作品タイトル不明
死体の処理
「へえ。やっぱり情報通りか。ダンジョン内と違ってモンスターの死体が残るんだね」
モンスターを倒した。
マイスコップを使い、しっかりと息の根を止めた。
戦闘時間は一瞬だった。
けれど、自分の中ではかなり張りつめた緊張感のある時間だった。
ほっと一息つきながら、思ったことが口をついて出る。
ダンジョン内ではモンスターを倒すとドロップアイテムが手に入る。
なぜだかわからないが、倒したモンスターの体は消え、あとには魔石や、そのモンスターの体の一部が残される。
まれにマジックアイテムのような道具も手に入ることもある。
だが、ダンジョン外では違うらしい。
モンスターがダンジョンからあふれ出てくるスタンピードが世界中で起きた。
そして、そのモンスターによって大きな被害があちこちで出たが、その過程で倒されたモンスターも多い。
そして、地上にてモンスターを倒した人からの報告で、モンスターは地上で倒すとドロップアイテムにならないと言われていた。
目の前に倒した三つ目黒犬の死体が三体ある。
三体の死体は消えることなく、その場に残っている。
このまま待てば魔石になったり、死体が消えて牙だとか毛皮が残されるなんてことはなく、この死体は消えることなくそのまま残り続けるわけだ。
なぜそうなるのかはわからない。
これがいいのか悪いのかは人によるだろう。
僕みたいに生き物を捌いた経験がない人間からすると、倒したモンスターは有用な部分を残して消えてほしい。
が、考えてみればそれはかなり損をすることになる。
三つ目黒犬はどうか知らないけれど、僕がダンジョン内で出会った八目大黒カラスなどは魔石のほかに羽や嘴などを残して消えてしまった。
あいつの体は巨大だった。
つまり、倒した相手の肉体のほとんどが消えてしまったともいえる。
死体がそのままで残ってくれていれば、羽なんかはもっともっと手に入ったわけで、ドロップアイテムとしてわずかに残されてもうれしくない、と感じる人もいることだろう。
というわけで、地上ではモンスターの肉体は倒した後そのまま残ることが確認されており、僕も実際にこの目で見ることになったわけだ。
だが、当然のことながら僕にはこの三つ目黒犬の死体を処理する術がない。
どうしようか?
勢いでマイスコップを使って戦ったものの、その後のことを全く考えていなかったな。
持ち帰ってもいいのかもしれないけど、犬の死体なんて不気味なだけだしな。
スーちゃんの餌にでもするか?
それとも、死体はこの場に残して渚のもとへ帰るか?
どうしよう。
「……ん? あれ、こんなところにもあるんだな」
どうしようかなと悩んでいるときだった。
辺りをグルッと見渡したときに、僕の視界に興味深いものが目に留まる。
それは、お地蔵さんだった。
都会の大きな交差点。
そこの端に本当に小さなお地蔵さんがポツンといた。
車に乗っていれば絶対に気が付かなかっただろう場所に、小さなお地蔵さんがぽつんと立っていた。
かなり古いのだろう。
ひどく古ぼけている。
「えっと、こいつの魔力をこの地に捧げます。受け取ってもらえますか?」
三匹の三つ目黒犬の死体を持ち上げて交差点の端にあるお地蔵さんのところまで持っていった。
そして、それをお地蔵さんの前に置き、僕は手を合わせ目をつぶりながらそう言った。
なぜそんなことをしたのか、自分でもうまく説明はできない。
ただ、モンスターの死体をどうにか処理したかったのだ。
ここしばらく、僕は自分の地元で地脈の再生に取り組んでいた。
こういうお地蔵さんがあるところはかつて地脈が走っていた可能性がある場所だろうし、そういうところに魔石を捧げると地脈が活性化した。
であれば、モンスターの体そのものでも同じではないだろうか。
調べていないけれど、きっとこの三つ目黒犬の体の中にも探せば魔石があるだろう。
もしそうならば、こいつの体ごと大地に捧げても魔力を受け取ってもらえるんじゃないだろうかと思ったわけだ。
そして、どうやらその考えは正しかったようだ。
僕が手を合わせて祈ると、三つ目黒犬の死体は淡く優しい光を放ちながら、ゆっくりとその姿を消していく。
その身に宿っていた魔力が、お地蔵さんを通して地中へと流れ込んでいく。
その魔力が、ほとんど感じられなくなっていたか細い地脈へと流れ込んだ。
地脈が再生したわけではない。
だけど、それまではアースソナーを使っても全然感知できないレベルだった地脈がうっすらと浮き上がったように感じた。
こうして僕はモンスターの死体を処理し、その場を離れ渚のもとへと戻っていったのだった。