作品タイトル不明
深夜の帰宅
「ただいま」
「あ、佑馬君、大丈夫だったの? なんか佑馬君が向かっていった方向から走って逃げていく人が増えたから心配していたんだよ」
「うん、平気だよ。それよりも、もうモンスターが倒されたみたいだからしばらくすればこの渋滞は抜けられるようになると思う。とりあえず、動き出せるようになるまではこのまま待っておこうか」
三つ目黒犬を倒した後、僕は渚のいる車のところまで戻った。
モンスターはすでに倒しているし、周囲のほかの気配もない。
なので、しばらく待てばこの渋滞は解消されるだろう。
そう思っていたのだけれど、僕の考えは甘かったようだ。
この後、僕らは何時間も渋滞によって閉じ込められることになった。
原因は、運転手がいなくなった車があったことだ。
渚みたいに全員が車の中で待機していたわけではなく、人によっては自分が乗ってきた車を捨てて、その場から離れてしまった人がいたのだ。
そういう人は少数派だったかもしれないけれど、大渋滞の中に放置車両があるとなれば話は別だ。
その車は、いつまで経っても動かない。
渋滞なんて時間が経てば解消されるものだという思い込みもあった。
それが僕らの考えを誤った方向に導いてしまった。
その認識が甘かったと気づいたのは、トイレを我慢できなくなったころだった。
結局、その日は僕の家に帰りついたのは深夜になってからだった。
「お疲れ様。今日は大変だったね」
「疲れたー。遅くなっちゃったね。けど、渚のほうが大変だったんじゃない? ずっと運転してくれていたんだし」
「まあね。でも、佑馬君は運転免許を持っていないし、ビルの撤去作業をしてくれたのは佑馬君とスーちゃんだったからこれくらいはね。なんにせよ、今日はありがとう。報酬は相手からの支払いを受け取ってからになるから、来月か再来月になると思うけど、大丈夫かな?」
「あ、そっか。こないだみたいにすぐにもらえるわけじゃないよね。そりゃそうか」
「ん? なにか入用だったのかな?」
「んー、まあね。渚みたいに運転免許が取れたらいいなと思っていて、とりあえずバイクの免許でも取ってみようかなと思っていたんだけどね」
「あ、いいね。バイクも面白いと思うよ。佑馬君がよければ免許を取る費用を貸してもいいよ。もし、人からお金を借りるのが嫌だなと思うなら、当日現金払いできる仕事を探してみるけど」
「そうだね。じゃあ、手ごろな仕事があればまた連絡してくれないかな? 前みたいなゴミ屋敷の掃除でもいいし」
「うん、わかったよ。じゃあ、また連絡するね。今日はありがとう。夜遅くなっちゃったからゆっくり休んでね。おやすみ、佑馬君」
「おやすみー。渚も気を付けて帰ってね」
僕の家の前でそんな話をして渚と別れる。
家に帰り、シャワーを浴びて湯船に浸かる。
ふぅーと息を吐くと今日一日の疲れが抜け出ていくような気がした。
なんだかんだでいろいろあったな。
半壊したビルの撤去作業は、それ自体は割と楽に終わった。
が、意外と気を使った。
スーちゃんというスライムが主体になって作業をするのに、ビルの周りを囲ったりしていなかったから誰がどこから見ているかわからないというのが気になった。
ダンジョンのスタンピードがあったばかりなので、ビルを食べる巨大なスライムの姿を見たら、通行人にみられて警察へ通報されないか、それが少し気がかりだった。
多分今日は大丈夫だったと思うけど、次もそううまくいくかはわからない。
次からはやっぱり周囲を囲ってもらえるようにしてほしいと車の中で渚には話している。
また、都会は地脈の流れが悪いというのを改めて認識した。
土地を開発した結果なのだと思う。
それが悪いのかどうかはわからないけれど、僕には、その土地がひどく痛々しく感じられた。
大地が悲鳴を上げている。
そんな気がした。
地脈の再生をしたほうがいいんだろうか?
だけど、僕が住む土地とは離れているし、遠くの都会よりも近くの土地の地脈の再生のほうが優先したい気もする。
どうしたものかと考え込んでいると、お風呂の外からお母さんが早く出てきなさいと言ってきた。
どうやら考え事をしすぎて長い時間お風呂に入っていたようだ。
そんなこんなでギリギリお湯がぬるくなりすぎて湯冷めする前に僕はお風呂から出て、そのあとすぐにベッドで眠り込んでしまったのだった。