうございました、五条さん。テレビの撮影に僕が参加するとは思っていなかったからびっくりです。家までは走って帰るので大丈夫です」
「そうですか。ご自宅はこの近くなのですね。桂様ならば大丈夫かと思いますが、スタンピードの影響でモンスターがいつどこで現れるかわかりませんのでお気を付けください」
たまたまダンジョン跡地を見に来たらテレビカメラを向けられていた二人と出会った。
そして、なぜか僕も加わることになった収録が終わった。
このダンジョンが本当に完全消滅したのかや、なぜ消滅したのか、あるいはこのあたりがスタンピードの影響をあまり受けていないのはなぜか。
そんなことを徹底調査する現場ロケという形で撮影していたけれど、もちろん、数時間のロケで真相解明できるはずもない。
もともと、このダンジョン跡地を封鎖してギルド関係者が調べていて、それでも結論が出ていない話なんだから当たり前ではある。
あくまでも番組向けに現地の様子を撮影して、あれこれと情報を段階的に出しながら盛り上げるのが目的だったみたいだ。
それでも、突然参加した僕が現地人代表みたいな顔をして独自理論を打ち立てた。
中学生の男の子が考えたトンデモ論だが一考の価値あり――そんな流れで一区切りし、その後の研究が待ち望まれるみたいな締め方になるとのこと。
というわけで、撮影は無事に終了し、テレビクルーとともに五条さんは帰ることになった。
車で家に送ろうかと言ってくれたが、ランニングして帰る気でいたので断り、一行が何台かの車に乗り込み走り去るのを見守る。
車列が道路の交差点を曲がり、見えなくなるまで僕は手を振っていた。
「じゃ、人がいなくなったところでもう一度、と」
テレビクルーがいなくなり、撮影を遠巻きに見ていた野次馬たちもいなくなったことを確認して、僕は再びダンジョン跡地へと向かう。
先ほどは皆がいたので自分の持論を述べただけに留めていたが、実はやってみたいこともあった。
それはこのダンジョン跡地でしかできないことだ。
洞窟のようなかつての入り口から中に入り、少し先に進む。
しかし、すぐに行き止まりになってこの洞窟は終わっている。
ダンジョンが消失した際にはもう少し手前で終わっていたが、入り口付近に新たな壁ができて、見かけ上は塞がれただけ――そう考える人もいたらしい。
実は壁の先に今もまだダンジョンが続いているのではないかと考えたわけだ。
このダンジョン跡地を調査しにきた人たちはその可能性も考慮し、壁を掘り、その先に空間が続いていないかも調査したそうだ。
そのため、今僕がいる場所は研究者たちが掘り進め、結局何もなく、ダンジョン特有の地形が元どおりに戻ることもなかったとのこと。
だが、アースソナーを持つ僕は感じる。
かつてダンジョンがあった時に、ここには間違いなく新しい地脈があった。
本来あった地脈がズタズタになり、それでも地球は魔力を集め、循環しようとした。
その結果、ダンジョンというバイパスを無理やり作りあげたのだろう。
ダンジョンが消滅していなければ今もそれはここにあり、モンスターや魔石を生み出していたかもしれない。
しかし、今はなにもない。
それはダンジョン消滅とともにその新造地脈の力が弱まったからだ。
だが、ないわけではない。
――それなら、こうしたらどうなるだろうか。
僕は洞窟の最奥で穴を掘る。
軽く穴を掘り、そこで得た土とペットボトルの水を混ぜ合わせ、泥団子を作る。
かつて楓ちゃんとともにこの場所で作った時のようにピカピカの泥団子を丁寧に作り上げる。
そして、その際に僕が白龍の革袋に入れたままだった魔石を泥団子の中心に詰め、自分の魔力を泥に馴染ませるようにしながら送り込む。
「お、できた。ダンジョン跡地でもスライムが生まれるんだな」
――そして、この実験は成功した。
モンスターが現れなくなったダンジョン跡地で、僕が作った泥団子と洞窟内の泥水から新しいスライムが誕生することを僕は確認したのだった。