軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

男性との再会

「おい、坊主。ちょっとその顔を見せてくれ。おい、逃げるな」

道路で撮影をしている集団から一人の男性が出てきて、僕に声をかけながら近寄ってきた。

いきなり知らない人から話しかけられ、僕は思わず一歩後ずさった。

だが、その男性はそんな僕の反応など気にした様子もなく、ずんずんとこちらへ歩いてくる。

なんだこいつ?

テレビに出るような有名人だとしても、初対面の相手をいきなり「坊主」呼ばわりする仲ではないはずだ。

失礼な奴だな。

そう思った。

「やっぱり、あの時の坊主か。よかった。生きていたんだな。あの時と全然変わらず元気そうだが……いや、変わらなさすぎじゃないか?」

ん?

なんか向こうは感傷に浸りつつ話しかけてきている。

その口ぶりからすると、僕のことを知っているのか?

誰だかわからん。

「おじさん、だれ?」

「おじさんじゃねえ。俺はまだ三十代のぴちぴちのお兄さんだ、こら。俺だよ、金剛寺だ」

……だれ?

三十歳代なら立派におじさんだと思う。

それに見た目も、実年齢よりも上に見える。

で、名前が金剛寺っていうのか。

なんか聞き覚えがあるような気もするけど、どこで聞いたんだったっけな?

「おいおい、覚えてないのか。俺だよ、俺。昔ここにあったダンジョンの入り口でよく顔を合わせていたじゃないか」

「……あ、監視員のおじさん」

「おじさんじゃねえ。って、まあその認識で間違いないんだけどな。そうだ、おれだ。久しぶりだな。無事だったんだな。ダンジョンで遭難して帰ってこないって、十年位前に大騒ぎになっていただろ」

「ありがと。僕は大丈夫だよ。それよりおじさんはここでなにしているの? もうここにはダンジョンはないんでしょ?」

「おう。テレビの取材だな。世の中がスタンピードやらで大変な時期だからな。そんな中で比較的平穏が保たれているこの土地は、国内でも割と注目されているんだよ。で、どうしてこの土地だけ平穏なのかを検証する考察番組をテレビがやるってんで、その協力に引っ張り出されたってわけだ」

「へえ。面白そうな番組だね。ずっとダンジョンの入り口で監視員をしていたおじさんならその役にぴったりそうだね」

「いやいや、おまえなんか勘違いしてるだろ。俺がダンジョン入口の監視をしていたのはあの時くらいだ。こう見えて意外と忙しい立場なんだぞ」

忙しい?

朝に行っても夕方に行っても、いつもダンジョンの入り口にいたから、てっきり暇なのかと思っていた。

違ったんだろうか。

まあ、僕がダンジョンに通っていたのは実質的に一週間から十日くらいの期間だったから、その間ずっといただけでそのイメージが付いてしまったとしてもおかしくはないか。

「じゃあ、そんな短期間しか顔を合わせていなかった僕のことを覚えているって、おじさん記憶力がすごいんだね」

「いい加減、おじさん呼びはやめてくれ。こう見えて俺は繊細なんだからな。まあ、坊主のことは忘れないさ。ダンジョンの壁に穴を開けるなんて非常識なことを毎日していた奴、ほかにいないからな」

なんでだよ。

俺は最初はダンジョンの壁を殴っていただけだった。

スコップで穴を掘って土を持って帰ればお金になるって言ったのは、今から思い出せばこのおじさんだ。

金剛寺さんがそんなことを言わなければ俺は穴掘りをしていなかったし、その結果、ダンジョンに開いた穴に落ちることもなかったかもしれない。

そう考えると、この人がすべての元凶なんじゃないだろうか。

僕がそんなことを考えていると、金剛寺さんの後方からもう一人やってきて声をかけてくる。

「あの、金剛寺さん。その方をご紹介してくださいませんか?」

きれいな声だ。

それまではテレビクルーらしき人達の後ろで、僕らの会話を見守っていた女性が声を掛けてきた。

透き通るような声だ。

決して大きな声ではないのに、耳にスッと入り、自然と相手の耳を引き寄せるような話し方をする女性だった。

そんな女性が僕らのもとへと近づきつつ、会話に入ってきたのだった。