作品タイトル不明
ダンジョン仮説
僕の持つ唯一のマジックアイテムであるアースソナー。
銀色の腕輪で緑色の宝石が埋め込まれた、装飾品のようなマジックアイテムだ。
こいつに僕の魔力を流し込むと、宝石の魔力と反応して周囲に魔力の波を送る。
放たれた魔力の波が土や石、地面などを通って広がり、その反響によって周囲の地形や状態を把握できる。
潜水艦が水中で音を聞いて敵の位置を把握したりするように、見えていない場所まで把握できるのが、こいつのすごいところだ。
もちろんアースソナーの名の通り、土を通しての反応であり、水中では役に立たないのだけれど。
だが、ここはもともと洞窟型のダンジョンが消滅した場所であり、今も入り口部分が洞窟のようになって残っている。
そんなダンジョン跡地でアースソナーを使用する。
僕を中心に魔力の波が広がり周囲の状況を認識していく。
……なるほど。
これが、ダンジョンか。
明らかにこれはほかの場所とは違うわ。
地脈の流れが全く異なっている。
ここはダンジョンが消滅した場所ではあるが、なんとなく理解した。
おそらくは、ダンジョンというのはバイパスみたいなものなんじゃないだろうか。
――そんな気がした。
これは僕の完全な推測であり、それを証明するものはなにもない。
だが、アースソナーを使って感じとることができた地脈。
本来、地脈は地球全体を覆う網目のように広がっていたのだろう。
しかし、今はそれがズタズタに引き裂かれて見るも無残な状態になっている。
人類の科学技術が発展して地球上のいたるところが開発されすぎたためだ。
人類が土地を開発し、自然環境が激変した。
近代以降、人類は地表だけでなく地中や海底からも大量の資源を掘りつくしてきた。
それにより、地脈の流れをめちゃくちゃにしてしまう。
その結果できたのがダンジョンだ。
地球という大きな星の体にエネルギーを巡らせる血管の役割を果たしていた地脈。
それが引き裂かれてしまったが、それでも血液ともいえる魔力を集めようと地球は頑張ったのだろう。
どうにかして魔力を星に取り込もうとして穴を開けた。
それがダンジョンだ。
ダンジョンはわずかに残された地脈から魔力を吸い上げて星の内部に送り込むための場所なのではないだろうか。
しかし、本来地脈の流れに沿って滞ることなく動き続けるはずの魔力が強制的に一か所に集められたことで、本来とは異なる現象を引き起こしてしまった。
例えば魔力が凝縮して結晶化したのが魔石だ。
あるいは、高濃度の魔力に影響されてダンジョンで採れる鉄は地上のそれとは異なる性質を持つに至った。
また、その影響は生命にも及んだ。
魔力を持つ動物としてのモンスターが生まれてしまった。
この僕の仮説が正しいのかはわからない。
だが、このダンジョン跡地ではその痕跡を感じ取れた。
周囲の土地から無理やり集めたであろう地脈や魔力そのものの流れがダンジョンの入り口から奥深くへと続くように経路ができている。
それは地上で感じた弱った地脈や再生した地脈とも違う、まるで無理やり作り上げた新しい回路のようだった。
だが、それはすでに痕跡を残すのみだ。
その新規回路に魔力が流れているわけではない。
きっとダンジョンが消滅してしまったことで、魔力を集める機能が働かなくなったに違いない。
ダンジョンが魔力をかき集めるための装置であると仮定した場合、それが都会に多い理由も説明がつくんじゃないだろうか。
人が環境破壊をした結果、出来上がったのが人口の多い都会なのだから。
ってことは、ダンジョンでスタンピードが起きたのは、集めた魔力がダンジョンにも処理できないくらいに飽和してしまった結果だとも言えるのかもしれないな。
星に取り込むつもりで集めていたエネルギーが吸収しきれずに逆流して放出された、って感じか。
スタンピードって地球にとってのゲップみたいなものだったんだろうか?
僕はアースソナーでの反応を見ながら、そんなことを考えていた。