軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

三つ目黒犬との戦い

音もなく交差点内に着地する。

ジャンプしたときもそうだし、今の着地もスーちゃんの力を借りた。

僕の体を包み込むスライムスーツによって着地時の勢いは完全に消え、全くの無音で降り立つ。

周囲は逃げ惑う人々の喧騒で騒がしい。

だから、交差点へと移動した僕に気が付いたのはモンスターだけだ。

三つの瞳を持つ黒い犬が三匹ともそろって僕のほうへと視線を向けた。

モンスターは好戦的だ。

なぜ、彼らは人を襲うのか。

動物であれば獲物を倒して食べるためだとか、自分の縄張りを守るため、などという理由があるはず。

しかし、モンスターはそうではない。

人がいれば襲う。

そういうものらしい。

目の前にいる三つ目黒犬たちもそれは同じようだ。

探索者(シーカー) だけではなく幾人もの野次馬をその鋭い牙や爪で引き裂き、周囲を血の海に変えたというのにそれだけでは満足していないようだ。

交差点へとやってきた僕を新たな獲物として認識し、倒れた人を無視してこちらへと体を向ける。

「グルルルルルゥゥゥゥ」

来る。

そんな人類の敵であるモンスターが僕を新しい獲物であると認識し、喉の奥からうなり声を響かせながらこちらへと走ってくる。

速い。

もともと犬なんて動物は足の速さに定評のあるものだけれど、それとは比べ物にならないくらいに三つ目黒犬の初速は速い。

最初の一歩、二歩で一気に加速し、一瞬で僕の間合いまで踏み込んでくる。

そして、その三つの目をぎょろりと光らせながら大きく口を開け、何本もある数多くの鋭い牙を僕の体へと突き立てようと噛みつく。

しかし、そんな速すぎる三つ目黒犬の攻撃を僕はしっかりと認識できていた。

長いことダンジョン内を彷徨っていただけあり、もはや普段から 超集中(ゾーン) を行うことが当たり前になっている。

極限まで集中している僕の意識は通常よりもはるかに引き延ばされ、超高速で動く三つ目黒犬の動きをスロー再生のように認識することに成功していた。

すでに人を噛んだことでその鋭い牙には血が滴っている。

あまりにも凶悪なその牙は本来であれば僕の体を恐怖に陥れて動きを止めさせただろう。

そりゃあ、僕だって怖い。

人を攻撃してくるモンスターと相対するのはほとんど初めてみたいなものだから。

だけど、こっちだって全くの無経験ではない。

空中を飛び回る飛行型モンスターに浚われて超上空からのスカイダイビングアタックを何度も決めたこともある。

その場から動かないとはいえ、サバンナトレントからランダムフルーツをもぎ取ったこともある。

ほかにも、地中から襲うビッグワームと戦ったこともある。

それらの経験が 超集中(ゾーン) に入った僕にはわずかばかりの平常心をもたらした。

僕へと噛みつくために開けた大きな口。

いくらモンスターと言えども、口の中は防御力は低いんじゃないだろうか。

そう考えた僕はマイスコップをその口の中に突き立てた。

体を半身の姿勢にし地面へとしっかりと軸足を支えにしながらスコップをつく。

本来は穴を掘るための道具だが、超絶な硬度を誇る岩盤のようなダンジョンの天井すら掘り進めたマイスコップは十分武器にもなりえる。

飛び掛かった三つ目黒犬と、僕の突きが真正面から激突した。

ドンっと鈍い音が交差点で響く。

勝ったのは僕のマイスコップだった。

三つ目黒犬の鋭い牙には触れずにスコップを口腔内へと送り込んだ。

スコップの先端がモンスターの喉奥を貫き、そのまま頭蓋を内側からぶち抜いた。

倒した。

だが、まだ安心はできない。

なぜならこの場にはほかに二匹の三つ目黒犬がいるのだから。

仲間が一匹やられるとは想定していなかっただろう。

それでも連係プレーが得意なのか、最初に駆け寄ってきた奴とは別々の方向から二匹が僕のもとへと駆け寄ってきていた。

時間差による攻撃だ。

しかし、一匹倒しても油断せず残心を保ち続けた僕は倒した三つ目黒犬の脳天からスコップを引き抜き、その場からバックジャンプを行う。

駆け寄ってきた二匹が今まさにその場にいた僕を引き裂こうとした爪による攻撃をぎりぎりで回避することに成功。

それを確認する前にこちらの攻撃へと移っていた。

マイスコップを右側にいた三つ目黒犬へと叩きつける。

相手の頭を地面へとスタンプするように攻撃し、そのままの流れで左へとスコップの軌道を変える。

飛び掛かって攻撃を外した三匹目へむけてスコップの先端を伸ばし、首元へと突き立てる。

初めての地上でのモンスターとの戦闘。

わずかな時間だったが自分で思っている以上に冷静に戦えたと思う。

こうして僕は、地上に現れた三匹の犬型モンスターを撃破した。