作品タイトル不明
説明
「坊主、なにか感じ取れたのか?」
僕がアースソナーを使ってダンジョン跡地での魔力の流れを感じ取っている間、金剛寺さんや五条さんは黙って僕を見守っていた。
だが、さすがにしびれを切らしたのか金剛寺さんが話しかけてくる。
僕は探知を終えると、そこで感じ取った情報から導き出したダンジョン仮説を説明した。
「面白い考えですね。そのダンジョン仮説は専門家の中にも提唱していた方がいたと思います」
「え、そうなんですか? なにかこの考えを証明する証拠があるんですか?」
「いいえ。私が知る限りではなかったように思います。世界各地の情報を集めて導き出した推察による仮説であり、推察の域を出ない、という形で締めくくられていたはずです。ですが、そのご様子だとその論文について桂様はご存じなかった様子ですね」
「そうですね。論文とか読んだことないので」
「ならば、私としては桂様の提示されたダンジョン仮説は一考の余地があると考えます。理論から導き出されたものと、実際にダンジョンと関わってきた方の経験から生まれた考えが偶然一致したというのは非常に興味深い話ですから」
そうかな?
そう言われればそうかもしれない。
いや、本当にそうかな?
ダンジョンがこの世に現れてから、もうかなりの年月が経っている。
これまでダンジョンについて研究した人なんて山ほどいるだろう。
そういう人の中に僕と同じ結論、推察、推測に至った人がいても別に不思議じゃないと思う。
結局のところ、僕のダンジョン仮説に証拠がないことには変わりないのだし。
「だが、ダンジョンから手に入れた魔石を地脈の再生に使う、だったか? それは聞いたことがないな。まあ、魔石は燃料として価値があるからな。ほとんどギルドが買い取って消費しているからなんだが」
「……いえ、それは違うかもしれませんよ、金剛寺様」
「え、違うとはどういうことでしょうか?」
「世界各地でほぼ同時期にスタンピードが発生しました。しかし、日本は対処が速かったおかげで先進国の中では比較的被害が少なかったということは有名だと思います。しかし、世界全体でみれば日本以外にも日本以上に被害の少なかった国というのは存在します」
「そりゃあそうでしょう。世界中で考えれば二百以上の国や地域がありますし、ダンジョンのない場所だってあるんですから」
「はい。ですが、人口が多いにもかかわらず、スタンピードの被害がほとんどなかった国があります。そして、その国では魔石を燃料として使うのではなく、宗教施設で消費しています」
「……なるほど。意図的かどうかは別として、歴史ある宗教施設で何らかの儀式に魔石を用いているつもりで、それが実は地脈の再生に役立っていてスタンピードが起きなかった可能性がある、というわけですか」
「はい。可能性としてはあり得るかと思います。一度調べてみる価値はあるでしょう」
僕が考えたダンジョン仮説。
地球には地脈があり、それが文明によりボロボロになっている。
その結果生まれたのがダンジョンで、ダンジョンから採れた魔石で地脈は再生できる。
で、再生すればダンジョンに何らかの好影響も与えるかもしれない。
そんな根拠のない話を、大人二人がテレビカメラの前で真面目に議論している。
間違っていたら恥ずかしいかも。
二人の話を聞きながら僕はそんなふうに感じていた。